透明な筆箱につめた夢は
いつも僕のポケットに入っていた
どこへでも持って行ったし
どこででも開く事が出来た
だのにいつの間に
筆箱を使わない年齢になったんだろう
気が付くと筆箱はどこに ....
夏のおわりが近づいたのだよと雷鳴が耳元で囁いた夜
わたしは小さなわたしの左の乳房にもっと小さな小さなひとつの石を見つけました
まるで岩陰に潜んででもいるかのようなこどもの石です
いつのまにこんな ....
花が口々に言う
さざめくはわたしの耳
波のよう揺れ広がる青
かがみ込んで
口付ける
いとしいお前は半ば骨
花が言うのはわたしの秘密
手折ってやろうよ
煩くしたら
....
うたたねをして目覚めると
一瞬 {ルビ黄金色=こがねいろ}のかぶと虫が
木目の卓上を這っていった
数日前
夕食を共にした友と
かぶと虫の話をしていた
「 かぶと虫を探さなく ....
ハロー
ハロー
ハロー
ぼくからきみの 世界 へ。
ハロー
ハロー
ハロー
わたしからこの 世界 へ。
ハロー
ハロー
ハロー
この声はそちらへとどいてますか
....
しるしがほしいだけ
朝
少しねぼうをしてしまったとか
仕事中
さとうさんと野球の話に熱中してしまったとか
帰り道
突然の夕立にあって雨宿りをし ....
わたしの余白には言葉を埋めないで、
どうかそのままにしておいて下さい。
あなたが埋める言葉はとても想いので、
ふたりはいつも沈んでしまいます。
句読点のない ....
一羽の鳥が空をゆく
わたしには
その背中が見えない
いつか
図鑑で眺めたはずの
おぼろな記憶を手がかりに
爪の先ほどの
空ゆく姿を
わたしは
何倍にも引き伸ばす
こんな ....
真夜中のコンビ二エンスストアに
いそいで駆けこんだら
あたたかい、垢じみた
猫の毛の匂いがした
うす茶色の肌とうす茶色の目をした
店員の青年がこち ....
いつまでも消えない風景が
瞼の裏に焼きついている
夏に木陰でウーロン茶を飲み干して
蝉の合唱に包まれながら瞳を閉じると現れる
こんなに垂直な建物ばかりの街ではなく
曲がりくねった木が ....
冷たい
クリーム
なのがヤバイ
夜に忍び寄る
密やかな欲望
今日は買わなかった
だって我慢ができなくなるから
冷凍庫を何度も覗き込み
ため息をつく
頭の中はそればかり
ああどうして ....
乾いた呼吸を赦されぬわたしは
ひっそりと
森に息づく
指先をうねる樹の根へと触れると
わたしの左の乳腺がほの暗く湛えるひとつの塊を
まるで心の中のしこりが権化したかのような
小さく痛みをも ....
+。
☆:
゜ ゛
.+
城の階段に死の影がゆらめき
か細い蝋燭の焔の先
白くかがやく明るさのうちに
//灯るのは、
健気でつよ ....
そこかしこと 答えよう
こんど
愛が どこにあるかを 聞かれたら
そこかしこ そこかしこ
痛みの背中をさすりながら
そこかしこ
トイレを掃除しながら
そこかしこ
入道雲
道祖 ....
はたらけど
はたらけどと言う
ほど働いてないし
朝から風鈴が鳴るも
どこか寂しげなその音は
いつもよりも小さく
張りがなく聞こえる
昼にはセミも鳴くも
何か物足りないその声は
いつもよりも遠く
弱ったように感じる
夕方のテレ ....
夜になると風が出て
{ルビ毬栗=いがぐり}は落ちてゐた
次々と
加速されて
硬く冷たい実が
ぱらぱらといふよりは
すぽすぽと黒土にはまりこむやうに
降つてゐた
流 ....
昆布の匂いがする、と
おんなの言うままに
おとこはそっと確かめてみる
漁師町で育ったおんなは
季節ごとの海の匂いを
知っている
おとこは
ただなんとなく海がすき、とい ....
今日の夕日は
今にも落ちそうな
線香花火のよう
ポッテリふくふく
ジラジラ燃えて
せみしぐれ
ピタリと止まる
どこかで指揮者が合図した
庭の緑がそっと揺れ
ああ暑さも少し楽に ....
曇り空の日に
コップで氷水を飲んでごらん
ああ、なんとも切ない
あした雨が降る
愛する人の胸で泣いてごらん
ああ、なんだか安心
恋はうつろうけど
嘘のような顔して
君の心の苦し ....
肉の奪い合い
ひっぱりあい、
女の奪い合い
殺しあう日々が
だんだん
つまらなくなってきて、
//夜
まっくらな空にうかぶ星たち ....
ただ激しいだけの
夏の日差しにひからび
立ち尽くす老木が
通り雨に打たれて
季節の終わりの
重苦しい空に投げだす
涙をのせた
手のひら
(それはわたしじゃない、わたしじゃない)
....
長い間
{ルビ棚=たな}に放りこまれたままの
うす汚れたきりんのぬいぐるみ
{ルビ行方=ゆくえ}知らずの持ち主に
忘れられていようとも
ぬいぐるみのきりちゃんはいつも
放置され ....
{引用=
日の涼しいころ、
白い開襟シャツを着て家を出る
それでも蒸した空気が
まだ動こうとしないな ....
優しい木漏れ日
静かな潮騒
あなたを包んだ
愛の世界
悲しい思い出
貧しい生活
あなたを信じた
愛の世界
苦しくて楽しくて可笑しくて
美しい美しい
愛の日々
愛の日々
....
ピアニストの繊細な指だ
白い鍵盤をすべってゆく
まるで水鳥の夢見る羽ばたきにも似た
あるいは
まだ見ぬ色彩を生み出す画家の
狂おしいまでにあざやかな指先
{ルビ天地=あめつち}を踊る風の曲 ....
{ルビ吃水=きっすい}の切り拓く直線に
弾け、昂ぶる蒼波の振幅も
いつか、{ルビ理=ことわり}を{ルビ纏=まと}い
穏やかな泡波の
幾重にも沁みわたる
船側をすり抜ける速さに
戸惑い、 ....
ぼくから見えるこの空は
広いというよりも大きい
首を回すだけでは
すべてを見ることができない
空の中に包まれてゆくようだ
ぼくから見えるこの空は
高いというよりも太い
そばの ....
鐘の音がひときは澄んで響いてゐる
高原の牧場
風は爽涼として
日は明るく照つてゐる
ここに一頭
健康優良の乳牛がゐる
乳が溜まつて乳房が張るものだから
たまらずク ....
夢をみていました
真夏の午後の熱い眼差しをうけて
そこに僕はいました
日常の変わらぬ生活を送ってます
満員電車にも最近は慣れました
そこに君もいました
いつもと変わらぬ愛らしい表情をし ....
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