栗の花の下を雨が降る
そこを通り抜けるから
貧弱なころもは着ない
ならば裸体か それも
トルソの形がふさわしい
夏という夏は虫の仮装をして栗の花に集う
これは別れた恋 ....
知らないうちに
ノックされていた
ぼくが
まだ
そう 空を見ていた頃の
思い出が甦るのは
夜明けに
似ている気がする
静かで 重くて
泣いてしまいそうになる
....
ドレープの裾/摘むなんて無粋なこと/しないでたくしあげて/そこから/ロッシの/彫刻のようなピンヒールで/ゆっくりと肢を伸ばすから/疑問符の嘘/繕うなんて野暮なこと/でもいいから囁いて/枯葉が/まだ新芽 ....
余裕、
事物としてでなく
魂の電線、
ギター。
路上に仕掛けられた
木片ーその下で
丸い火薬粒が
出番をひかえている。
役者であると同時に
観客である 少年たちは
電信柱 ....
夏のはじまりは
いつも雨
何処からともなくきこえてくる
海のうた
(セイレーン)
還る場所をさがすように旅をする
あの波の繰り返しのように響いてくる
記憶のような満ちひきに名 ....
{引用=
目が覆われて、きみと
わたしは
また他人同士になる
異質な
夜が、きみを
運んでいく
誰のためでも
なく、死にたい
の
夜をめざす、すべては
わたしが
....
こんなにつめたい夜のまんなか
あなたはなにをうたうのかしら
とおいところであなたはなにを
なにをおもってうたうのかしら
先ほどふったばかり ....
薔薇をあなたに
五月の薔薇をあなたにあげたくて
私はひとり庭をさまよっている
ハーブの花畑を通って
クレマチスの花園へ
キングサリのアーチをくぐったら
そこはもう薔薇迷宮
色とりどり ....
じりじりとあがる気温に耐えかねて
とうとう藤はにげてしまった
山の中に
まだどうにか残っている
冷ややかな空気と
無口な水を引き連れて
5月の山の青です
より一層涼やかな青です
....
模造紙を押さふる指のかはりなり『ニシノユキヒコの恋と冒険』
取り合へず触れてみる癖おそらくは核爆弾の制御室でも
エンター
「えい」てふごと押すEnter Keyの ....
六月の招待状にマルをつけ刈られて強く匂いたつ緑
噛みついた腕から甘い草いきれ雨も恵みにちがいなかった
二人だけの秘密だよってからまった翌朝 夏草ぐんぐん伸びる
....
{引用=
(海、について
わたしが書こうとすると決まって
おとうさん、おかあさん、砂、星、アーシュリー、を書くことになる。)}
アーシュリー、
わたしがにぎる手綱からするりとぬけだし、
....
こころの 襞を はなれて
この場所から は ただ
あわいひかりだけが
みえています、
ひかりは きみの頬を
嬲 ....
あなたは随分遠い所に住んでいるんですね、
どこ?
あなたがどこに行きたくても、俺がそれを知ることはありません。
>いつだって世界は、ちっぽけで
人間だけが大きくて
だから世界は僕一 ....
ふかい
眠りの 底で、
燻っている 火
が あり、
仄かな
....
あれは昨日のことのよう
どのくらい
待っていたのだろう
分からなくなるくらい
来るのを
待っていた
人の流れが
何度も
通り過ぎた
流されように
君はより遠ざかる
今という現在と ....
夕暮れ
橙
さびしんぼう
だあれもいない公園で
影踏み
かけっこ
かくれんぼう
風といっしょに遊ぼうよ
いつも泣いてる
あの子とふたり
遊びにおいで
またおいで
....
自由を求める甚だしさ
孤独という精神の美しさ
鎖をばらまきながら
空中を漂う ツバメの少女
こどもは耳をすませた
世界のはしっこを目指して
願望だけで胸いっぱい
涙のような雨
羊の ....
おまえの夢の木造住宅に
俺の影は現れているだろうか
俺は夢のなかをさまよい
どこまでも飛べる幻想を享楽し
なにもかもおもうまま扱えるはずの
おそろしいほどの自由を手にしながら
おま ....
彗星は氷の塊だと教わりました
ゆんゆんと楽しげに
春風はすぎてゆきます
りんりんとさかしげに
春の日がおちてきます
春風は単に空気の移動な ....
打ち間違えたこころ読み返し間違えた指先をふかづめの刑。
閉じて仕舞ったこころの暗証番号ことばの端々に織り交ぜて。
心臓から遠く離れたこころで手をつなごう(ま ....
やわらかに色紙の花園で
子猫が蝶々を追って駆けて行く
{ルビ淡紅色=ときいろ}の薫りを放つ花たちは
自慢の花びらを踊らせることにいそがしく
まるでそれは雨のように降りしきり
この花園を埋め尽 ....
真夜中に
足の爪を切れば
へびがやってくるのよと
かあさんに教えられたから
耳をそばだてる
キッチンのじゃぐちから
漏れている
しのび寄る音
あれは雪どけでしょうか
ぱちんぱちん ....
離ればなれにされたものの
ために、重苦しい
夜
集めていく、
かつてはひとつであった
ものを、声に
ならないまま、それを
数える、いつ
いくつ、
きみはいつ
やって来るのか ....
遠く月の裏側で生まれた双子は
痩せたブナの木の下で深くお祈りをする
夜にぶら下がったみずみずしい雨は二度上がり
翌朝 ひとつの名前が届いた
世界は叙情で出来ている
....
純然たる君の回り続けるスカートに
くるまって君にしかわからない合図を送るから
光のつぶてで冠を編んで
この世界が、目まぐるしいこの世界が
つくづく目まぐるしいので振り返れば泥土でしか ....
「空になん、汝の息絶ゆるとわれはながめぬ。」?
中也よ
私たちの美智子は
ジュラルミンの盾に押しつぶされ
鋲付の長靴に踏みにじられ
樫の棍棒で殴り殺されたのだ
「汚れちまつた悲しみ ....
匂いがする
花の匂いだ
こいつの名前知ってる、と問いながら
ごくしなやかな動作で
友達のしめった手が
その花のくきを折った
(売店でなめたアイスクリーム)
錆びねじ曲がった標識に ....
{引用=※}
いままで
だれもみたことがない
世界地図をえがきながら
いつまでも未着の手紙
のことをかんがえる
そして
伝送されつづけるテレパシーのことをかんがえる
どちらも
回帰線 ....
海面がてらてらと光る
冷たい色をたたえ
満月のすがたをうつす
車輪が砂を食べていく
一回転で七百十粒
車輪が砂をしいていく
後ろでもまた一回転
千四百二十粒
誰もいない
誰も ....
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