TOKYO
砦希

寝苦しい
東京の夜
ビルの明かりと
かなしい下水の川の唸り

すべての睡眠を放棄して
月を見上げにベランダに出たけれど
今はたてものの壁に隠れ
なにも見えない時間だった


くちびるが
荒れている

何度もくりかえし
なにかを叫ぶのは
もうやめにした
届かない切なさに
こころを痛めるのも

それがこの街での
正しいやり方だと
みんなが身をもって
教えてくれた

くちびるが
荒れている

むりやり誰かを信じなくても
むりやり微笑みかけなくても
なにかを手に入れるために
からだの一部を失わなくても
ここでは生きていける


眠りから見放された
東京の夜
曇りガラスに映ったのは
ビルの明かりと
月のひかり


自由詩 TOKYO Copyright 砦希 2014-06-03 22:21:09
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