花かんむり
シロツメクサの匂い

透明色
ソーダ水の水面の波紋

むせ返る夏を
不器用に泳いで
よろめいた夕暮れ時に涙

びーだま、の

陽炎のアスファルトで
かなしい音を立 ....
針金を折りたたんでいく、と
先には僕らが息をしている家が見える
目を細めれば海のようなものがあって
僕らはそれを海と呼んだ
その前で君はセーターを編み続け
僕は隣でセーターを食べ続けてい ....
どちらかと言うと
僕等は空ではなくて、雲なのだろうなと、
三点に立つ
高層ビルの隙間からぼやいた。
人類の歩みなんてものは
どこかよたよたしていて
未だにフロンガスは使われてるし。
 ....
手と手が触れたら
温もりは伝うかな
電波に乗せても
声は震えるかな

ディスプレイの向こうに
思いは伝うかな
一次元の宇宙が
6畳の部屋で世界に繋がっている

そういう風に今を表せ ....
春へと続く回廊は
まだ細くて
差し込む光に
白く歪んでいる
三月は
足裏を流れる砂の速さで
大切なものを{ルビ攫=さら}っては
あやふやなものばかりを
残してゆく


  いくつ ....
よみがえる言葉を
踏みしめながら
いつの季節もささやかに鳴り


 のびゆくはずが
 逃げてゆけないものへと
 落ち着いてしまった

 あたらしく
 おとを試して、
 更 ....
脱ぎ捨てたシャツには
汗の匂い
それはそのまま
あすへとながれて

うっすらと
口づけをもとめる
よるの首筋は
片付けきらない部屋の
すべてを横切り
とけてゆく


 ....
              2002/02/05
だめだ!だめだ、だめた!
絶対にダメだ!
どんなに懇願しようが許さねえ
たとえ明日地球が無くなるとしても
娘はやれねえ。

だめだ! ....
午後の教室
一番後ろの席で
眠りとの間に揺れていると
ずっと遠くの方に喧騒が消えていく
穏やかに舞う埃が
知らない間に袖に張り付いて
一緒になって光合成していた
金曜の午後

ノート ....
夕陽をあびる 
丹沢の山々に囲まれた 
静かな街の坂道を 
バスは上る 

時々友の家で 
深夜まで語らう
( 詩ノ心 ) 

午前三時 
友の部屋を出て
秒針の音が聞こえる部屋 ....
後姿を追いかけて
雑木林を抜けると

ほのか温もる世界

君が道しるべ

並んで見下ろした昨日は
水面が揺らめくように瞬く

  
  ふたりで夢をみた。


からだ寄せて ....
眼鏡を外し
全ての輪郭を奪う
青色の歯ブラシも赤橙色のオイル瓶も
銀色の蛇口も
緩やかに溶け出して
水の流れに混ざり

排水溝が渦を創り始める
わたしはその様を
掌に縋る抵抗で知る
 ....
今オバァちゃんが食べ残した
お頭付きの鯛が天に昇っていきます
片身が無いので泳ぐ事も侭ならず
さりとて
昇っていくには
残った片身が重過ぎて
潤んだ瞳を
ますます潤ませ
静かに ....
きゅうじつに
おもいっきり
あせをながし、
ふたりで
ろてんぶろにはいって、
あおぞらを
ぼんやりながめるのが
ぼくらは
とても
すきだった。

手術の失敗が
ぼくらの
すべ ....
飴色の線が蜘蛛を伝って降りてくる
壁の染みは手を広げた形
翅みたい、

ぺらぺらのセロファンで
赤かったり緑だったり部屋を照らして遊ぶ
水葬には多分、オレンジが一番似合うと思うの

心 ....
バスの窓が煤けて、町を映し続けている 六十キロ

断続して、町の輪郭として、区切られているビルは、断続して

ビルとビルの隙間の半分には、雑誌と暗闇と雨水がともり

上半分には、ただそこに ....
ざくっ ざくっ 
と泥田に鍬を入れながら
陽平さんは鼻歌を口ずさみます
佐知子さんもその横で
一緒に歌います
収穫期二人は
毎日ここへやってきて
泥と格闘します

水を抜き
灰色に ....
指先はあたたかい
たぶん、その、ほどけていく瞬間まで
写真の空は記憶よりも鮮やかで
古い団地の隙間から
見上げるのはたくさんの
呼吸のない、窓

手のひらに
折りたたんだ空
に、記載 ....
東京で暮らすために
新宿に降り立った日のことを思い出す
長旅、といってもたった半日だ
タンクトップをねじるくらいで
音楽をつめこんだ鞄を
肩に食い込ませ
その日を酒を探して歩いた

福 ....
バス降りて
坂道越えた病院の
その先にある
夢見た学校

全国から
つどいし仲間は
一人暮らし
少し羨まし
少し尊敬

ビキニ着て
セクハラまがいの
あ ....
長年育てていたサボテンがとうとう花を咲かせた。
てっぺんにひとつだけ、
うっとりするような明るいピンク。
針に刺さらないように、花びらだけをゆっくりつまむ。
生命のすべらかな感触が胸を暖かくさ ....
空気になったんだよ

彼方はそう言った

悲しむべき事ではない

そうも言った

傍らで泣く小鳥達は

夕陽が沈むのと同時に飛んだ

果てしなく高く

空気になったという君 ....
君がひっそりとやさしい人になる

誰も気づかないうちに

日が射して去っていくように

教室の片隅で

冷えた空気を少し弛ませて



小さな出来事だった

草の芽が最初に ....
見捨てられてしまった夢は
どこにも行く当てもないまま
下を向いて歩いていた
夢は希望を失ってしまったのだ
このまま消え果てゆく
そう思った
本来ならば夢は夢なのに
夢は夢をもてなくなった ....
鳥篭を落とす
田圃、鳥のいない
鳥篭だらけの田圃


渇いた積み藁に火を放ち
積み藁に火を放ち、
冬が勃起する


ふくよかな夕焼け覆う、
冬がゆっくりと
深く揺れ
 ....
駐輪場で鳩がむねを撃たれて
仰向けに休んでいる
白い翼をとじ
両足を揃えてたたみ
なにを見ているのか
つめたい檻の外へ
まばたきを急ぎながら

その心臓は重すぎる
あかをはき出し ....
  
 

 もうこうなりゃポカスカ日和だ
 立っていると
 足がくらげになってしまうほど
 あったかかった
 午後三時の図書館の屋上は
 どの午後より
 死んじゃってる、と
 お ....
 ぼくは手を後ろに組みながらいろんな色の額縁にかざられた思い出の絵をながめている
 幼い頃の絵 少年時代の絵 青春まっただ中の絵 青年時代の絵
 ここまでしかない ぼくは死んでしまったからだ
  ....
西日の{ルビ紅=くれない}に照らされた
誰もいない部屋の
あの日は永遠に暮れずに
私を傾きつづけて

太陽電池式腕時計の刻みつづける
秒針の先にひっかかっている
スープに影はささないでい ....
そらはあんなに晴れているのに
君はないている

なかないで
と肩をだいても

なき止むことはなくて

ただ抱きしめて
おおげさだよ、と笑われて

それでもはなさないん ....
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