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僕の知らない過去と
わたしたちの未来に
長く伸びる辻占の影
いつもの帰り道には
いつも違う待ち人が
真っ赤な花を散らす
嘘つきなあなたの頬
なのに ぎこちない
まなざしは いつも
ほ ....
あれは昨日のことのよう
どのくらい
待っていたのだろう
分からなくなるくらい
来るのを
待っていた
人の流れが
何度も
通り過ぎた
流されように
君はより遠ざかる
今という現在と ....
あの時
何を見ていたのか
白い紙の皮膚の上を
一度だけすれ違う
その時の
微風 に
時間が揺らぐのを
万年筆の
筆跡を見ていると
それは
痕跡のように
美しい
ブルーの濃淡 ....
雨に濡れた
青桐の
新芽のみどり
雨粒一つ一つの
音の輪郭
季節外れの
冷たい風と雨粒を掌に
雨音は
変奏し続けるだろう
古い端切れの
ほつれた
一本一本の糸の
誰かの記憶のよ ....
見えない風に震えていた
あの時
柔らかな時間に浸蝕された白い花弁のささくれ
鬱金香
が 首をかしげ始める
思い出すたびに
遠くなる指先の感触
言葉の誘惑に負けて
どんなに美しい言葉をか ....
夜伽無精卵温めをり立ちいづる半音階の夢
橋懸りに若き裸身ありて放火の予感にさいなまれ
アヰイロの階調遥けく うすくうすく遠ざかるいくつもの記憶(トキ)
剥落ある写真の眼差し夕暮れて今日と明日(アス)の間(アハヒ)を行き来せる
春夜まとふ身いつしか見えざる東北(トウボク)の桜花幻視する
人気(ヒトケ)なき通りをマネキン誘拐され行く春の日うらら
早婚の少女の睡眠浅し桃色の指先のプレリュード
中耳に日章旗解けをり回廊に夥しき英霊
王国蜃気楼の彼方呼べども昔々在りしとて
ケイタイより幻聴の狂想曲(カプリチオ)その日の午後少年失踪す
杳として知れざれば黄昏に少年マッチすりをり
いつのことか
忘れていた
色彩の花は
不分明な闇に
溶け始め
たおやかな
曲線の匂い
に埋没して
ユリ科植物
の夜は
深く沈む
花粉のついた
指
の先に
花は
匂いを残し ....