扇情的な色彩の西日を背に塀の上を歩いて行く子供達の姿、木々に囲まれた小さな公園、冷たさを感じさせないジャングルジム、手にこびりついた錆を払い落とし、強い風に押されながら、見下ろした風景。
鎖骨の ....
あたりまえのような空白に
止まったり動いたりする記憶
五つの夜のうち
一つはあなたが入り交じる
あたりまえのような静寂に
現れたり消えたりする感覚
五つの夜のうち
一つはあな ....
僕の中の男は、二度目の眠りについたまま、まだ微睡んでいる
鈍い渦が沈殿していく
カーテンの隙間から差し込む光が
僕の足をゆっくりと
犯す
寝返った筋肉が軋んで
いつか誰かとの曖昧な ....
鳥として生まれ
鳥として逝く
その間にいくつかの
鳥ではないものがある
車の通り過ぎていく音を
人の小さな話し声を
洗濯物が風に揺れて触れ合う姿を
幸せと同等のものが包み ....
ストーブのぬくもりを
あなたのやさしさと勘違いして
思わず抱きしめた夜
あたしの胸は
焼けただれて溶けて
あなたの一部分になることを
喜びとした
時には灯油がきれた
冷た ....
震える夜の終わり。
凍えるガラスに浮かぶ水滴を、指先でなぞった跡。
(それは秘密)
静寂が止まったまま、もうすぐ夜の終わり。
灯った【願い】は、どんなにちっぽけでも、こんな夜 ....
きみとぼくは いちども
会うことは ないけれど
異端の爪を みがいて
おなじ 事象の平面を
ひっかきつづける 仲間です
蒼い影を映して続く冬の森には
透き通った何かが隠れている
凛と張りつめた空気の中で
何かが動き始めている
それは凍りついた木々の向こうに
広がるはるかな世界
白いやさしい{ルビ時間=とき} ....
夜になると
鳥は空を飛ぶことを諦め
自らの隙間を飛ぶ
高い建物の立ち並ぶ様子が
都会、と呼ばれるように
鳥は鳥の言葉で
空を埋めていってしまう
知らないことは罪ではな ....
逆立ちで見ている蝶がひらひらと空へと墜落してゆく絵画
音楽はすでに秒読み棺から指揮者は水となってこぼれる
ハイウェイを夜と名付けて人見知りばかりしている ....
波の声
かたりかけてくる
じゃまにならないように
ちかく、ちかく、とおく
足元をぬらさないくらいの
ところにぼくは
すわって
つかれてしまったよ
うずくまったよ
なにか答えてほし ....
昨日哀しみを突き放し
今日の瞼は何も隔てない
地表を渡る細波を
裸足でなぞり
葉の無い枝のように
四方へと手指を広げている
数羽の鳥が羽を休める
屋根の上には
ソーダ色の空が
....
障子をあければ
いつも おまえは座っている。
白い猫。
雪の日は
いなくなったかと思った。
すると金いろの目がひかった。
時々なでる。
おまえは優しい声で鳴く。
旅の日は、 ....
野良猫は仕事を求めている
ダンボールで背広を守るホームレスのように
野良猫は仕事を怖れている
歯医者で口を開けない子供のように
野良猫は仕事を決めかねている
半年前の求人誌を読み返す ....
しずかな曲線を描いて
落ちていく
最後の一日が
地平線のあたりで
手を握り合う
もう二度と
離れてしまわないように
やがて朝がくる
信じるよりもあきらかに
疑うよりもたやす ....
北風にはこばれてくる
除夜の鐘の音
をはじめて聞いたおどろき
きみをせかせて
午前零時十分
外へ出たのだ
深夜の新年を祝うため
遠い振動
からだをつつむ時間
おわりとはじまりの相反す ....
むせかえる緑
森の深みで
一本の幹を背にすらりと立つ
わたしの頭の上にはもぎたての林檎
正面、幾重もの木々ごしに
とらえようとする鋭い矢尻が
抗う弓をキリキリと押しひらいてゆく、あな ....
{引用=美しい涙に沿って目をさがす
by oldsoup『内部ナイーブ』}
方舟は沈んだきみのゆびも絵も僕のなみだもノアの見る夢
....
さぁ、主観デラシネにして海の絵にキリンの首をくわえてみせて
花の名をたった無数の花の名を思い出せづに死ぬものがたり
目を閉じて夢のほとりに佇んだきみの両手に紫を置く
....
限りなく遠い
果てしなく遠い
どこまでも遠い
この線上には何がある?
この線は何処で止まる?
この線上でだれと交わる?
限りなく遠い
果てしなく遠い
何処までも遠い
....
あいまいに陽に透けた空は
ぼんやりとして
遠く広く浅く
波に洗われる浜辺は
なんて心細いんだろう
風だけが耳にうるさく
沖をすべるヨットの帆を
暴力的に乱打して
僕のコートの裾 ....
(水槽から飛び出した金魚の体温)
煤けたような暗がりで
瞳が開いていく
洞窟の中をずっと迷っているような
コオロギの摺り足
夜には手が届かない
指先が触れる闇の境界線、それは
ひんや ....
地面一杯に落ちた椿の中で
ひとり囁く者、有り。
群生林である椿は木の上にはもとより
私の足下まで赤で染め抜いていく。
生温い血溜まりに座り込んで
私は貴方の声を聴く。
「はやくはや ....
雲は
空のことが好きなのだ
ある晴れた日
どこからともなく
雲はやってきて
やがて空のすべてを覆いつくし
ひとりじめにした
そして泣いた
泣いて泣いて
涙がかれたら
雲はあ ....
白い猫、が、
ほそらみ
墓場へ
対話、に、
沿っていく
諧調
わたしたちは実感するんだ
ゆるやかな時間軸
それは時に
i――の言語
《人の世に別れを告げたわたしが
人間たちの間に ....
テントの隅で転がって
仰向けの空を見た
風も静寂も地熱も
青く佇んで消えていく
ぬるい酒にまた溶けていく
孤独はそういうものだった
缶詰肴に飽きてきて
川で糸垂れる人間を ....
手にとって
読み返す葉書
紙の山に埋もれていても
あなたの文字は
見つけられる
その文字が
私を君と呼ぶ
綴られた言葉を
私はきっと
諳んじてしまう
遠く失った恋が ....
この快晴烈風に
栗毛の駿馬の体が発している
いななきと情気した 赤い汗
馬が飼われている
隣の部屋では
いつも朝日が細く差し込んでいる
扉を開ければ
広い原野は俺のものだから ....
幸せが側に来ると
男は
おびえて
目を背けた
いままで
幸せなどというものを
見たことのなかった
男の目に
それは
あまりに
まぶしすぎた
男が
幸せから
目をそらし ....
今宵瞼の裏で逢ひませう
烏が帰る誰彼時
水晶体の前で待ち合わせ
不恰好でほんのり苦いあの
橙の灯りが消えたら
輪切りの檸檬を浮かべた
レモネードを飲みませう
....
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