「骨音」

 その森の中のまぶたは
 たいへんうつくしい

 背骨を失った世界よりずっと

 まぶたに広がる昼下がり
 湖のほとりで
 老人は 骨を拾う

 露の輝く草を分け
 ....
冬*

  パチパチパチと雪が降って
  コーラの缶を蹴ったら 少し上ではしけて
  犬も猫も焼き鳥も みんな掘りごたつの中
  人々のささめきだけが
  しんと石ころになって 沈んだ
 ....
私の大好きな古い窓に
あのカラスはキズをつけた
羽虫の薄さで
夕日を水のおはじきにして

木苺の赤い信号が
車を待っているあいだ
硬い色の空を背に
セスナ機ほどの小さな傷で
浮かん ....
 さて、どうやら人々はひどく急いでいるようである。こんな瓶の中でいったい何を急ぐ必要があるのだろうか。誰も立ち止まる気配を見せない。ともかく、誰もがせかせかと動き回っているので、なんと .... レースのカーテン越し
うっすらレモン色の光が滑り込む
この横浜の匂いのする応接間に優しく奏でられるドビュッシーの調べ

朝の透き通った空間にピアノの一音一音が踊り、新しい一日の始まりを祝福する ....
指輪をはめた手でゆっくりと書類を渡しました。
君は少し微笑んだような気がしました。
これからは毎日指輪をしていきます。
その哀しげな微笑みを見たいからです。
何も感じないのならそんな顔はしない ....
犬は犬のジーザスを愛でろ

鶏は鶏の身の丈に合ったローンを一生涯振り込んで暮らせ

猿は真っ白になって日々スペルマを飛ばして ....
知らぬ間に
今日と明日の境目の
白線を越えていた

部屋にメイプルの香り
焼きたてのパンを置いて

朝にこそふさわしいと
あなたは横向くけど
このままいればもう
朝なのですよ

 ....
田舎の町でイベントを打った
告知を全然やらなかった
お客はひとりも来なかった
鰻料理屋の座敷を借りて
夕方六時から丸々三時間
十七人前の鰻料理を前にして
私はひとりで呆然と来客を待ち
そ ....
汗ばんだシャツを背負い
夕暮れを歩く
橙色の入道雲が
薄闇に沈みかけた蒼い空に黄昏ている

少しむっとしたアスファルト
鬱血した時が、俄かに開放されようとしていた
沈静が流れはじめる
 ....
 
 
掌に海がある
水平線のむこうから
海賊船がやってくる
わたしから大切な記憶を盗み
それで得た金で
毎晩酒を飲み騒いでるのだ
わたしは海に飛びこみたいけれど
この体から出ること ....
私は死体だ
今日も明日の世界を 私の 
私は私の地獄の奥底で歩かさせられた  
未来に私の心は 歩かさせられた


屍だ 私は私の未来を
その言葉を 生きて行く 私は私の
ああ 私 ....
後ろから
脳を一撃された

と同時に
ウィルスも
身に入る

悪寒がはしり
発熱する
リンパはパンパンに腫れ

首から上ばかりが
熱い

ぐらぐらとしためまい
脳の中は
 ....
目覚めの弱い朝
濃いめのブラックコーヒーと
アーモンドチョコレート
苦みで潤される喉をなぞるカカオの甘さ
寝ぼけた体が整えられていく

今日はどうやら天気が良さそうだ

もうすっかり冷 ....
湖に浮かぶ月
冷たい水に足を浸して遊ぶ

水草が名残惜しそうに体に絡みついてくる

息を止めて
体を沈ませ
ゆれて怯える月を捕まえた

勢いよく
口に放り込み
よく噛んでいると
 ....
雪だるま作って
カマクラ作って
みかんを食べて
ケーキを食べる。

笑いながら
話をして
ポインセチア
ながめる。

窓に好きな{ルビ娘=こ}の
名前を書いて、にやつく
湯たん ....
押したはずの
シャッター音が
秋の葉音に
かき消されて
写真だけが残る

昨日 不意に
夜に向かって
ストロボをたくと
逃げ遅れた闇が
気まずそうに
ちょっとだけ
慌てふためく ....
水道水にかぶれた皮膚のあたりを掻く
描いていたのかもしれない
赤く、ぽつぽつと、
夕日の質感に似せて
 
滑車に吊るされている重量のないもの
贅沢は言わない
ほんの少しでも重みがあれば
 ....
墓石屋は雨にうたれて
このまま風邪をひいてしまいたい
はかない命と真顔で告白しても
「墓石屋なのに〜(笑)。」とギャグだと思われ
そのうち心も荒みだし
行き着いたところは
ザ・デストロイヤ ....
橋の所に咲く花は
来る川の水を見ていたし
ゆく川の水も見てた

橋の所に咲く花は
泣く私も見ていたし
笑う私も見てた

秋の風は香りを運びますねと
語りかけても
ひとりたつだけ
 ....
  死を詩にすくわれ詩に恋して死にたくなり詩にまもられまた詩を書く死ぬまで 暗い室内
小さいフグが
水槽の中心あたりを
一匹で

小さく旋回
しているのかと
よく観ると

外側の皮膚と
内側の皮膚が
ひっくり返っている
ひっきりなしに

水槽越し ....
岩波文庫の
寺田寅彦随筆集第一巻
寺田寅彦随筆集第一巻だけを
岩波文庫の寺田寅彦随筆集第一巻だけを
岩波文庫の寺田寅彦随筆集第一巻だけを専門に
岩波文庫の寺田寅彦随筆集第一巻だけを専門に扱う ....
伊藤くんがなにかべつの存在に入れ代わっていた

双眸にうかんだ青い月影

柔和に引きつれた微笑にそれが凄絶をあたえている

土蔵の板窓が震えているのは僕のふるえでも風で起こったものでもなか ....
夜の海を見に行きませんか
ライトの燈ったコンビナートを

夜の海に潜ってみませんか
ライトを持って浅いところを

 それはまるで私の原風景
 それは貴女に見せたかった風景

夜の海を ....
 
 
鉱石の中で音符が溺れる
横のようにただ長いだけの真昼
旋律とは名ばかりの
みすぼらしい数々の記載

私たちの身体は何も語れない
具体的な生活を持たない
単なる肉の塊にすぎない ....
もうお前の人生は
終わりだ
死がふさわしい
最後の願い事はなんだ
金か女か名誉か
そんなものくだらない

人生ゲームではない
真剣勝負
一度きりの大舞台
いかに人に感動を
与えら ....
夏に
川向こうで
お祭りの金魚すくい
「金魚救い」なんて書いてあったっけ

ひとというものは
あまりそう
誰かに救われたり
誰かを救えたりするようなものではないのに
金魚たち
すく ....
私が死んだらどうか
庭には一面青い花を植えてほしい

春にはシラーとアリウムが
夏にはマツムシソウとラベンダーが
秋にはクジャクソウとリンドウが
冬にはミスミソウとヒヤシンスが
それぞれ ....
  雨の日は布団を首に巻いて
  死にませう

  雨と 雨の。
  いたずらな溶解に聴力を奪われて
  雨 雨 雨の仕草をマネて眠り



  雨の日の首の ....
乾 加津也さんのおすすめリスト(5083)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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墓石屋は雨にうたれて- 花形新次自由詩3*10-10-8
橋のところに咲く花- 朧月自由詩510-10-8
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