ミランダ やさしい亜麻色の髪
青い瞳で微笑みかける
ボッティチェリの絵から抜け出た天使
裸足で草原を歩くのが似合う
ミランダ 白鳥の細い首筋
もうすぐ居なくなると告げた
はかなげな ....
コーヒーカップの中に
スカートをはいたライオンがこっちを睨んでいた
動物図鑑を投げ入れたら
羊の写真でセーターを編み始めているので
砂糖を入れてスプーンでかき回した
匂いを嗅ぐと春の草が漂っ ....
正月に家族で詣でた八幡神社で
ぼくは
「女にモテますように」
と神様にお願いした
パチンと2つ手を合わせて
はっきりと言葉を唱えず
頭のなかに、ゆっくりと
顔の ....
ぼくはきみと
ささやかな丸石をつみあげたい
忙しさに追われながら
過ぎ去ってゆく日々のなかで
( それは夜毎の厨房で
( まな板の上でたまねぎの音を刻む
( 妻の後 ....
いつからか
巨大な目/まばたきをしない目が
わたしをじっと見る
青い/緑の目をしたきれいな雌鹿
自分を巡って戦う牡鹿を
じっと見る
興味深そうに/興味がなさそうに
丘の上にある一 ....
踏み切りで電車がすれ違った
「電車と電車がおおまちがいだよ」
坊やは言った
大間違いするわけにもいかないので
電車は最後尾が離れる瞬間
少し間違えてみせた
「あら、間違えちゃったみ ....
いちごのような空です
つぶつぶしています
あのつぶつぶは、何でできているんだろうね
つぶつぶは、やがてゆっくり落ちてきて
見えないように、頭の上に降り立ちました
「静かに。今種を植えるよ ....
目覚めたら
世界は セピア色だった
そこには セピア色のシーツと
セピア色の 僕のからだと
セピア色のテーブルと椅子
セピア色のコーヒー
セピア色の空には ....
夜は海
街も時間も
何もかも飲み込んでしまう
私の体も海の底
静かに息をしている
夜空の星たちは海に沈んだ金貨
海賊たちに盗まれぬよう
あんなに高いところにある
ああ もうすぐ夜明けだ ....
雪に覆われた心の中のバス停の小屋の中
僕はバスを待っている
しかしバスは来ることはない
雪は静かに降り続いている
思い出の人達は記憶として僕の脳裏に現れる
僕はその記憶をなくすつ ....
記憶を遡り 苦痛と恐怖を味わう
もう二度と戻らない時間 しかし愛おしい
僕は気分が少し楽になる 呪縛が通り過ぎていったおかげだ
夜空の波を漂う 僕はもう少しこうしていたいだけ
腰に雲 ....
たとえば
それは、
晴れわたる夢に
やさしい雨がのこした跡
テーブルのオレンジは
断続的におとずれる早朝、
半透明のまま
ころがっていて
方向性をなくした部屋に
ふりそそ ....
お好み焼きという言葉を聞くたびに
私は自由について考える
君はお好み焼きの名の由来を知っているか?
自分の好みに合わせて具材を入れるからお好み焼きなのだ
ところがどうだい?
たいていのお好み ....
ふわっ、ふわふわっ。
綿毛になって一週間になる。
何を間違って
自分はタンポポの綿毛になんてなってるんだろう。
ついさっき母体であるタンポポを飛び出したところだ。
せっかく仲良くなった他の綿 ....
夜に出でし月は
右より欠けて浮きつつも
心鎮むる情けありて
ただひたすらに眺むらむ
何をか語らむその月は
暗き空に染むるる色は
今に咲く黄梅と思ほえ
心なつかし
夜に出でし月は ....
あんたの1メートル上空の
地上権と
あたしの1メートル上空の
地上権を
交換するの
そレで
あたしの匂い
あたしの甘やかな匂いを
あんたにいっぱい嗅がせて
あんたの一切の先取特権 ....
優しさにぶらさがる
重なる星の巡り合わせに
ふたりだけの夜
ドブ板通りの古びたカウンターで
わたしをみつめる
瞳と
Never mind
歯並びの良い口元が闇に浮ぶ
迷路のような船底で ....
暗い道でも みうしなわずに
ついて行けるように と
契りを むすんだ
おとこの 背中に
灯火と星を 刺繍した
お三時に彼はハンドルを回し
胸の部分の扉をパカリとひらいて
よい風を招くために
陶器のオルゴールを鳴らした
それは凛とした音色なのだけれど
彼はハンドルを回すことに執心していたの ....
天の岩戸の完全黒体
まっくろくろの黒助と
揶揄された記憶も忘れ
世間は今も
岩戸景気に浮かれてる
黒体炉の中で目を覚ます
スペクトルの子供たち
明るい光に迎えられ
わいわい ....
テキストファイルには何を書いてもいい
だがワードパットドキュメントには真実以外書いてはならない
ゲーテ
IDカードを首からぶら ....
言葉がやたらと出せなくなったので
修理工場へ行ってみた
そこではたくさんの農夫が
カレンダーに数字をでたらめに書いていた
故障の診断はどこですかと尋ねると
奥の池の中に入れと言われた
よく ....
西日のうちよせる窓辺に
幼い貝がひとつ
もぞもぞと動く白い靴下を
つん、とつけば、また{ルビ蹲=うずくま}る
どうしてこの子は
こんなに静かな遊びを
思いついてしまったのだろう
座り ....
影が長くなった
昨日よりも 今日
罪を引きずっている午後
奇妙に明るい空
雲が
凄い速さで流れていく
地上には少しの
風しかないのに
手の届かないところで
ぐんぐん形を変えて
....
水面の戯れ水紋の喘ぎ。
乱れる波、
果てるを知らず。
満たされし満たされぬ果て、
月に焦がれて肥ゆ波高く。
悲しの海。
別れ ....
郵便受けに
さくらの花びら
淡い水色の
小さな便箋
ゆううつの波に飲まれそうな朝のこと
春はまだ見えない
思えば今年の冬はいつもより少し長い
便箋の封を切ると
中からか ....
名前を呼ぼうとして
ことばに拒絶される
あなたのくちびるなのです
だきしめたいのは
いえ、むしろ
ことばでは居られないから
そばにいて感じたい
あなたのおこす幽かな風まで
....
腕が伸びた先にある
暗い部屋の乾いた光
アルコールを飲みながら君は言う
みんな同じ 僕は君 逆もまた
泣きたい
君はというとアルコールを飲み干したのか
顔が赤い
....
しらしらと 明けの天の原 家々は行くように浮かんでいた
まぼろしの城跡 君を攫って
行きたかった それだけのことでした
うにゃーとか
ごろにゃんとかで生きてみたい
そう云うあなたはナマケモノ
ハイエナが
悪者だなんて酷すぎます
一生懸命生きてるんです
ラブレター食べさせられても困りま ....
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