いくつかの散文
左屋百色

「白蓮」

文化祭で地獄の迷路みたいなのつくってさ
(つまりお化け屋敷ね)お化けの格好してク
ラスメートのF君とセックスした帰りにコ
ンビニの前でペットボトルの水をのんで別
れた。クラスメートの男子はみんな毎日が
ギャグばかりで存在自体が漫画だけど私の
好きな漫画を知っている男子はひとりもい
なかった。花屋でバイトしてたB君がいつ
もひとりで本を読んでいて表紙が白蓮でと
てもきれいで後ろからこっそり覗いたらそ
れはエロ本だった。あの時のショックは何
なんだろう。お化け屋敷のお化けなんかよ
り度肝抜かれた。詩集かなとか思っていた
し。ところで私は明日も文化祭の準備の後
でF君とセックスするんだろうか。お化け
でもナースでも婦人警官でもチャイナドレ
スでも同じ。同じセックスだ。窓に映る私
は普通なのかな。普通じゃないのかな。


「喜劇」

私の未来とは卒業後の事ではなくて来週の
文化祭の本番でB君に告白する事です。み
んなスマホで動画を見てるのにひとりだけ
エロ本を見ているなんてセンスがいいなぁ
と思ったのです。しかもエロ本エロ本って
言ってますがアートですから。アートな本
ですから。芸術ですから。芸術。もしかし
たらB君は私の好きな漫画とか好きだった
りしてさ。でさ。つき合う事になってデー
トの時に花とかプレゼントされてさ。それ
でその花がデートの時に邪魔でさ。もうね
最高じゃん。花が邪魔って。喜劇だよね。
夜空を見上げて星が集まって爆発して。そ
こから変な妄想して。私の隣でB君が芸術
的な何かを言ってくれるんじゃないかな。
B君とセックスする時には普通がいいな。
普通に家で。普通に裸で。お化けの格好な
んてしない。嫌だね。普通がいい。私たち
生きているんだから。普通に。普通でいい
じゃん。普通で。


「無題」

今ここにある。いくつかの散文を整理して
白蓮を燃やして比喩を詰め込んで。右に左
に暗喩を散りばめ最終的に自分で見失って
ゆくのを高層ビルの真ん中あたりに激突し
た光のせいにして結局は何を表現している
のか全く理解できない詩を脱ぎ捨てた洋服
といっしょに洗濯機の中に入れた。ゴォウ
ゴォウと回りはじめる。窓の向こうで咲い
ている花の名前を私は知らない。この散文
には題名がない。B君が詩に興味あるなら
題名をつけてほしいな。芸術的な題名を。
これに関しては普通なのは嫌だな。普通な
のは。うん。普通なのは。



自由詩 いくつかの散文 Copyright 左屋百色 2014-06-10 19:24:43
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