猿のいた部屋
草野春心
テーブルの隅に重ねた手紙も
椅子の背に掛けたタオルも
乱されてはいなかったけれど
さっきまでここに猿がいたことはわかった
茶と金の間のような色合いの体毛は
一本たりとて落ちていなかったけれど
あなたを愛していたと私が口にしたなら
笑うだろうか、あなたは、微かに歪な歯をみせて
それともただ少しだけ歩みを止めるのだろうか
既に部屋の出口へと向かっているその歩みを
自由詩
猿のいた部屋
Copyright
草野春心
2014-06-09 00:23:55
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