あしどり たんたらら、た
あさって 泣いてしまったら
よぎって つばさが抜け落ちる
たらた らたた たら、たた、たた
ねむりは あさく とてもまぶしい
ひつ ....
その言葉を初めて聞いたのは、
まだ、あなたの海にいた頃。
大きすぎる手のひらを隠そうともせず、
揺られる海の深さを世界と思っていた頃。
右へ。聞こえる、聞こえています。
右へ。手のひらを。ぐ ....
はりつめて切れそうだから目を閉じてあんまり空気を吸わないでいる
ひとりごと、白くかたまれ歌になれ風に飛ばずにここに留まれ
鍵盤にひとつぶ落ちる(きん、たたーん)か ....
パンをちぎる
その手で私は
鶴をおる
鶴をおる
その手で私は
猫をなでる
猫をなでる
その手で私は
ページをめくる
ページをめくる
その手で私は
小銭をかぞえる
....
{引用=ピッピだっけ?窓の隙間に北風がこぼれるような素敵な名前だ}
なんで今日は羽根が開かないって、ああ、マイナスだらけの最低気温
君の目で体透かせば黒い部分のたくさん出来る季節がきた ....
空をけずるおとのする 大風のよる
ふたりで二尾百円の鰯をたべる
おさないりーちゃんのいうことには
こんな風 神サンのおうち とばへんやろか
ピンクの箸で鰯の肉を運ぶ
りーちゃんの「神 ....
自分の名前を
忘れてしまいそうになる
遠いとおい旅路なのです
だけれども
決して忘れない
名前もあるのです
あの月と星をいただく塔の上で
そらに吸い込まれる
ただひとつの呼び名のよ ....
風が公園で遊んでいる
ブランコに乗っている
砂場で小さな山を作っている
広場でおにごっこをしている
風が公園で笑っている
ジャングルジムを伝わっている
ベンチの後ろに隠れている
ボー ....
昨夜に限っては
悪夢にもうなされず
いっときだけ
窓をたたく雨の音を
聞いた気がする
夜の中にあって
感情を露わにしないまま
目覚めたのは幾日ぶりのことだろう
確かに雨は
濡れたアス ....
1
十二月の眠れる月が、遅れてきた訃報に、
こわばった笑顔を見せて、
倣った白い手で、ぬれた黒髪を
乾いた空に、かきあげる。
見えるものが、切り分けられて――。
伏せられ ....
嫌われることに震える両手は
ひとを切らずに
済んだかい
置き去りの身に震える素足は
ひとを捨てずに
来たのかい
おそろしいものは
いつも
わからないのに
....
世界の片隅で生まれた風は
猫柳の枝を揺らし
水辺に群がる蝶の触手を掠め
乾いた轍の上を砂塵を巻き上げながら
叫びと響きを翼にのせて
つむじとなって舞い上がる
鋭いまでの切っ先 ....
第二次世界大戦の帰り
コーヒーのお代わりと、兄によく似た笑顔に何故か敗北を予感した
銃剣によく似た冷たいものが
心臓の半分弱を撫でている
その日はいつものようにマーメイドによって、パン ....
ぼくらはいつも
見ていたんだね
同じ窓から
午後の青空
透ける葉脈
震える小枝
それらにも似た、未来
ぼくらはいつも
感じていた
同じ風を、違う感受性で
教室にいる ....
机の引き出しの奥に
わずかばかりの
どこにでもある土の入った袋
これがふるさと
都会のコンクリートの中の
ほんの少しのふるさと
自分が生まれ育った土
袋を開けると
ふるさとの匂 ....
珪石、打ち鳴らし、
火花が砕けた。
日々には
何も影響しないし
縫い付けない。
去年の冬に読んだ、
ある外資系投資家の
凡庸な装飾と比喩、
エチオピア・ハラーという珈琲が
おいしいく ....
きみは中から凍えていくようだけど
私はきみに触れている指先から凍傷になっていく
きみからぶら下がる氷柱が落ちて
私の足を貫くから
もうどこにも行けなくなるよ
私は冷たい水しか持ってい ....
このゆびを
のぞんで降りたきみですか、
しずかな熱も
いそぎゆく風も
そのゆくすえは
つながってゆく気がして
荒れたくちびるを、恥じらう
ふゆです
やさしさ ....
たからものが見つからない。
田んぼからの帰りに、
どこかに落としたのかもしれないと、
あちらこちらを探してみたが、
どこもかしこも空っぽで、
見つからない。
....
花はいつ咲くのか
花に聞いてみなければ
わからないけれど
心の花は
自分で咲かすものだから
自分に聞いてみれば
きっとわかるはず
星はいつ流れるのか
星に聞いて見なければ
わから ....
春からひとり
流れてきた
おまえ
こんこん冬と
墨染めの宵の川は
さぞ冷たかろう
月様には出逢うたか
さぞ澄ましていたろうに
あれは誰かを
好いている
一に ....
胸のボタンを外すとき
あなたの狡猾な指先を思い出す
背後から不器用そうに
それでいて
未来に待ち受けているものを欺くかのように
(それなのに忘れられないのは
部屋の灯りを消しても
情念の ....
私とあなたが
星砂の浜辺を歩きます
くりかえし
打ち寄せる波は
過去から未来へと
永く続いている
時の呼吸です
波に乗せられて
次々と浜辺に
打ち上げられる
星の形をした砂 ....
『癌と云う/漢字が書けるようになりました』/外科医に向かいて父が笑う
『お父さんの/腎臓を見たよ』と呟いて/遠くを見つめる母の背中
『治るよね?』/テレビを見つめて兄が聞く/誰 ....
ジョニーの腹違いのいもうと
マリンちゃんは夕べ
バスを待っていた
最終バスだ
零時二十五分
かけおちするのさ
あのどうしようもない男と
天気予報では
急に寒くなって雪だといった ....
*
魚は酸素を知らぬだろうか
暗い水辺に輪を描いて
あんなにも深く潜ってゆく
*
飼育係は放課後に
飼っていためだかを流してしまった
閉じ込められてるのが
可哀相だったって
....
人間と人間の間で起こりうるものに
無限の可能性
無限性の可能を感じた
わたしが何者であるかとか
彼女が何者であるとかはそれほど重要ではなくて
彼女との出会いを通して
わたしのなかに新 ....
まためぐる季節に
埋もれてくしろいまち
夜が来るたびに
暗がりの向こうから
沈黙を引き連れて降る白
霜焼けの幼い手のひら
目が眩むような世界に
迷い込んでしまわないよう伸ばす手
誰 ....
老いた驢馬はゆくりゆくりと歩む
赤茶けた泥濘に蹄は重く
驢馬の道程に気紛れな心が曲線上に見える
{引用=黄昏時に直線は 物悲しいと私は思うのだ}
老いた犬が老いた驢馬に並び
二つの足 ....
頭の中の言葉が
たくさんあるというのに
捕まえることができない
つかもうとする手と言葉とが
磁石の同極同士のように
退け合ってゆく
言葉が拒んでいる
言葉をつかめない
そうではない ....
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