蹴破る足はないが
閉された扉の前で待つ気もない
おれ自身が監獄
だから言葉は旅人だ
去り行く背中に
翼など無く
タダノモジノラレツ蟲は
預言の首飾りの哀歌 ....
>吹いて
<吸って
<吸って
>吹いて
あたたかい息が
リードをふるわせると
やわらかい音符があらわれる
>吹いて
>吹いて
<吸って
>吹いて
さみしい唇を
....
哲学者や芸術家の方面へと向かう人はどちらかというと暗い人、無口な人、ネガティブな感じの人が多いのではないかと思う。これは一般的にそう思われている事であり、僕もこの事については一般的にそう ....
あなたまみれの体を
しみわたる夜に横たえる
行き場のないつぼみが
ひと粒ずつ
ひりひりと開いてしまいます
空は薄暗いのに
色とりどりの看板や
揺れる木々の葉を
濡れた舗道は律儀に映し出す
冷たく滲んだ風景画を
靴やタイヤが
踏んでいく
ブラインドの隙間から
見ている私の
雨の記憶 ....
現代人が陥っている状況を『可能性の地獄』という概念で説明してみたい。これは僕が作った概念で、誰かのものを盗んだ覚えはないのだが、似たような事を言っている人はおそらく他にもいるだろう。まあ、と ....
今日、月がもも色で
口をつぐむように鳴らす笛が
灯台の{ルビ灯=ラフ}をかすめて
指どおりのよい
髪にまきつく
入りくちは浅くなめらかに
奥はとおくするどい爪のかたち…
荷を ....
もうこのにこやかな仮面は
皮膚と同化しているのに
剥ごうとするひとがいる
剥いだらどうなるか
わかっているだろうに
それでもそれが私の素顔だと言って
変わらずキスをしてくれるだろうか
....
生きている老人と
死んでいる老人のあいだに
いくつかの指がならんでいる
老若男女あらゆる者から{ルビ捥=も}がれてきた
それらはまるで枕木のようなのだ ....
かつて語る事ができた人間は唯一人だった。それは『私』という名で呼ばれた。そしてこの『私』が消え去った後、『君』や『あなた』が現れた。こうして人はいなくなった。
今、この世界で新たな語り部が現れる ....
彼は「ヤマダヒフミ」という名前でネット上に投稿していた。投稿する内容は、詩、小説、批評などであり、彼は自分で文学に対するある程度の造形があるのだと考えてた。彼は日常生活では、桐野龍 ....
今日(2007/1/7.Sun)私が私の友人を見つけたので、私はとても幸せです。
彼らは、私の頭の中にいます。
私は、あなたもそうであるように醜い(でも構わない)原因です。
我々は、我々の ....
「白蓮」
文化祭で地獄の迷路みたいなのつくってさ
(つまりお化け屋敷ね)お化けの格好してク
ラスメートのF君とセックスした帰りにコ
ンビニの前でペットボトルの水をのんで別
れた。クラスメ ....
この本を読み終わった人間は必ずや、辛い苦い思いを味わう事だろう。作者のミシェルウェルベックは、まるで、現実の僕達の醜い部分を僕達に無理やり見せようとしているかのようだ。僕達はこの書物を読んだら、沈黙 ....
テーブルの隅に重ねた手紙も
椅子の背に掛けたタオルも
乱されてはいなかったけれど
さっきまでここに猿がいたことはわかった
茶と金の間のような色合いの体毛は
一 ....
ともあれ私のなかに
これだけの鼠がいるのだから
とうぜんあなたのなかにも棲んでいるはず
血液の湿り気を好み{ルビ腑=はらわた}の肉を噛みつつ
身体の{ルビ常夜=とこ ....
磨かれた床に映りこむ
月が清潔すぎるからと言って
あなたはスリッパを履いたのだ
けれどもいつもと変わらぬそぶりで
私を抱きしめてくれますか
どうか抱きしめてい ....
突然窓から入って来たかと思うと
開きっぱなしの聖書を勝手にパラパラめくり
挨拶もなしに出て行った
――相変わらずだな
きっと満開のニセアカシアの間を抜けて来たのだろう
すると今頃は下の公園辺 ....
雨の日だけ訪れるひとがいる
水を滴らせながら、入れてもらっていいかな、と
私は玄関を大きく開け
タオルとホットミルクを渡す
他愛無い話をぽつりぽつり
このひとは愚痴や怒りを表さない
た ....
葉書に書かれるまでは
それらをたしかに覚えていた
あなたを抱きしめた秋の夜更け
蹴って散らした枯れ葉の響き
葉書に書かれるまでは
私たちは本当に私 ....
剥かれた豆の
殆どは椀に収まったが
僅かながら溢れてしまう
階下から聞こえてくる物音は
すべて嘘だと私にはわかったが
目の前で語られていたならどうだろう
....
一行の文を
今しがた、私は読み終えた
それでもテーブルについているのは
私のほかに誰もいない、そして
私はこのまま待つのだろう
青空のせまいところに
詰 ....
大事だから
というと
壊そうね
とかえってきた
ちいさい呪文
足首のシール
大事だから
壊そうね
というと
それもそうね
とかえってきた
そもそものはじめから
すべて諦めた ....
<矛盾>
あなたを殺してしまいたい
でも
幸せにもなってほしいよ。
<矛盾なき矛盾>
本当に大切なものが
なすすべもなく消え去った時
もう残りの人生が余生でしかないと ....
あなたは夏のひとだった。雨のない笑顔をしてわたしを不安にさせる。長い手足をなめらかに泳がせて、いつもすがすがしく気持ちをかきまわしてくれたのだ。いつぞやのモーテルは名前だけ変えて、その窓の多くに過 ....
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一般的には、小説の方が詩よりは読むのは簡単である。また、批評よりも小説を読む方が簡単だ。そして、出版量で考えて ....
ことがら は 昨日の記憶
そばがら は 今夜の枕のなかで
ひとがら を 朝のヒカリで描きこむ
うまれたての雛のあたまに
残された
一片の から
どこからと問うこともせず
....
子供たちはまたぼくの話を聞こうと目を輝かせている
じゃみんな今日は魔法の馬車の話をしょうか
わーい魔法の馬車!魔法の馬車だってさ
その馬車は馬もいないのに乗った人をどこへでも連れてってく ....
初夏の夕暮れ
見舞いに来た僕は君と歩く
五階の病室から一階の売店まで
五階のエレベーターホールまで
病室から二〇メートルほど
エレベーターに二人で乗る
乗るときも手は離さない
三五年 ....
寝苦しい
東京の夜
ビルの明かりと
かなしい下水の川の唸り
すべての睡眠を放棄して
月を見上げにベランダに出たけれど
今はたてものの壁に隠れ
なにも見えない時間だった
くち ....
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