伝えたい気持ちを形にして
あなたに届けたいけれど
そもそも私には形がなかった
とでも伝えたいのだろうか
どこかから吹いてきた風が
もう一つのどこかへと走り過ぎていく
その向こうから
妻が歩いてくるのが見える
私の妻になる人は
このような人だったのかと
今さらのように思いながら見ている
手には形あるものを持っていて
私の前で立ち止まりそれを私に渡す
妻の形をした妻から
私の形をした私へ
そして出会った頃にはまだいなかった
息子の形をした息子にも
伝えたい気持ちが形になって
その手にも届いている
私にはそもそも形がない
かつてそうだったものたちが
やがてまたいつかそうなるまでに
世界は続いていく
たとえ形がなくなろうとも
愛あるかぎり