幾つもの新しい朝に
黒い翼

薄闇の中で
10万の囁きが聴こえ
10万の囁きが一瞬止んだ
次の瞬間
灰褐色の塊のエクスプロージョン
茜色の空で 羽音たちが交じり合う
俺たちも あの塊の1つの点になろう
10万が1つになり
1つが10万になったら
赦されたひとつのいのちに生まれ変われる

マガンはシベリアの大地へ飛び去って
雪は根元から地へと解け始めたら
芽吹く葉の上にはブナハアカゲタマフシ
金平糖のように笑み
地上のカタクリの エイザンスミレの笑みと
ピンク色に重なり合ったら
次のいのちへのプレパレーション
種子はエライオソームごと地下まで運ばれる

アカショウビンはエゾハルゼミを餌に摂り
アカショウビンはハイタカの餌になるとき
いのちを抱いた土から
いのちの溶けた沢へ落ちて
ヤマセミの恋人たちに注がれ
カワセミの親と子たちに注がれ
麓の田畑に引かれ
太平洋のいのちにつながる
そのとき
アカショウビンはまたボルネオ島を目指す

ツルリンドウのひと花ひと花に
いのちの新しい朝を祈ろう
ブナハリタケの胞子ひとひらひとひらに
いのちの新しい朝を刻もう
ブナ林の向こうから
また 10万の新しい朝が来る


自由詩 幾つもの新しい朝に Copyright 黒い翼 2011-03-21 10:55:27
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