満月や野分のあとはちりほこり
脚二本欠けて眠れり秋の蜘蛛
物音や今年は柿のはづれ年
銀杏をつぶして行けり救急車
行秋や祭りのあとの歯の痛み
晩秋や恥を数へて夜もすがら
....
七時三十分の電車に傾く、あなたと共に行こ
う。想像する、上に空が継ぎ接ぎになって浮
かんでは消え、進行方向に語る言葉を持たな
い僕らは、聞き取れる音だけで口笛を吹く。
それだけの空間、それだけ ....
{引用=(横たわる河をいつもひとり渡ったこの身も河のひと粒として)}
電源を切ったつめたい指先が私の花をふるわせて、夜
私だけを、という歪んだ夢をみて卓上の檸檬が暴発する
恋人か友人 ....
水から生まれて
山を下りる
乾いた里の
空を横切り
そうだ 燃えてしまおう
薄い翅をももいろに染め上げて
細い緋のからだで
泣く声など無いから
意味もなく汚れた気分になった午後、
よる辺の水をすくう人、そのやわらかい中身をのぞいた人、
深く閉ざしてみるといい、確かではない文字のかたちは、
かたくておもい持ち物すべては、知 ....
切り落とされた枝が芽吹いて
いびつに折れた朝の出来事
春まだ浅い日の寝ぼけまなこは
過ぎたことを知らずにいる
幸せな枝に降る雨は優しい
見知った顔をした人達のように
安らぎで包む穏やか ....
昼にあきたら、夜においで
ずっと夕暮れの町だって
君がそうやって望むから
君がいたあらゆる場所に
夜は、降って
結局、好きな気持ちだけで
夜はやってくる。
みんなで
プラネ ....
きみが書いた、雪辱
という字、ここ
より
先へはけっして行けない、何も
することができない、何も
道を歩いていたら
言葉が落ちていたので
拾いながら歩く
拾った言葉を並べてみたら
詩のようなものができたので
額縁に入れて飾っておく
紅葉が一枚
はらりと落ちて
そこからまた言 ....
彼女は まだ眠りを欲しがらなかった
寝室を暗くして 何も無い空ばかり見ていた
私は 彼女の束ねられた黒髪を解き
指で梳かしては 滑らかな別夜に
星を探し 月を探した
私達 ....
ヒガンバナ
もう咲き終わっているのに
熾き火のようにゆらめく赤
心の中で
一面に赤い景色など
見たことがあるわけでもないのに
忘れられないほどの赤など
目の当たりには
出遭った ....
傘をさした 太陽
ボクの前を 月
真夜中の 道化師
降らすは 色のない雨
流した涙の分だけ
あなたの浮力になればいいのに
空を 静かに
泳ぐ さかなたち
息 ....
それだけは
避けようと するのだ、
未開の人が
....
賛 歌
ひかりが眩しいならば、
血をながしなさい
まっ赤なおまえの血液 ....
きみはいわばかもしかだから、1Rの僕には名付けられないんだ
知りもしなかったあなたとわたしが抱き寄せていた枕を想い 壁へ囁いてみる
目が二つしかないから見えないんだけれど
総人口分の1ぐらい ....
籠の中の小鳥が声高に鳴く
開け放たれた窓からそよぐ風に喜んで
庭先で君はひとり楽しげに
プランターのおじぎ草を突いていた
鼻腔を突くのは蒸せた花の香り
ざざざと風は水路を走る
千切られ ....
詩 篇
ああ
....
やわらかく、いま
はっきりとした
輪郭で、ミシガン
名もない傾斜に、着岸
している、濡れる
髪のひかり、ひそやかな
荊、起き上がれずに
うわごとのように
ミシガン、破れ ....
声を出して
らら
柘榴の粒の転がり落ちては
踏みつけて滲む
乾いた地面に照るくだり陽
そして腕を取ろうと伸ばす先の空白
フレア、緑のスカート
輪舞を踊る
遅れてきた風と ....
一篇
どこに
詩 は
....
金縛りにあったという夢をみた
金縛りにあったという/それは現実かもしれないが
誰が夢と今を切り離しているか、と問えば
それはおそらく(やっぱり)私の剃刀なのです
感じてる 重み
動かない ....
ビルの向こう沈む夕日を見送ってまた来る夜に足を踏み出す
夕暮れに金木犀の匂いたちやさしい{ルビ時間=とき}をしばし楽しむ
つかの間の光の中でかいま見た妖精の翅どこへ消えたの?
かくれ ....
夜のうちにアスファルトで開き切った蛾は
気が付けば西へと影をこぼし始めている
そのことに気付かない蛾は
何事も無かったかのように目を置きやって
何事も無かったことになってゆく
今 ....
野口さんが今夜も
庭石をぎりぎりと鳴らす
昨日の鰹節はお気に召さなかった?
ああ、もう香りが飛んでいるのね
でも庭を散らかした次の日は
わたしが掃除をする代わり
おまえはお隣でごは ....
裂礫を繰り返して
果て、
新しい暮れに出会う
カワラヒワの子供は
膨らみすぎたその羽根を
もどかしげに絡げ
留める
望まれる正しさを経て
邂逅する
みなそこの白骨
ねえ、遠くの君がゆるやかに流れて
形にならない欠けてしまった星たちが
泣きながら私の跡を追って
並べられた言葉に色をつけてゆくけれど
まだ太陽のはにかんだ顔を忘れずにいたい
もう ....
夕焼けが夕焼けとしてあるためにポプラを植える人達の列
初めから数えて22本目はジョシュアと名付けた貴方のポプラ
夕焼けが空を焦がしてしまうので明日の日傘を準備してあげよう
「ね ....
よく見知った鳥たちの
生まれる音が遠くから
ここまで
骨がぶつかり合っているようにも思える
低い腰つきと
正確な手さばきで
つぎつぎと収穫されていった
ばんざい 収穫だ
ばんざい 越冬 ....
二週間に一度
電車に揺られ
ヘッドフォンで耳を塞いでもうなんにも余計な物は聞かないように
通い慣れた踏切/目的地以外は何もわからない駅/ひゃくにじゅうえんで三時間珈琲
先生はどうですか ....
私がふたごだったとき
ずっと森で暮らしてた
ふたりおそろいの服を着て
毎晩同じベッドで夢を貪りあった
ふたり一緒にいること
それが当たり前の世界だった
私がふたごだったとき
世界はひ ....
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