早春
アヅサ



君とキスばかりしていたら
窓からはいるそよ風が
いちごの甘い匂いになって
君の舌も綿菓子みたいに
しゅるしゅると溶けていって
つないだ左手が
初めて温度を知った気がした
やわいきみどりの芽が
君の頬にそえた僕の右手に
そっとちいさくやどり
たよりなさげに伸びたかと思うと
君のしろいまぶたをくすぐった
そうしてくすりと笑った君の
揺れるうつくしい黒い髪
ながいまつげに陽のひかり
なんと狂わしいのだろう!
これはまぎれもない春である
僕は喉のおくから
花びらが込みあがってくる気がして
すこしだけ涙ぐんだ
すると君は僕のめを見つめ
かわいらしい吐息をこぼすのだ
これはまぎれもない春である
君のくちびるにも
さらりとした首筋にもそれが見える
だからもうすこしだけ
窓をあけたままでいよう
綿菓子をなめるように
陽のひかりにめを細めて
ほら花が咲くよ
君のめにずっと焼きつくだろう
この狂わしい春を
僕らは初めて知ったのだよ





自由詩 早春 Copyright アヅサ 2008-03-02 14:51:46
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