信号待ちをするときは
雨のアスファルトを
濡らす夜の光を
滑るように踏み締める車の連続の
車、車、車の
融合しているかのようなスピードに
巻き込まれないだけの重さの、足 ....
明日
僕は
旅に
出る
遠い
所だ
君の
世界
より
外へ
行く
とき
一度
だけ
振り
返る
から
僕と
目を
合わ
せて
くれ
窓の
一滴
....
春酔
酒仙酣臥夢還天
独酌沈吟不可眠
美酒美人春一夜
詩人血涙酔千年
春酔
酒仙は酣臥して天に還るを夢む
独酌 沈吟 眠るべからず
美酒 美人 春一夜
詩人の血涙 酔 ....
世界は卵の内にある
遥かましろい天上に
緑のひとが出口へ駆ける
「非常口」の表示はあり
いつかあそこに罅が入り
殻の割れる終わりの日まで
人々は{ルビ永遠=とわ}を知らず ....
小さいときの彼は
割と人見知りのほうだったと思います
竹棒の先に白墨挟んでね
線を引きながら道を歩く
不思議とそんな遊びに熱中するような子でした
長々と続いた白線を振り返って
嬉しそうでね ....
夜伽無精卵温めをり立ちいづる半音階の夢
橋懸りに若き裸身ありて放火の予感にさいなまれ
例えば
それは真っ黒な海に広がる
一滴のミルク
ゆるゆると広がり
消えて行くのか
それとも行かないのか
海の広さを
図りかねている
年月よりも尚
重い枷があるのだとして
そ ....
{引用=
物語を読むように
音楽を聴くように
写真を撮るように
素描を描くように
きっと、一番大切な時間を
いつも過ごしていたい}
A点がわからない
{引用=
シャッターを押すよ ....
回っている。
ロングスカートをはいた女が
スカートの傘の中央でバランスを取りながら。目を閉じて。
右手は垂直に天井に。左手を横にゆるやかに伸ばし、回転する。
長い間、ただ一心に回り続ける。
....
訳もなく
お砂糖の糸の溶けて漂う
コップの中の水の宙が
明るい、そこへ
悲しい左目から順に
預ければいい
ほら
眼球が融けて、眩しい
それから右の頬 ....
影なびくほうへ
路を曲がる
前も後ろも
午後になる
花の色と
名前を忘れる
すぐそばにただ
ひとつ揺れる
雨と雪が経ち
かたちは鳴る
すぎてゆく手に ....
瓦礫と郵便ポスト白く白く輸入
歩み寄る 影で谷底汚すべく
伝え聞く神話の沖にブイひとつ
島に立ち残像から残像見下ろす
和紙の空二重に見え足首から見た
まだプールに飛び込む ....
雨にかすむ
はなみずき
だんだん
あたりも暗くなって
今なら
泣ける
気がするの
おでことおでこをくっつけて
君と春のうたた寝
寝息が波のように遠ざかり
いつしか君は夢の中
匂うような春はこんなふうに
小さな子供に戻って
やさしい眠りに包まれていたい
そっとそっとゆら ....
春霞たなびく青山(せいざん)の林の中で
猛然と一本の白樺を犯してをりますと
感極まった白樺は、小枝を私の左目に突き立てまして
・・・男冥利に尽きます
その時に孕ませた双子のうち
一人は聖 ....
僕は睡蓮の池の絵に
名前を付けた
夕暮れ
どこかヨーロッパの石畳の町
大きな花屋が一軒あって
歩道に沢山の鉢植えの花をいくつもならべて
ほとんど黄色の花が多いみたいだけれど
どれも金塊を ....
窓際からの風が
僅かに
ほんの僅かに
口角を持ち上げては、
私を彩る
それは
ふらつく指先から
あなたの
瞳までの距離を
計ろうとする度に
....
彼女の潔白な素肌、
ずっと透明なまま
水面で服の中身となり
日々潤いを保ちつつ
日々最高の状態に更新、
白く淡く蒼く細く
叩くと高く響くだろう
手足は長くしなやかに
大きくわずかに ....
あしおとは何処からもついて来ず
あしあとは干乾びて いくつか
{ルビ香蒲=がま}の揺れるが聞こえる気がするし
それが自らを抉り肉のはじけるが聞こえる
気がする
夏のそそり立つ轟音は ....
夜空に
子宮が赤く
月となって
浮かんでいる
夜空は
インディゴや
プルシャンブルーや
ビリジアンで
幾重にも
塗り重ねられ
ナイフように
尖っている
窓辺 ....
さよならは言わない
青葉芽吹く春に
さよならは言えない
銀杏の赤ん坊が指を
くるくると丸めて
いくつも幾筋も
重なり合って
曇り空に緊張感を
旅立つならば
後ろは振り返らない
....
真夏の海岸でのたれ死ぬ
そこから私の旅ははじまる
*
毎日のように続く毎日の中で
呼吸をするのと同じくらい自然に
私の言葉は溢れ出てくる
笑顔のように涙のように
あ ....
080414
鬱蒼とした針葉樹林を抜けると、その先にはさわさわとした竹林がございました。先導するお頭の魚覧観音を偲ばせる柔和なお顔にも笑みがこぼれ、思わず ....
風が光っている
それを
瞼の裏で感じて
われに五月を
犯罪的なほどに
短いスカートをはいた
女子高生の耳元で
一編の詩を
ささやいてみたい
気が合えば
ふたりで ....
人体模型は海を見ていた
筋肉の組織も内臓も剥き出しなのに
それは自分の何をも語りはしない
こうしていると
かつては本当の人間だったのかもしれない、と思う
電池の切れた玩具を
大事そうに ....
かぜが
よにん
てをつないで
ふいている
とおくに
ひろびろと
あおぞらが
ひろがる
あのころ
ぼくらは
そんなまいにちを
すごしていた
あなたがかいた
あねもね ....
そらの隙間
を、埋めようとして
春に吹けば花を
夏に吹けば草切れを
僕の僅かな体温で
そらのどこかに隙間ができて
そのどこかをえいえんに
、さがしつづけ
....
アヰイロの階調遥けく うすくうすく遠ざかるいくつもの記憶(トキ)
剥落ある写真の眼差し夕暮れて今日と明日(アス)の間(アハヒ)を行き来せる
闇に浮かぶ小さな橙色の下、
母は今日もいびきをかいて寝ている。
ぐう
母のいびきは、しかしながら母らしく控えめである。
中年女性のにおい。
皺が増えた、と、三時間ほど前、鏡を覗き込み呟いてい ....
春日さす畑の瓶の水に浮く雀の遺骸青き空かな
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