僕は 野に咲く花にある日尋ねた
「どうして咲くの」
枯れるために咲いた花がいった
「きれいならいいのよ それで」
刈られるために咲く花はいった
....
しろいしろい部屋に
しろいしろいテーブルと椅子
しろいしろいお皿に
なにかうつくしい食べるもの
朝の桃色の光が
しろいしろい部屋の
しろいしろいテーブルと椅子と
しろいしろいお皿と
....
しんかんせんが はっしゃする
ぐんぐんとはなれゆくきみのすむまちへ
ことばにならぬおもい
かそくするしんこうほうこうにさからって
きゅっ とくちをつぐんだまま
きみのことを すき ....
笑つてゐてね。
だうか、御前。
何時の日も笑顔を。
花が散つてゆくよ。
空気が緩んで来たのを感じるか。
屹度まうすぐひらりひらりと、桃色の霞が舞ふよ。
御前の後姿のやう ....
画一的な朝の訪れ
不安を抱えたまま
自分の意思とは関係なく
交わさざるを得ない
自らを束縛するための契約に
定められた時間のために
僕は歩いている
感情は絶え ....
オレンジ色に染まる公園で
僕はひとりかくれんぼうをする
ぞうさんのすべり台の上で
数を百までかぞえても
僕を探しに来る子はだあれもいない
風が気まぐれに揺らすぶらんこの
長くのびた ....
ポケットの中で粉々に砕け散ったビスケットを
乾燥した指で摘んで口に運んだ
解けたチョコチップが指に絡んで
煙草のフィルターまでベトベトになった
お前がくれたチョコチップビスケット
これで ....
1
いっせえので
声に出してみよう
わたしたちきっとふたごみたい
チェリー
ピーナッツ
ハッピーアイスクリーム
2
いけないな
わたしたちって
いけない ....
春の花を見つける
忘れないように匂いを嗅ぐ
きっとこの花が
私を飾る
だから忘れないように
匂いを嗅ぐ
夏の果実をかじる
熟す時期を覚えておく
きっと私が最期に食す ....
下弦の月
空に星
静かに見上げる
この窓の憂鬱に
暗闇は満ちる潮
夕焼けは あの約束
長い沈黙
昼から 読み続けた 本
見上げれば 夕闇 押し寄せ
スタンドに灯
....
一瞬で恋に落ちたりこの歳までときめき知らず生きて来し吾が
青い月の下で
唇が切れると
錆びた味は生温く
舌先に現実とゆめとの
境目をおしえて
わたしが誰であったか
あなたが誰であったかを
思い出させる
青い月の下で
繰り返されるくち ....
今、発車前の夜行列車のなかで
この手紙を書いています。上野駅
は昔から無数の人々が様々な想い
を抱いて上京する駅なので、昔と
変わらぬ空気が今も残っている気
がします。
先程、少 ....
血、が、
腹の上にこぼれてとどまる
暗い おまえの血 月がこぼした おまえの血
おまえは笑っている
自分からこぼれ出た色の美しさに
おまえは目を見張る
血、は、
....
思い出す
ロンドンの路上に描かれた
誰も訪れたことのない大聖堂
クレヨンのドアを開ければ
鳴った1ポンドの音
思い出す
場末の映画館を探して
路地を何度も曲がり続け
が、結局たどり ....
熱を帯びていく
赤い唇に似た花びらが体に落ちる
落ちていくのは花びらか
白いあなたの体か
波がうねるように
ねむり閉じられた視線をつなぐあなたの扉
漆黒の瞳が中に閉じ込められ
わたし ....
ぱちぱちと
両目ウインク。
一級障害者になる
なんて
予測もつかず。
みち
ただ
生まれたままを
そのまんま
すくすく
生きてきて。
やあ
やあ
思いっきり
拘 ....
鉄塔の赤き光りの明滅に取り囲まれて冬ぞ抱くべき
笑い
2001/05/20
(現代詩フォーラム既出)
一人遊びの友は静かにほほえむ
彼の目にも明るい影が白く光り
....
緑色した物干し竿がある
律儀に並んだ洗濯物がある
真っ白いシャツの清潔な香りがある
どこかのだれかの朝の庭で
どこかのだれかが伸びをしている
あた ....
ここからは見えぬところで太陽がノヴァでもしたのか月が明るい
地上のみならずはるかな高みから真空気圏貫き通して
月影とは月の光のことでした足元に種々ものの輪郭
真空の中には淡く太陽の側へと伸び ....
だれの庭から 伸びたのだろう
高くそびえる 木の尖端が
青空に 突き刺さっている
その破れから ふりそそぐものに
妖精が蠅のように たかっている
平日の午後の淡くうすらいだ日差しは
ここ植物公園の順路にも平等に降りそそいでいる
ダッフルコートを着たタイピストが古びたベンチで
自分宛ての手紙を子細らしく開いている
吐息のような西風が広 ....
透明と漆黒の間
無限階調の青い温度を
滑らかにはばたく
マンタ
重力は知らない
裏返り、途絶えてゆく
浮力の哀しみだけを
白い腹に秘めて
辿りついた系譜は
争い合う知識ではなく
....
先代よこころに蔦が下りてきた
門番見られていることに気付き互い違いの塀
火を焚く婦人会 屋上に別の一団
苦闘の末つかんだ藁 海がそこまで
林に風ガスコンロの火力と左右
通 ....
森を歩く
一人きりで
冬の森を
霧雨の中を
凍える手は
いばらをつかみ
血が流れる
痛みを胸に
胸の痛みは
置いてきたもの
馬鹿から始まり
今は世界
....
電話が鳴っている
図書館の北側には
地平線のようにゆるされた
、窓がある
そらは一層曇っていて
灰色は遠い罪
どこにあるのか
詩はどこにあるのか
死にかけの好々爺の曲がった背中か
とんでもない家のとんでもない場所に
落っこちた林檎の実の中?
詩はどこにあるのか
....
遠い昔に
私は生まれなかったけれど
言葉によって
その過去に行くことができる
言葉以上のものを見ることもできる
遥か未来に
私は生きることはできないけれど
言葉によって
その時の先 ....
私の中の
ちいさな夜たちは
はぎれを縫いつけた様に集まって
窓に映っている
それを眺めている
しめったガラスの向こう
いつ決壊してもおかしくない
時が止まったかのように
....
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