春日さす畑の瓶の水に浮く雀の遺骸青き空かな
公園ベンチの裏にして
月光こぼれた
のですから
例えばこのマンホール
つまりは東京くるぶしも
ぐぁぁん
響くわけですよ
ひざが笑っておりまする
それでもステップ踏みませば
....
ゆる、ゆる、何度もまぶたは
まぶた、と知る。
いないあなたを知らず
カーテン、と知り、朝、と知る。
行き来する仄明るい青に促され
ゆる、ゆる、まぶたは
ぬくい水、と知る。
....
トマトが嫌い
ぐちゃぐちゃした赤
食べると涙が止まらなくなる
ピーマンが好き
舌の上にちいさく収まり
生きてゆく苦味をパロディにする
....
春夜まとふ身いつしか見えざる東北(トウボク)の桜花幻視する
その娘は頬を赤らめることができる
ただそれだけのわけで
マートのレジを叩く少女を愛おしく思った
何故人は人を求めるのかね
一人ではないという幻想
届くことのないテレパシー
真空の宙 ....
孤独な旅に早くもくたびれて
テントの中で アパートの椅子を思う
食卓に一脚の椅子
雨に煙った三日間
バイク乗りは手を差し伸べあうが
届ける花束はない
明日はもっと 寂しい所へ行こう ....
悲しいだけ
とつぶやいたカメレオンが鳥居にぶら下がっている
雷に打たれていたのは
乾いた老木と夜の帳
指先に切り傷
問題になるのはザクロの色ではなくて
あなたへの愛
水蜘蛛に絡め取ら ....
去年の落葉のように
毛布にくるまって待つ
それが前夜、という夜
篝火はひどく電気仕掛けで
ひとりぼっちな自己主張
もう永遠はいらないから
あなたを灼きながら、焦がれたい ....
人気(ヒトケ)なき通りをマネキン誘拐され行く春の日うらら
早婚の少女の睡眠浅し桃色の指先のプレリュード
長いブロンドの髪を靡かせて、あの娘が私を待っている。
早く行かねばならぬ、彼女を待たせるわけにはいかない。
走りながら噴水のウンディーネを横目で見る、私を見ていた。
薔薇の咲いた庭を駆ける、 ....
中耳に日章旗解けをり回廊に夥しき英霊
王国蜃気楼の彼方呼べども昔々在りしとて
ぎゅぅってする
照れちゃうからうつむく
うつむいたら
あたしの小さなおっぱいが
君のうすい胸板を不機嫌そうに遠ざけているのが見えた
{引用=夢のおはなし
いつか君と同じベッドであたしが ....
二十代の頃。駅を出てパチンコ屋の横をすり抜け、剣池へと続く緩い坂道の途中の小さな倉庫で働いていました。昼はお皿だけおしゃれなお好み焼き屋とか、ちっぽけな食品スーパーのお総菜とか。定期券を使って駅の中に ....
ケイタイより幻聴の狂想曲(カプリチオ)その日の午後少年失踪す
杳として知れざれば黄昏に少年マッチすりをり
本当の姿を毛布に絡めて
誰にも知られないための夜が
いつも通りに朝にむかっていく
眠れない時には{ルビ主電源=ブレーカー}を落とし
遮光カーテンが
偽物の夜景から部屋を隠す
欲しいのは ....
ぼくたちはおぼれていく
息ができなくて、
そんなときに浮かぶ顔はいったい、
だれなんだろう
きみは、
さびしくなったらだれを思い出すんだろう
携帯電話の送信ボタンを押せ ....
いつのことか
忘れていた
色彩の花は
不分明な闇に
溶け始め
たおやかな
曲線の匂い
に埋没して
ユリ科植物
の夜は
深く沈む
花粉のついた
指
の先に
花は
匂いを残し ....
無心の空に 雲がとおくまでたなびいていた
いちばんの孤独を慰めてくれたのは君だった
きみが口ずさんでいた はかない歌
橘の花に夕立が降っていました
蜜柑色のとっぷりしたくうきのもとで
....
そっとくちづけるかのように
首筋に立てた牙が血液を辿ってゆく
やさしいじかん
一度だけ閉じられたガゼルの眼は
空を仰いでいたけれど
若草は映らなかったに違いない
荒野の果てにいる動物は
....
遠吠えの先端を夜に梳きこんで星にまぎれた魂ひとつ
恒星は渦巻く夜を抱きしめる 輝いている自覚はなしに
思い出が次の一歩の糧となる 今はもう亡きあの赤い星
....
うぐひすやゴミ捨てる人拾ふ人
やはらかき子猫の腹や春の風
菜の花やまにまに猫はキスをして
会ふたびに会ふたびに胸はあたたかし
片恋や今宵の花は一分咲き
春眠や夢も ....
いつのまにか入日は焼け落ちていた
にびいろのざわめきとしじまが
霊気のたもとでからみあいながら
青い春の痕跡も堕ちていった
仰向けで腕組みしている「時間 ....
午前四時五十七分
うつくしくひかりに濡れた朝のなか
しっとりと艶やかな群青に紺碧にきんいろのそらのなかを
あなたはおちてきました
たったひとり
東京は潰滅しました
炎を ....
西瓜のように
まるい地球をぶらさげて
その人はやってきた
裸で生きるには
夏はあまりにも暑すぎた
冬はあまりにも悲しすぎた
ぽんぽんと叩いて
いまは食べごろではない
と ....
080404
コレでよい
コレで
ひとかけらの土塊を
脚で踏みつぶす
粉々にしてから
ふるいにかける
乾かしては水を加え
塊にして
叩く
叩く
....
壁
のひび割れを
空がうつろっていく
に
なりたい
あるいは気付いてほしい
私の複眼で
午前二時に佇む九段の鳥居は灯りを探し
一千里先で蛇が
黒光りをもって抜け殻 ....
夫の着ていたワイシャツの
袖口や襟元の生地が擦れてしまい
これで会社に行ってはいけないと
わたしが云い
名残惜しそうに夫はそれを差し出した
紺地に白チェックのワイシャツは
今日から ....
そこはいつも夜で 小鳥が深い森にさえずっている。
聞こえるかい?ねむる森の奥で
のびやかにさえずっている声が。
…ここはそこなんだ。ぼくらは飛んだんだ。
月の照 ....
どの経を択ぶも花野
そう呟いて少女が
コスモスの群れに混じる
大げさに手をふる姿に見覚えがある
一八歳の唇の硬さも
一輪を手折って
握りしめた形のまま風になって
彼方から押し寄せてくる
....
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