終わりが見えないほど
想い続けた夜のこと
私の中で舞踏曲が
鳴り始めます
もはや私のためには存在しない
あなたも一人の人間であることは
間違いないのです
だから私は人間にではなく ....
胸の奥底を突き刺す
あの時の届かなかった想い
尖りきった気持ち
傷つけてしまったことば
風が攫っていったのか
冷えこんで行く空に
張り巡らされた鉄条網から
....
朽ち果てようとする一枚の葉に
思い出します、
たいせつな
いろ
寒さがつのりゆく風のなかで
あらゆるものを踏みつけて
あらゆるものに火を放ち
暖まるすべは
そのすべもろ ....
一握りの気まま、は
自由と呼ばない
不自由から逃れて
背中の羽根を伸ばしても
きっと名前が違うだろう
いくばくの束縛から逃れた、
小鳥のようなあなたは
一粒の木の実 ....
窓ガラスにくちづけを
吐息がこぼれたら
やさしいあのひとの時間
ミルク色の月に
紅茶をこぼして
頬を寄せて眠るひざまくら
好きといって
嫌いといって
憎むといって
どうか
静かな湖面に
あなたとわたし
ふたりきり
いつもは感じ得なかった
あなたの男らしさを
ちょっと見直してみたりして
(フレアミニなら喜んでくれたかな
季節はずれの湖面に
あなたとわたし
....
ありえない数の
人の涙は
知らぬ間に
雲へと吸い取られ
雨となる
(僕の目の前で雪が死んでゆく)
神はそれを固体化し
白くペンキで色をつけた
人はそれを
「雪」と呼んだ
....
うすずみ色の空はひくく
ピアノ線を地におろし
哀しみという歌をかなでる
さえずる鳥さえもいない
こんな午後は
暴かれてしまうことをおそれて
いくどもたしかめた肌の ....
庭に落ちた夕焼け、それだけじゃ
君を好きになる理由にはならないけれど
よく挨拶を交わす新聞配達夫がいつもよりも少し急いで
豆腐屋のラッパがいつもよりも何だか妙に心地良い
ご無沙汰だった静寂を内 ....
こぼれ落ちる涙に
いとしさを聴く
ときには
いらだちを聴き
いたずらもいましめも聴く
わたしたちは温度を知っている
あるいは
温度の選択を知っている
....
久しぶりの
雨の
窓叩く音が
私を招く
人影もない
真夜中の
常夜灯に雨は
照らされて
絹糸のように
白く光っている
時折過ぎる車の
雨の飛沫が
耳を掠めて
....
{引用=今夜は
月もちょうど半分の明るさで
なんて幻想的な夜なのでしょう
今夜は
月も森の木の天辺に腰掛けて
なんて素敵なお客様なのでしょう
丘の上から眠る町を一望して深呼吸
物 ....
{引用=風が、何度もしみわたる
夜だから、
キョウシツとかツウガクロとかイエの
水槽のなかで、
わたし、
うまく息継ぎが、できなくて、
ホント、苦しくて、
ハダカのまま、
濡れています ....
降りそそぐものは、波です
満ちてゆく潮風に
しおれることも
ときには
開花
白銀は、あこがれですか
うらがわですか
ゆるやかになきます
あの、下弦
背中を ....
うれしい朝だね
ほら、鳥がみんなで飛んでゆく
きっと
空にあいさつをしているんだよ
明るい朝だね
ほら、子供がみんなで遊びにゆく
きっと
思い出をつくりにゆくんだよ
優しい朝だ ....
僕の名前はリナ・ローウェン、
かの大詩人が即興で名づけた
ニックネーム。 )))
彼は人並みに僕を抱いて
「もう愛してなどいない
と、言った
そしてパリで ....
混沌とそこで波立ち、
彼女は待っている。
すべてを脱ぎ捨て飛び込む。
飛沫を上げ、
彼女は受け容れる。
全身で全身を包み込む。
ゆるやかに彼女が浸透 ....
旧校舎の
三階と四階の間の
踊り場の窓から覗く景色は
いつも違う
ことを知ってるのは
私と少女だけ
少女は
私たちと
制服が違う
遠いところから来たから
ただそれだけで
何か ....
オキアミ臭くなった手じゃぁ
硬くなった握り飯を
頬張る気すら薄れちまう
オキアミ臭くなった手を
イソメの汁のついた手を
ごしごしやったタオル取り出し
額の汗を拭いてみるが
あれよ
....
人、人並の生活ができれば
幼い日の貧しさも遠の ....
冬の大雨の日
どこからともなく
ノラ猫は家の庭にやってきた
近所では名の知れた
図々しく生きるヤツらしい
汚いから触るなと
大人は子どもに言い聞かす
力を失いかけながらも
木の ....
冬の朝のにおいだった
せいけつな萌芽だった
眩し過ぎるゆえ
疎ましくなるほどの
寒さは寂しさに似ていて
暑さのひゃくばい嫌い
おとうさん
おかあさん
そんな言葉では震えてしまう
....
マリンちゃんが入院した
急性虫垂炎だった
俺も六年生のときやった
たしか下の毛をそられたとおもう
うぶ毛だったけれど
マリンちゃんのあそこが
うぶ毛だったとは思わない
ただマリンちゃ ....
リュートをかき鳴らす
あの燃えるような響きはどこに
自在のままに{ルビ弦=いと}を泳ぐ
あの{ルビ勁=つよ}い指先はどこに
歌はどこに
耳を澄ませば風が行きかうばかり で
目覚めれ ....
飛ぶ鳥の名前などは
どうでもいいことかも知れない
晴天をかもめ、
夕暮れには
からす
一応の名前で
呼んではみるけれど、
きっと何かが間違っている
かれらは一途 ....
澄んだ蒼い世界
青春の色
車に引かれた君
蒼い世界に、
目の前で飛び散る、
君の赤い血。
あまりに綺麗で
見とれてしまった
死んだ君との別れ
瞬いて、涙
ミッドナイトに ....
合わせた両の手の
粗雑な隙間から
滑らかな液体が
落ちてゆき
跳ね返る硬さの
音 確かめた
深夜の台所
よりよい
冷たさへ
欲しかったものを手に入れたとたんに
他のものが欲しくなる
判ってはいても止められない
「欲しい」には夢と希望が満ち溢れ
手に入れた後には虚しさが残るだけ
(捕らえた獲物には…なんて言い訳がま ....
思い出のクリスマス。
第十位
二十三歳のクリスマス。
お歳暮の配送センターでアルバイトをしていた。
朝のデパートの開店時間に合わせて、
そっちの方角にみんなでお辞儀をする。
馬鹿馬鹿し ....
・cigar(葉巻)とsugar(砂糖)
あ、
煙草をやめようかな
と思った
手を伸ばしたとき
箱の中に一本しか残っていなくて
でも寒くて
買いにゆくのが面倒だったから
五分間
....
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