何処でもない場所は
何処にもない場所ではなくて
そこには一輪の花が咲いています
それはとても美しく咲いていて
なかなか近づくこともできなくて
あるとき鳥が一羽やってきて言いました ....
まるで
この世の
全てのものが
寝静まったかのような
そんな静寂に
包まれたとある一角
溝の中で自慢の目を
光らせる野良猫さえも
その混沌とした
闇に溶け込み ....
鳥篭を落とす
田圃、鳥のいない
鳥篭だらけの田圃
渇いた積み藁に火を放ち
積み藁に火を放ち、
冬が勃起する
ふくよかな夕焼け覆う、
冬がゆっくりと
深く揺れ
....
休日に公園で本を読むのが好きだ。
園内では、緑を眺めることより他にすることがないから、読書に専念できる。
解し難い本を繙(ひもと)くのは公園に限る。
今一つの楽しみは、公園に巣くふ野良猫たち ....
駐輪場で鳩がむねを撃たれて
仰向けに休んでいる
白い翼をとじ
両足を揃えてたたみ
なにを見ているのか
つめたい檻の外へ
まばたきを急ぎながら
その心臓は重すぎる
あかをはき出し ....
九度二分を踏みつけてゆく夜半の猫
引汐を 追って沖まで 春の海
{ルビ石鹸=しゃぼん}玉 私の知らない 窓のそと
さふして立つてゐて坐つてゐてさふして
京都にて一人歩きの僕だった安い映画「別れの一本杉」
思い出のメロディーよ一刻一刻が大切なこの日この夜
授業が終わって隅っこで今日の給料を待つ絵の先生は
夕暮れも間近一人机に座し ....
私はあなたの足から離れてしまいました
橋から見下ろす川の水が
私を誘っているようでした
一瞬だけ
ほんの一瞬だけ
あなたのことを忘れてしまって
そのまま川に吸い込まれてしまいました
水の ....
あなたから逃れるように
発車間際の列車に飛び乗れば
涙が後から飛び散って行く
誰かここから連れ出して
あなたのいないところへ
愛を確かめるたび悲しくなるの
あなたのやさしさ愛さえも
....
1
うすい意識のなかで、
記憶の繊毛を流れる、
赤く染まる湾曲した河が、
身篭った豊満な魚の群を頬張り、
大らかな流れは、血栓をおこす。
かたわらの言葉を持たない喪服の街は、 ....
あの人も去ってこの人も去って
行く道の知れぬこの先を
一人歩いてゆかねばならぬというのなら
悲しみにも嫉妬にも涙することはないのだろうか
ただ孤独ゆえの涙は透明で美しいといっても
そ ....
男はその歌を四十年間聴き続けた
なのにまともに歌えない
外国語の入っている歌だったからだ
けどサビならまともに歌える
今となってはそのサビの部分は彼の人生の教訓そのものになってしま ....
きみをひらくと
なかから ちいさなきみが
ぽろぽろと はだかのままで
たくさんの 砂金のようにこぼれて
たくさんのきみは 少しはずかしそうに
ひざをかかえてる
....
朝まだき春の焚火のやはらかく
四十雀日雀春田の修飾符
曾祖父は清水一家や忘れ汐
春の海見やり枯木に火を点ける
野火猛る猛れども焼き尽くさずに
焚火して未だ青春の語を背負ふ ....
{ルビ微睡=まどろ}んで、乗り過ごすうちに
春まで来てしまった
0番線から広がる風景は
いつかの記憶と曖昧につながっていて
舞いあがる風のぬくもりが
薄紅の小路や
石造りの橋や
覗き ....
君が
ぽつん。
と残した香りが
僕の表面を覆う理性を
突き抜けて
真ん中から少し左を
ソーダ水のやうに
刺激してくる。
今になって
ああ、あ ....
翼を有する生きものに
あこがれていた
のぞみの場所までは
もちろんのこと
そこから
遥かな地平のすみまで
こころはきっと
羽ばたける
翼を有する生きかたに
あこがれて ....
今、踏んだ、枯れ枝
その中に眠っていた想い
遠ざかってゆく
永遠に
今、放った、貝殻
僕の手のひらの温度を引いて
遠ざかってゆく
永遠に
雲は遠くの水平線に砕け
....
乾いた枝を踏んで
分け入ってゆく
ひとり
黒い森へ
木漏れ日と見まごうほど
雨のよに降り注ぐ見知らぬ星座
足元の影
黒々と
獣の踏みならしたあとを
なぞってゆく
....
ねえ手を繋ぎませんこと
恥ずかしいのは私も同じ
否、と御即答されるのは
判っているけれど
はあっと息を吹き掛け
一瞬の合間に空気が
冷やされ地面に落ちて行く
まるで貴方 ....
空飛ぶ風船
しぼんで落ちた
胸がチクリと痛んだ
上がって
上がって
最後は
なにもなかったように
空飛ぶ風船
しぼんで落ちた
今日は
どの ....
あなたなど何処にもいないまぶしさの闇あびるとき微笑む真昼
いくつかの空のなかからひとつだけ溶けゆく青に造られし道
海と空むすぶ羽音の舞の輪に青の魚の名を ....
風が落ちた音がしたので
私の目は窓をみました
窓には装飾が施されていて
モザイク調の風が白く見えました
白く見えた風は
ただの空のかたまりでした
かたまりはしばらく白色になると ....
みずいろの風に誘われ野原にて射殺されたねぼくはきみに
いつかきいたきみの翅音は悲しくて見上げた空にながれる{ルビ虹=なみだ}
きっとこの冷えた大気は羊水で泳いでいけるさあの ....
たぶん、ここの現役さんのなかで投稿された作品を一番読んでいるのは、ぴ@じゃないのかなと思っています。お名前を勝手に出して申し訳無いのですが、ここでの古参のおひとり、たもつさんが4187ポイント出して ....
エアー、夏のように
薄い服を着たあなたが
少し口を開けて
世界とつながっている
あなたの唇も手も皺に慣れましたね
前より縮んで
それでもまだ懐かしい
エアー、吸えるものは
たくさん ....
「おらあ悪党だすけ、地獄の閻魔様にも嫌われてなかなかお迎えが来ねぇ」
と元気に遊びに来ては、父によくこぼしていた祖父だったが
晩年はながいこと寝たきりだった
曲がったまま固まっていた脚のせいで棺 ....
―RIOJAにて
見渡す限りの葡萄畑を歩いてゆく
そこ此処に きれいな花をつけた木が点在している
アルメンドラ!とおまえが叫んで 駆け寄って
木 ....
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