ミッシングリンク
アンドリュウ

子供たちはまたぼくの話を聞こうと目を輝かせている

じゃみんな今日は魔法の馬車の話をしょうか
わーい魔法の馬車!魔法の馬車だってさ

その馬車は馬もいないのに乗った人をどこへでも連れてってくれるんだよ
へーなんで なんで馬もいないのに…そうだトナカイだ
ちがうよ その馬車は自分で走るんだよ
きゃ〜生きてるの?その馬車
生きてはいないさ ただそれに乗った人が動かす機械なんだよ
キカイ キカイ キカイ
そうさキカイだよ この前話したテレビもキカイだったろ
これもキカイなんだよ この魔法の馬車には何でも歌を歌ってくれる
オーデォや場所を教えてくれるナビ それにテレビもついてるんだよ
すご〜い やる〜
この馬車は透明な壁で出来ていて
雨や嵐の日でも濡れないで外が見えるんだよ
それにみんなの嫌いなカミナリもこの箱は寄せ付けないんだよ
それじゃサーベルタイガーも
そうだね頑丈に作るとサーベルタイガーやマンモスも防げるよ
スゲー この箱 世界に一つしかないよね?
いいや その辺にゴロゴロあるし 
誰でもお金を払えば自分のものにできるんだよ
おかね おかね 又出たねおかね おかね
おかねについてはこんどまたゆっくり話すよ
その魔法の箱はガソリンという食べ物を食べるんだ
そして人がのらないときはじっとして待ってるんだよ
ねぇどうやって動かすの 
おじさんも 持ってたの魔法の箱
うんもちろん持ってたさ 動かすのは学校にいって習うんだよ

子どもたちは一斉に立ち上がり 
がっこう!がっこう!と叫びながら踊り始めた 
あまりに嬉しそうだったから ぼくも一緒に踊った
この前 学校について話した時に 
ここも小さな学校だよ 
と話したのを覚えていてよほどうれしかったのだろう 
踊りながら ぼくの事をセンセと指さしたり 
お互いをセイトと指さしあったりした

子どもたちは本当に人なっこく 陽気で知能も高かった 
かといって好戦的ではなく
その頑丈な外見に似合わず詩的でシャイなところもあった

ねぇねぇ あとどのくらい 
あとどのくらいで おじさんの住んでた素敵な魔法の時代になるの 
おしえて〜 わあ〜い おしえて〜
子どもたちは一斉にぼくに抱きついてきた 
硬い体毛と獣の臭いがボクをくらくらさせた 
ほらほらみんな 今日はもうおしまい さあおうちに帰んなさい
気がつくと 傍らにクルモンが子どもたちを解散させた

さっきの話だけど 本当はどうなの?
子どもたちが帰った後 クルモンは穏やかにそう切り出した
年の頃なら20歳前後だろうか 
見事に膨らんだ乳房は短い体毛に覆われ乳首だけが赤く色ずいている 
クルモンはタイムマシンの故障でぼくがここにやってきた日から 
族長に命じられぼくの身の回りの世話をしてる
ボクに言葉を教えたのも彼女だ
教えて!私達とあなたはあまりにも違いすぎてる
………
ぼくはすでにこの部族のみんなを愛し始めていた 
元の世界にいたときには感じたことのない感情だった 
ここでは何かすべてを本当のものが
やさしくシンプルにしっかりと網羅してた 
かって住んでたまやかしの複雑怪奇なエゴの世界とは大違いだった
答えたくないのね 
そういってクルモンは低いが頑丈な体を悲しそうに縮めた
そんなことないよ 
それだけいってぼくは彼女の肩を抱いた
発情して強くなった体臭が鼻をさす 
最初は嫌だったこの匂いも今ではすっかり慣れて
それどころか好きになり始めてる
(君たちネアンデルタール人は進化の過程から忽然と姿を消すんだよ)
そんなことをこの平和的な知能の高い人々に告げることはもう出来ない

本来ならば彼らこそがこの地球の正当な後継者だったに違いない
ここで暮らし続けるうちにそんな確かな思いがぼくの心に芽生えていた

もうあの世界へはぼくは帰れない 帰りたくない
そうだ!ここでクルモンと暮らそう ぼくの知ってる事を皆に伝え
そしてたくさん子供を作ろう

地平線の向こうにそびえるバキナナ山が
夕陽を浴びて赤いスペースシャトルのように見えた 

空気はどこまでも澄んでいて そろそろ星たちが瞬き始めていた


散文(批評随筆小説等)  ミッシングリンク Copyright アンドリュウ 2014-06-04 21:27:52
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