一、
せんせい、と
あたしの声が響くたび
澄んだ空気が
ゆらり
あでやかに揺れる
それに気付いて
目の奥のどうようを
れいせいな
おとなのまなざしで
隠すひと
その距離は ....
空には穴が開いている
誰かがこっそり覗いてる
交差点の真ん中に
するりと垂れた縄梯子
かばんを置いて昇ってく
初夏正午の花時計
白い帽子のカフェテラス
モノレ ....
もうすぐと押し迫る年の瀬になんだかよきことあるよなゆうぐれ
うたを詠むあこがれていたしょうじょきにすこし近づいたような今宵つきみゆ
なにほどもなかりせどせいしんの自由獲得し今の吾 ....
私の水色を空に預けると
静かな雨が降ってきました
私の水色は雨に任せて
夕暮れにまどろむと
出会った日の水色が
ゆっくり漂い始めました
伝えなければならないと
思えば思うほど ....
カップのそばで角砂糖が溶け出した
テーブルの向こうの景色が甘くゆがんで
青く透明な空気がゆれる
濃いめのコーヒーがくちびるにふれると
ひろがる香りとまざりあうことば
でき ....
一つ信じたら
一つ青い花が咲きます
しばらく想いをめぐらすと
こんぺいとうのようなその花は
かりんかりんと崩れます
一つ夢みると
一つ青い花が咲きます
何かを始めようとすると ....
ただ夜が訪れたというだけで
たまらなく悲しくなって
涙がこぼれることもある
出窓に置かれたサボテンが
月の光に絞められて
かぼそい声で私を呼んでも
ごめんね今夜は
....
青い砂時計
あの日ひとりで回転させた
さらさら流れ落ちる細かな粒子が
私に教える
青い砂時計
たぶんあなたも持っている
あの日偶然回転させた
さらさら流れる細 ....
お前との間には
いつも渇いた隔たりがあり
少し上向きの
幼い口びるに舌を寄せても
私の熱はひんやりと
遮られる
お前の泣き顔が好きだ
ほうけた赤い目と
くずれてしまった化粧が好きだ ....
公園の中で季節を売る老人が
樫の木のベンチにぽつんと座って
売れ残った夏を鳩に投げつけていた
ぼくは池を一周 口笛吹きながら
薄く晴れた十月のパノラマに
若く散った楓を敷 ....
時代と針金に固められた空から
唄と火薬に燃やされる海へ
魚群 この二文字の内側で
そうか もう僕には翼がない そうか
潮に退屈した鯨が暴れて
街を乗せた船が揺れて
....
青く光る階段の一番下で
柔らかな猫の背中をなでる
光の前でないている
小さな不安にそっと触れる
青く光る階段を見上げて
柔らかな猫の身体を抱きしめる
光は動かずそこにある
誰 ....
独り寝のうみをザブンと打ち捨てて我は遠くの彼方にこそあり 。
低いオクターブで
朝を告げながら
高いところを
水が流れている
知らないあいだに またひとつ
季節をまたいでしまった
雲と空に距離が生じてゆく
そのすきまを
縫いながら、通過す ....
いえが きゅうに しんと したので あわてて でんわを かけてみた 。 誰も 居なかった 。 ヒルサガリノ 午後 。
青い空気をかきまぜる
そんな時がきたのです
時は夕暮れ
ヴォリュームを下げるように
スイッチを回すと
青は静かに濃くなりました
青い空気が動きだす
そんな時がきた ....
一面のただひろいうみへわたしはことばのおーるをもって漕ぎ出す。そこここにみえるうつくしいかがやくかおたちみんなことばをさがしているこのうつくしいよるに 。
銀版をおおった北斗七星はちいさくまるくよぞらにひかっていた。この光景を誰かとみたかったろう。おそらくせかいが終わるころはじまる頃あなたとあのとむそーやのように屋根であなたとみたかったそういやはっくるべ ....
あの人にあったのは神社のふかい{ルビ社り=もり}ででした。あのひとのまなざしはふるくふかく易しげでわたしは初めてかみさまか仏様にお会いしたかのようでした。あのひとのひとみはつきのようであのひとの口元は ....
青く光るので
確かめない訳にはいかないのです
無数のことばのもとが
空気に漂って
青いちりのように舞うのです
ゆっくりと舞い降りる
無数のことばのもとが
時々青く光るのです
....
透明な音にみちびかれて
きょうもわたしは海へ向かう
波音ひびく海岸に
さよならをいうのだ
しろいすなの間にみえたのは
しろくろの貝殻と忘れられたビー玉
すこしだけはしってみ ....
空にうかぶ声を追いかけていた
道はきれいな家やお店を抜けて
街路樹はどれも枝葉を停めて
バスの車窓に老婆の抜け殻を見た
石筆を握って走りながら
屋敷の塀に直線を引いてゆく ....
私の中に
午前を飼っている
白い舟がいくつか
遠く漂う午前だ
華奢な草の葉がためらいがちに揺れ
吹く風のなかに
覚束なげな青さが
消えない午前だ
もう長いこと飼っている
だからも ....
猫が疑問符を撒きちらし
夜がいくらか賑わいを増す
その髭の長さぶんの内容を
ひとつはそっぽをむいた月へ
ひとつは笑い揺れる木々へと
夜が明けるまで
あくびする間もなく語りかける
永遠 ....
お兄ちゃん、と
呼ぶのが
照れくさくて
そのまま
僕たちは年をとった。
あなたは家を出て
後を追うように
私も出て
あなたは戻り
あるいは他所の国へ
私は
死ぬまであなたの弟 ....
私は夏雲のあるこの空に
人差し指を差し込んで
この青空の
その底にある
人肌の群青に触れようとする
そのぬくもりは昔日の
小さなおまえのぬくもりに似て
あわあわと崩れそうにゆれる
いつ ....
深くまでつづいている
いつか見失った道の先にある、森で
夏の日
ぼくたちは、生まれた
頭上には空があった
ぼくたちと空の間を通り過ぎてく風があった
ふりそそぐものは、光
光とも見 ....
刈り入れ、葉、枯れ
わたしたち。
貧窮は カタカタ 呼ばわる
明るさについて。
茎が折れ、そのあたりを、
嗅ぐ。 鼻孔、ひらき、
足も萎え、
何度もなぐられた ....
一度
僕は
思い切り殴られてみよう
ガード下のあたりの
金属の匂いのする町
鼻は折れ
メガネは吹き飛ぶ
歯はぐらぐらで
足は痙攣したまま
もう
立ち上がることもできなくて
波のよ ....
いま、ここでできること
わたしのなかの
もう忘れた 日々のなかの
灰の底で まだ暖かなものを
はだかの ゆびで つまみ
てのひらのなかで
そっと 吹きかけていくこと
ああ 雨が窓を打 ....
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