乙女は 神を 信じている。
けれども
乙女に ロザリオをくれるひとも
買う お金もありません。
教会へ向かう 夏の暑い日
乙女は 道ばたに
白いロザリオのような花
どくだみの花を み ....
何か採れたか
という声に振り向くと
土手の上にいたのは
夕焼け色の親父であった
石橋を叩いて叩いて結局渡らない
なにもかも失う日のはぢまりのような日
いつもきまってベーグルを買いに来る
おじいさんがいた
今日はその人に会って
たった31日目
きっとまだぜんぜん
赤信号分の黄信号にも満たないような小さ ....
苔が吐きだす一千年の時
崩れてゆく胞子嚢が
クラッシックなビールの泡を
吹いて
ぼくの肺を満たしていく
遠い
ひかり
さえぎる
巨人た
ち
あなたが得た
この深刻な自由
じ ....
夏休みになると自転車で旅に出る男の子たちがうらやましかった。
大きな国道沿いの集合住宅から、蝉のぬけがらを轢いて、
日差しに溶けないように黒くなる細っこい脚の駆け出す
立ちこぎの夏を横目に ....
ベランダに出れば灰色の空が明るく色付く
何処から現れた一匹の鴉に餌をあげる
近所では餌をあげるな
と、注意を受けた
そのために誰も起きていない時間を選んだ
まだ、電車も走ってな ....
大きなサボテン
小さな鉢で
よけいおおきみえる
小さなサボテン
大きな鉢で
よけいちっこみえる
だからよけい両方かわいいねけど
大きいサボテン
「なんか家まちごうてへん ....
仕事帰りに電車にのる
少しビールを飲んで
少し酔っ払いながら
不意に哀しくなって
電車のなかで鳴咽をもらしそうになる
別に泣きたい訳じゃない
ただ情緒不安定なだけ
それだけ それ ....
拾ってきた
捨て猫
が
目を放した隙にじぐそうぱずるを完成してしまいそうになっている
いやしかしどちらかといえば
最後のいっぺんを今まさにはめ込もうとしている
いやしかしどちらかといえ ....
☆ おへそにピアス
おへそにピアスしています
ローライズのずっと上
チューブトップのちょっと下
夏の視線がやたら眩しくて
わたしのまんなか
おへそにピアス
わたしがまだ
あのひ ....
明け方の空は曇っているのに
あんまりにも透明なもので
まるで海の底のように感じました。
少し泳いでいくと
灰色の話を詰めて
銀色の魚が泳いでいくので
おはようと声をかけましたら
とて ....
指し示す指が
ぶるぶる震える
なんでもない
ただ指をさしておしえるだけのことで
からだはこわばり
震動は腕を通って
指先へと伝っていく
なまのきみに近づいたら
ぼくの妄想の中に生き ....
こんな孤独のなかじゃあだめだ
ポッチリ 宇宙に咲いた花
何のはなだかしらないけれど
その中にある宝石に
手元狂いで付いた傷
それでも全然たらないな
小さい小さい僕の部屋
ポツ 部 ....
ふたり来た道
ひとり戻る道
降り出した雨に
そこから一歩も
動けなくなる
泣かないと決めたから
唇噛んで
きみの姿を巻き戻し
雨のスクリーンに何度も映す
いくつもの
色の移 ....
冷房の効いた電車の中
一人扇子を仰ぐ
今日は暑すぎる
虫の動きが速い
耳ではシンセドラムが
正確なリズムを打つ。
次は国分寺出口は右側
おばさんが押して出る
今度はラップがなり ....
日の出
小鳥はまだ明けそめぬ闇のうちから
啼き始める
辺りを憚るやうに
ほとんど囁くばかりのくぐもり声で
それは天与の美声を押し殺した 呟きだ
野の鳥よ ....
砂漠がたったひとつの井戸を隠していたころから
私の瞳は たったひとりの姫を隠していた
床は真四角の部屋 天井が一点で結ばれている部屋で
彼女は いつも たったひとりで 永遠を歌った
....
めろんの翠が涼しい頃
強引な若さだけを連れて
新しい部屋を探したわたしが
照れながら甦る
必ずしあわせになるのだと
啖呵を切って
飛び出した古い家
裏付けるものなど何も無く
ただ
....
カマキリを殺した
あんまり威張つてゐるから
縄張りでもないのに
アスフアルト道のまんなかに出て
仁王立ちになり
人を通すまいとするから
私はその夏 傷心を抱へて
祖父母の郷へ帰つ ....
{引用=
一、漕ぎゆく者へ
明るいうたは明るくうたおう
明るくないうたも明るくうたおう
そうすれば
必ず
いつかどこかが壊れてゆくよ
治すというのはそ ....
蛇口にもいろいろあんのよ
飲食店の蛇口はいつも元気で
小学校の蛇口はお喋り好き
公衆便所の蛇口は毎日がつまらなさそう
なんで私がそんなこと知ってるかって
旅好きな水から聞いたのよ
私は ....
あたしを弾いて頂戴
この暗闇の中で
その人差し指で
マリオネットみたいに
あちら こちら
自由自在
あたしの体は鳴り続ける
それはまるで
海の底に響くピアノ
魚 ....
だれか森の奥で
山桃の実を食べている
指のさきから尻尾のさきまで
赤く染まり
鳥のように生きている
魚のように生きている
ひと粒はひと粒のために
いっぴきはいっぴき ....
いつも水を背にして
戦う
もう後には引けない。
負けられない。
苦しむ
悩む
嘆く
生きている間は頑張る
いつ死んでもいいように
今を大切に生きる
切腹も厭わない
悔いな ....
初めての海で
吸いこんだ
風のにおいはふるさとのようで
わたくしは、ただ
何万年も佇んでいたような砂浜の印象へ
飛びこんで
いまこの波の揺らぎに没しようと
荒れんばかりの幾多の波の
....
うす絹の雨の向こうで
君はほのあおい街燈を見上げながら
卵色につめたく熱せられたそれを
死にそうなけもののように銀鼠色に湿るそれを
ナイロンでつつんだ胸もとに抱えて立ち
....
わたしの 小さな庭先に
小さな ひまわり
ひとつ 咲く
ひまわりを 守る為
まわりの草を
ひきぬく
ひきぬく
大好きな
ははこ草も
ひきぬく
無惨に ひ ....
ずっと遠くの方を、
水平線が見たかったのに
空との区切りがよくわからない
から
少しだけ背中を丸めた
薄い水色のワンピースから
覗く白い腕が
夏には似合わない
から
ただ黙っ ....
あたりさわりのない野辺は
どの角度から見ても真直ぐだった
だから
生き物の骨組みはどこからでも見れた
胸のあたりの骨の向こうは
いつも何かが始まって
終わっていた
始ま ....
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