夜、入り江にて
平井容子


今日、月がもも色で
口をつぐむように鳴らす笛が
灯台のラフをかすめて
指どおりのよい
髪にまきつく

入りくちは浅くなめらかに
奥はとおくするどい爪のかたち…

荷をほどくように
飽きるほど泣いた光たちが
いつまでも水平線にたむろしている
やさしいものごとを運びながら

のくのくと規則ただしく波がうち
だれのためにも生きていけない夢が代謝する



自由詩 夜、入り江にて Copyright 平井容子 2014-06-12 23:01:49
notebook Home 戻る