今夜も蛍光灯の光が恋しくて
都会の片隅で
人工の光を浴びに現れる
駆け下りてくる人影
坂道にカタカタ鳴って
わたし、知っているよ
手にしたビニール袋には
小さな石鹸と歯ブラシが一本
....
冷凍室に閉じ込めて
そっと 耳を寄せたりはしない
腹を裂き眼球を抉り
死なない形を創り上げて
寂しさを 裏側に貼り付ける
夜中の静けさが
硝子玉した眼に暗い光を燈すと
怯えた幼児 ....
どうしてあのとき
空に手が届くと思ったのだろう
空を隠していたのは
紛れもなく
僕自身の手のひらだったのに
何でも知った風な顔をして
厳密に言ってやろう
厳密に言えば
現在(いま)は現在(いま)たり得ない
全ては敏感に感じ取る
私の肌の所為
全てはびくびくと震える
私の神経の仕業 ....
木々の間からこぼれ落ちる月
あぁそうだ
あの空へ僕はもう一度帰れる
たしかにあの時そう思ったんだ
乾いた風を湿らせて
どこまでも走る 秋の土を
もう二度と戻れない
月日を想い
....
雨が止みはじめた頃に、
傘を差しはじめてみた。
びしょ濡れになって傘の下、
僕は何かに守られていると強く感じる。
道の向こう側から、
少年が歩いてくる。
あの懐かしい長靴の黄色が、
僕の ....
誰かがその両手に言葉を沈めた
すべての夜が時間通りになっていく
長い石段のその先で祈り続けてみた
世界はそんなふうに縁取られて
三十回目の離陸の後で
飛び立つ行方のさらに遠くをご覧なさい ....
睡魔の中で詩を書いている
まだ見ぬ1行を探して
視界は夢の中へと入っていき
詩を書いている
明るい緑色の柑橘系アルコールに酔い
体は蒸気する
暑さの中で目が覚める
ペンを握る
....
カタカナの色名
太陽は波に抱かれた宝石を研磨する
ほてった鱗は月光で冷ます
満月の夜には
珊瑚の産卵が始まる
蜘蛛の編んだ細い網に雫
ひとつひとつに虹がかかり
その上を二人連れ立っていく
時には酔った蝶と芳しい花
時には奏でる風と歌う鳥
閉じ込められたように
草は伸びる炎天下
空は薄く笑い
透明な宇宙を透かしてた
線引きの雲
飛行機雲
地震雲
鳥居またいで此処の世は何処だ?
ラジオノイズにアナログの願い
島だ ....
真夜中の空気に触れて、夜行性の猫の気分
都会でだって星は見えるよ、ウソツキ。
暗い空を飛んでいく
夜間飛行の静かな旅路は
僕の想像を遥かに超えて、その先で
国境線をも越えてゆくのだ、ステ ....
あおくひろがる海
きんいろの空の境
ひかる波も白雲も
遠くて浜
ふたりで歩いて浜
ただ この一時だけでも
私とおなじく想ってくれれば
仰いではみおろす
―(わた ....
初夏の陽射しは 便りを運ぶ
宛名も消印も
差出人も
見当たらないけれど
懐かしさという
こころもとない手触りに
わたしは ゆっくり目を閉じて
紫陽花のさざなみに
いだかれる
....
笑っていれば良かった
好きなものに
好きなだけ名前を書いて良かった
右手に持てないものは
左手に持って
それでも持てなければ
空に放して
それから、かえる
透きとおった卵の日のこと ....
世界のありったけの明かりに負けず
その人の背中越しに三日月が見えた
一瞬で長い腕がそれを遮る
活路を見出さなくてはね
しっとりした声で
それはそろりと湖底を撫でるよう ....
チチカカ湖
チチカカ湖
チチカカ湖の畔
チチカカ湖を小舟で行く
小舟に波がぶつかると
小舟は揺れる
揺れる小舟に
チチカカ湖は歌う
チチカカ、チチカカ、チチカカと
一人の男が ....
時間が、かたちになるとしたら
思うよりも綺麗に見えるかもしれない
夕日を右側に受けながら
止まった部屋が揺れた気がする
ほんの少しのリズムを
みんなが取り戻していく
いつかよりも欠けた ....
あなたの幸せを願う人は多いから
むこうでは元気ですか
だれにいうわけでもなく
空気が震えている
澄んだ空で祈っていても
空は青いままで
涙は降らない
にとうへんさんかくけいの
まんなかに
いっぽん
せんをひき
ぼくのなまえ
と
あのこのなまえ
こっそり
かいて
あわててけした
*翔る*
頭上の
ヘリコプターに向けて
大きく両腕を振る
「おーい」って叫んだ
何度も叫んだ
声だけが
翔けていく
*風*
自転車の
ペダルを漕ぐのも
間に合 ....
君から何かもらえるなら
私は何をほしがればいいだろう
モノでも
コトバでも
私はきっと満足できない
キミじゃなきゃ満たせない
だから特権をちょうだい
....
君に何か届けるなら
言葉がいい
たった一言で
君を笑顔にして上げられるような
たった一言で
私まで嬉しくなるような
言葉を君に、贈りたい
他の誰にもで ....
たくさんの人が眠っている
重力に抗うこともできずに
背から腹までのわずかな高さの
影をつくって
僕らの毎日は孤独な戦いだ
星の中心へ向かおうとする力との
今日もまた爆音が響き
崩れていく ....
からみついて
はなれ ない
わたし の
あし を
て を
はな して
そら を みつめる
あ な た
きえない ゆめ
す てられ ない
きら ....
ずみの花が咲いた
夜にかくれて ひとつ、またひとつと
ふくらんでは夢のようにひらく優しい花よ
ずみの花が光る
風を香らせ たわわに揺れる
蜜蜂達が 遊ぶ梢に
私も腕を拡げて 飛びたい ....
あしたあさってしあさって
とんでまわってなげキッス
土曜、日曜はゆううつになる
ゆううつになるので何もしたくなくなる
寝る
寝るということをする
大いなる矛盾に気が付いたので何もし ....
すべすべしたビロードの服
きんぽうげは穏やかな黄金の波のよう
美味そうな花粉をぶら下げてお帰り
よく唸る翅は迷わないため
眠る赤ん坊の邪魔をしてはいけない
真夜中にもう会えない
飛べるよぼくは
ピーターパンで
言ったろきみは
ティンカーベルさ
かなしいきもちは
ぼくのそばへ
ぼくのそばにおいて
きみは魔法を
投げておいで
結ば ....
荒き野に
異香放てるひとところ
{ルビ頽=くづ}るるばかりの山百合なりき
五月雨のホームに
長く停車する
灯は明々と空きの電車よ
北海に
まなこ鋭 ....
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