冬から春へ向けて流れる川に
舟が浮かんで
こちらへやってくる

柔らかな唇の端から
したたる幼児の涎が
他愛のない笑いで溢れ出して
野山を越え
滾々と
滾々と進み行く川よ

小舟 ....
おもいでの形見
私にとってこれは
変わらないことのひとつ
ここには風は吹いてこないけれど
ほがらかなひだまりがぽうっとしている

いつまでも
微笑する宇宙のふちで。
私の子午線 ....
瞳の岸辺に
釣り人がやってくる
かなしみの主を釣るために

まつ毛が雨に濡れている
湖水が溢れて川になる
大地の鼓動が震えている

釣り人は帰っていく
明日もまた来るだろう
かなし ....
野辺の日に子猫のあくびうつるなり
のどかやな運転しつつ一句二句
捕まってたまるものかは犬の春
雪どけや恋しげに飛ぶ尉びたき
爺婆が黙して歩む余寒かな


春の夜に思ふ人あり物の音
三月 ....
ぼくの隣
静かなきみのポケットに
たぶん幼い
春が来ている

手を入れれば
指先に形のない手触り
必要な幸福は
それで足りる

春になったら
そう言い続けて
ぼくらは今
何を ....
電車の好きな少年だった


窓のそとを
いつも景色を走らせていた
乗客はいなかった


やがて彼は
景色のなかを走った
走りつづけた


いくつかの景色をつなぐと
電車にな ....
女が白い喉首をそらして
紅茶を空ける
カップは長くいつまでも口唇とふれている
瞼は閉じられて
なかなか開かれそうにない

テーブル、
無防備な左手の指の間をくぐり抜けて遊ぶ風 ....
繕っても繕ってもほつれてゆく
こたつぶとんのはじっこの糸のような
きみのことばに耳を傾けている
そとはつめたい雨
ポストに届いたばかりのハガキには
あと三十分で春がきます と
楽観的な文字 ....
 雨水の日の夜、眠りに落ちようとしていたら、部屋の床から正体のない桃色が霞のように立ち上ってきました。それがそのまま微細な粒子になって天井へ上り、逆さに降り積もってゆくのです。
 花のような匂いがし ....
風が吹いてるのではなく
人が吹いているのだ
居眠りしながら
遠いところまで吹いていくのだ

街に春が訪れたなら
それは誰かの夢のはじまりなのだ
気配を感じながら
やがて知らない街へ夢 ....
あの時見た花火のように

一瞬で上って
一瞬で散った

でもその一瞬が
まだ僕の心に焼きついている

微かに残る花の香りと燃えカスを
胸の奥の押し込んで空を見た

終わったという ....
歩むうち瞼閉じたる冬日かな  

三月の素晴らしきやさしさが
僕をどこかへ追いやってしまいそう。
何もないように触れた
虚しい熱が掌に帯びる。

名前のない関係で
繋がり続けてはいけないんだ。
温い毒にまどろん ....
物語は
いつからはじまったのだろう
あれは遥かふたばの記憶

いろおにの
むらさきが見つからなくて
忍びよる気配に耐え切れず
かさぶたに触れた、指先

―――ふるえていたのだ
―― ....
寄花貌

独吟坐覚雨声微
半睡詩魂散亦飛
夢裏相逢何鬱鬱
以詩顔色作薔薇


花貌に寄す

独吟 坐(そぞ)ろに雨声の微かなるを覚ゆ
半睡 詩魂 散りてはまた飛ぶ
夢裏 相逢へ ....
いつからだろう

この熱と冷、混じる空のように
二人色褪せてしまったのは


このままちりちりと
闇に包まれゆく夕暮の頃


ボクはただ、そんな予感を感じずにいられなかったのだ。
 旧ソ連共産党員の娘である彼女が
 映画で見た紅衛兵の隊列や
 そこで振られている赤旗の
 美しさについて語るとき
 地上では風が強かった
 冬型の気圧配置が緩んで
 南から温かい湿った風 ....
瓶詰めの淡い桜の花びらに葬られている背骨がふたつ



水仙を手折った君の指先が夕陽で赤くて綺麗で恐くて



ぬるいよる鏡の自分と目が合ってさびしそうだねって笑ってあげたの ....
あおい蝶だった、たったひとつの
あおいあおい蝶が飛んでいた…暗い、まばたきを忘れた夜に



さむけに痺れる歯茎の中で、とまどう悔恨のこびと、だらしな ....
 僕は1限目の春光に満ちた階段教室で
 コクヨキャンパスノートを開いている
 イトーヨーカドーの文具コーナーで
 河合先輩が恋しているレジ係の女の子から買ったノートだ
 「お釣りを貰うときに手 ....
世界の終わりのパッチワーク
つぎはぎだらけの言葉たち
伝わる振動は
どっかの硝子のまえで消えて
 
点滅した灰まみれの星と
海の底までようやく落ちて
どろどろの瞳でうたいだす
くちびる ....
尾の長き生き物らしい。寒さとは
爪並べ指を揃へて朧かな
春の月唐突に死の淵に浮く
 早春 せせらぎが白昼の形式に挿入されている
 のさ
 
 皮膚に嗅覚をはたらかせると
 柑橘系の香料のにおいのするあなたよ
 身体を重ねて両手を握りあえば
 言葉の裏側を逆さまに歩いてい ....
人が生まれる
前のことを
死んだ
とは言わない

人が生まれて
生きたから
死んだ
と言うのだ

今日も定刻通り
汽車が来る
君とキスばかりしていたら
窓からはいるそよ風が
いちごの甘い匂いになって
君の舌も綿菓子みたいに
しゅるしゅると溶けていって
つないだ左手が
初めて温度を知った気がした
やわいき ....
ざんばり ざんばりと いぬがないている

雪の準備をする
まんなかには空洞があるので
けもののようにすると よくひびく
肺のふをたいこにするのは
ああ 森の?
こぶしが地面についているや ....
私の前を
一台のトラクターが通っていく
エンジンは悲鳴を上げ
しかしその音と反比例するかのごとき
スピードで

私の前を
一台のトラクターが通っていく
タバコを燻らし
もう片方の手は ....
 足下から小石が落ちていきました。岩を跳ねながら雑草や松の枝に当たって、途中まではそれとわかったのですが、直ぐに見失われ、激しく打ち寄せる紺碧の波に呑まれて延々と続く怒濤の音に紛れてしまいます。この道 .... 湧き上がる温かい気持ちをその気持ちをそのその
また吹き上がるものを大切に包んでは静かにあなたの
手をほどきはらはら、頭上から落葉が降ったのです



ガラスでできた手指が滑らかにすべり
 ....
 君は震えて傾いでいます
 それが誕生という時間の持つスタイルだから

 僕も君と同様に傾いでいるけれども
 それはもうどうでもいいこと

 昨日見た父の遺骨の埋葬されている墓地の
 白 ....
石瀬琳々さんのおすすめリスト(4553)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
真昼の星空- 右肩良久自由詩308-3-9
鎮魂歌- こしごえ自由詩15*08-3-8
釣り人- 小川 葉自由詩408-3-7
子猫のあくび- 三州生桑俳句208-3-7
裏木戸- たもつ自由詩3008-3-7
電車- yo-yo自由詩26*08-3-7
午後- ヨルノテ ...自由詩408-3-7
はるのいと- 佐々宝砂自由詩708-3-7
雨水の日の夜のこと- 右肩良久自由詩208-3-6
春風- 小川 葉自由詩408-3-6
記憶の花- vallette自由詩208-3-6
冬日3- A-29俳句4*08-3-5
次の点で回る世界- 雨を乞う自由詩1*08-3-5
うねる、時のゆくえ- 佐野権太自由詩10*08-3-4
漢詩_寄花貌- 三州生桑伝統定型各 ...3+08-3-4
色褪せの二人- 赤澤るろ ...携帯写真+ ...208-3-4
雲を掲げ持てば風花が散る- 右肩良久自由詩2*08-3-4
青色遊戯- しろいろ短歌1208-3-4
あおい蝶がまた産声を上げる夜中(そして執拗に水は流れ続ける)- ホロウ・ ...自由詩3*08-3-3
『源氏物語』の概論の一部を学んだ日- 右肩良久自由詩1*08-3-3
こたい- ゆるこ自由詩108-3-3
寒さとは何か- 右肩良久俳句408-3-2
せせらぎ- 右肩良久自由詩1*08-3-2
汽車- 小川 葉自由詩708-3-2
早春- アヅサ自由詩8*08-3-2
したく- 縞田みや ...自由詩3*08-3-2
じいちゃん- ここ自由詩7*08-3-2
崖沿いの道- 右肩良久散文(批評 ...108-3-1
草蔭- 渡邉建志自由詩208-3-1
僕の大切なものよ- 右肩良久自由詩1+08-3-1

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