真夜中にサイレンが鳴つて
窓から顔を出すと
猫が凍つた路上を
駆けて行つたよ
弾丸のやうに丸まつて
火事場へと
一直線に
猫は寝てゐる人を
....
どんなに難しい本を読んでいたとしても
喜怒哀楽
たった4文字に人のこころは捕われて
(それってほんとだよ
いつになったら大人になれるのかな
つまらないことに腹を立て
投げつけたことばの痛み ....
君が糸電話を作っていた
夕暮れまで
まだ時間があるというのに
いったい誰にかけたかったのか
小学校の図工の時間のように
器用な指先で紙コップの底を切り取り
セロハンを貼っている
....
雨が来る
雨は去る
屋根は
何も変わらない
陰の色の石があり
誰も通らぬ道があり
雲がひとつもない日にも
常に陰のままでいる
花は風に放られて
雨をつかま ....
こゆく さなぎり
はたて まどのみ
ついた ひごそで
まりせ ふむりん
ささぐ こみちね
わたす はねつち
ほせよ ほうれぬ
かがり くみこい
グーチョキパーの
あめんぼう
虹の彼方に飛んでゆく
とんでったのは
僕の意識と
見た目の悪さ
あめんぼう
あめんぼう
人を見つけに
雨上がり
グーチョキパーと
滑ってる
....
あいにくの空からきたよ
あいにくどこも擦りむいてない
いつもきれいにしてるから
ペロペロキャンディーもちゃんと手の中に
この空もまだうずまきの中に
でもこの道はもう夜だから
目が回 ....
他のだれかに抱かれ
絹の光沢につつまれて蠢く
薔薇色に火照る肌に
美しく焼かれる、愛の痛み
「僕が別の彼女とキスしても怒らないだろ?
可哀想なあいつを慰めておやりよ、 ....
私の中にいる私は
だれ?
本に書かれてあることを
そのままに信じてしまう私が
私の中にいる
誰かがこうだよと言ったことを
そうだねと言ってしまう私が
私の中にいる
君はどう ....
{ルビ滑稽=こっけい}な自分の姿を{ルビ罵=ののし}られ
哀しい気持で歩いてた
帰って来た家の門の
足元に置かれた
ハロウィンの{ルビ南瓜=かぼちゃ}
皮をくりぬいて
....
牛乳おじさんは
ラジオ体操のおわった朝
ときおり
虫の幼虫や
脱皮したばかりの
透明な羽のせみ を
ぼくたちに 見せてくれた
ある朝
牛乳おじさんは
学校なんて つま ....
虹色をきみにこぼした
そらを云うほどは見上げてなかったから
ことばが透明な箱の中とうとつにうまれた
星色の媒介をみおくる
海をきくほどは閉ざしていなかったから
瓶をゆらした琥珀のひか ....
風が吹いている
この胸をくすぐるように
どこか時の蒼い彼方から
やわらかなレースのカーテンを抜けて
あなたは夜へと駆け出してゆく
裸のつま先で踊るピエレット
夜露に濡れた草を踏みしめて
....
丸い時計の秒針が
一つ一つ時を刻んでゆく
どの一秒も同じ時間
その一秒の中に
綺麗に染まった紅葉の林を
歩いている自分がいる
その一秒の中に
ありがとう
と言われる自分がいる
....
雨が降つてゐる
黄色地にピンクの花を咲かせた
美しい傘の乙女が行く
雨は
乙女の傘に弾けるときだけ
ぱつと明るく輝く
車道を車がきて
泥水を撥ね上げる
乙女は傘を盾 ....
遠く、波の音が消えたあとの闇にまぎれて
ただ疲れて坐る君はまだ 何処か子供で
覚えたての歌を ぎこちなく口ずさんでは、
助手席で夢見るように話す「ポリアモリーの街
つまりファッションや音楽、イ ....
ふと目にとまる
コンビニ
「おでん始めました」
「肉まん始めました」
夕焼け空に浮かぶ
ボール
カキーン
「レフトいったぞー」
化粧を始めた
山々
そろそろ
マフラー必 ....
亀、知りませんか?
背中に「さ、の」って書いてあります
それは、自分自身です
こんくらいのやつです
かたちは日々変わるんです
生きものですから
お腹を押すと泣きます
水曜日の午後だけ ....
まいあさ
いちばんさいしょにたしかめる
まどべにころがった
こいしたち
ざらざらで
しみがあって
いびつなこいしたち
だいじょうぶ
なみうちぎわ
あのとき
あんなにきれいだった ....
紅葉が近づく{ルビ樗谿=おうちだに}は
とうめいなたくさんの蛍が
言葉だけつまった
名前だけの思い出を
夕暮れにかえそうとする
いろだけになってしまう
ぬくもりを失うと
とうめいにな ....
あなたがくれた諭吉3枚で
素敵な夢をみましょう
あたしが持っている鋼の心を鏡がわりにしていいわ
あなたがくれたこの紙きれ3枚で
極上の夢をみましょう
何も持ち合わせていないあたしにだって ....
夜を知らぬ服を着て
夜を歩けば
夜は増す
夜は触れる
夜は浮く
夜はうたう
夜は{ルビ清=す}む
なんで
けいたいなんか
できたんだろう
むかしはさ
こんなのなくても
つたえあえたんだよ
おもいだして
くれないだろか
ちいさながめんから
ひろがるせかい
ほしになったり
....
◇寒い日
世界を圧縮したものが
新聞だ
さう信じてきた浮浪者が
新聞紙を丸めて火をつけた
世界よ
大きな顔をして
人を舐めるな
おまへは俺の手を
暖めることさへ ....
ちせつな
言葉からつむぐ愛が
どっかへ行ってしまうのと同じように
明日から
せかいは
変わるのだそうだ
ぼくたちは
何も出来ないから
ぴすとるをうつのだ
あな ....
秋風に揺られ
無数に実りゆく
夜の小さい太陽達
今にも落ちそうな実に
枝はしなる
自分らしく熟れるのを待つ
世界中の人々のように
ぶら下がる無数の実が
枝から離れる ....
なぜかゴマだれがなくて
フレンチかけて、たべた
ファミリーマートのドレッシングはよく品切れ、ている。
オフィス街の悲しさか、ひとの好みは偏って、いる。
ゴマダレはなぜ ....
いつもそう、決まってそれは冬だ。
今年も真っ黒な服を纏って冬に泣く。
明日は、カラスが、泣く。
いかないで。しなないで。なんでもいいから、いきていて。
とほうもないね、ノンシュガーの茶 ....
とくしゃがほしいと
西日暮里のホームの
縁の下
西日の餌食となって
身悶えながら
哀願したあなたよ。
あたえましょう
あたえましょう
千載一遇のとくしゃを
あたえましょう ....
ごめんなさい
今 私は
あなたが救いを求めた手を
払いのけました
ごめんなさい
私は 酷い人だから
願うことしか
できないのです
―自らの手で どうか
自分自身を どうか
....
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