瑞々しい嘘
小川 葉

 
消しゴムで消してしまうと
虹が出来てしまうから
それ以上描けなかった

あなたの顔は
スケッチブックの上で
雨後のように濡れていて
小さな水溜りにある黒子は
ゆらゆら揺れながら
嘘と言う文字に似ていた

似顔絵はあなたに似てなかった
あの日のあなたではなかった
わたしの知らないあなた
わたしの知りたくないあなたが
傘をさして雨上がりの虹に向かって
歩いていった

一度だけ振り向いた気がした
傘の隙間からにこりと笑う
まるで嘘みたいな顔で
黒子はきれいに消えていた
それが真実だった
 


自由詩 瑞々しい嘘 Copyright 小川 葉 2009-03-12 03:13:23
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