夕暮れの病院
……とある蛙

初夏の夕暮れ

見舞いに来た僕は君と歩く
五階の病室から一階の売店まで
五階のエレベーターホールまで
病室から二〇メートルほど
エレベーターに二人で乗る
乗るときも手は離さない
三五年ぶりにつないだ手は離さない
一階についてまた二人で歩き出す。
ゆっくりとゆっくりと
三五年前よりゆっくりと
二〇メートルほど歩いた先の売店は
もう閉店していた
時計は午後六時一五分
午後六時には閉店するのだ
君は少しがっかりしていた
「もうかえるの?」
「いやまだ帰らないよ」
また、二人でエレベーターホールに向かって歩いてゆく
手をつないだまま
三五年前よりもゆっくりとゆっくりと


自由詩 夕暮れの病院 Copyright ……とある蛙 2014-06-04 17:03:32
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