クラゲ
フミタケ

石を結んで鳴らす バラバラと鳴らす ひろいひろい夜の隙間を覆い尽くすほど大量にならす
でもバラバラな音が収束していってやがてぴったりと音を合わせるようになると静寂と対等にそれは轟いた

信号が変わり人々は点滅しながら立ち止まったり歩き出したり 座ったり寝転がったりして 時間は旅客機上空の凪で
泣いたり笑ったり 悲しんだり喜んだり コンピューターも53インチ液晶テレビもずぅっとつけっぱなしで眠り続けた後の交差点で
信号を見上げて 僕たちは立ち止まったり歩き出したりを繰り返す 制御されなきゃ殺しますよと

窓の外で朝が昇り昼がまどろんで夕方が赤く産声を上げて 秋をすぎ冬をごまかしてまた春になって
色鮮やかな毒クラゲを育てています 意味のない事を 意味のない動作を拾い集めて水槽の中で育てています
まだ柔らかいさなぎ 夢見るさなぎ 誰かに駄目にされないようにって そしていずれは庭から外へ逃がすために

春一番の風がビュウビュウ僕らの窓をたたく たたく 衝動的な約束はイトナミに追い越され君と桜をみれるだろうか
今年もまた一人で目黒川を歩いてみるんだろうか ミクシー用に画像を仕込んで
4世代あとの子孫の脳が変態していくようなコミュニケーション たった今かわいい人たちはもう怯えないでよくて

笑顔を引き出す言葉を投げたりあの子があふれるように話すのを聞く事に夢中になって 2度目に指が触れたのは偶然なの無意識だったの
夜が引き延ばしたでっかい世界を 小さなサーチライトひとつでたどり着けるよ不思議だねまるで手探りみたいにさ
君に触れて君のバスタブにつかりたいだけに 潮風に溶けあうその髪を撫でるためだけに 夜を山を谷を越えていく 無数の窓を通り過ぎていく

悲しみもなく虚しさもなくエディット!エディット!エディット!エディットしていく都市が、現実感のないトラックドライバーのアクセルの下に
痛みもなく味覚もなくどこにもスキがないあの頃の君とね 小さな自慢を置いて岸は遠ざかりポリエステルとアルミニウム漂う海のゴミのひとつになって
愛が消えてしまったのはきっとあまりにも愛に淫してしまったからで 眩しすぎるその場所で自分のいる場所もわからないから、僕を捜す君を着信できない

安心という飛び石の下水位は上昇し首まで達しようとする 与えられた演技に鉄分を炎を注ぎ 車を走らせてあの田舎まで
それでもさ、中にぶら下がっている風船の糸をふとした拍子に僕たちは引いてしまう その時涙がこぼれおちるんだって
            


自由詩 クラゲ Copyright フミタケ 2009-03-14 06:28:02
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