今夜
世界中の
すべての大阪弁の女の子が
ただ
しあわせでありますように
流れ星ひとつ
もう会えないあのこの
しあわせ願うほど
ぼくはおひとよしになりたくない
いいひ ....
浴室に腰掛けて身体を洗っていると
虫の声が
地面を敷き詰めるように湧きあがって
ワッショイワッショイ
ジーンリージーンリー
私を神輿にかついでいるつもりらしいのだ
それならこちらも ....
ビイ玉のまるみには
ひろい海があった
王珠水の波にたゆたう
憧れがあった
退屈なリゾートは
檸檬かぜの詩を
憔悴の日だまりに届け
無声にて泣いていました
すこしふくざつ ....
満員電車を疑え
毎朝毎夕当たり前になっている満員電車を疑え
変わりようのない日常でもこれぐらいは疑え
おしくらまんじゅうとよく言うが
俺たちはまんじゅうじゃない、人間だ
人間はいつも箱詰めに ....
めざめては指に生まれし水かきで午後の終わりを泳ぎゆくひと
ゆきずりの他人の家の軒下に丸く在るもの季を唱うもの
届かない遠い川原に届かない指の軌跡の光あおいで
....
今日、あなたのことがわかるかもしれない。
あなたを通して、私を通して
乱反射の果て
生まれたころを過ぎても
生まれなかった子は
やっぱり
私が殺したんだろうか
私の生まれた日に
すでに死んでいた子は
生まれなくてよかった子なの
ねえ
あなた
黄色い自 ....
りんごは優しく指を濡らし
珈琲は
のどぼとけを笑わせながら
そっとすべりこんでくる
隣のうちのベランダに
タオルケットが干してある
いつから干してあるのだろう
もうずっ ....
街の猛犬が
路地猫を追ひかける
猫の尻尾に
口が届くばかりに接近した
その時
目の前を
轟然と特急電車がやつてきた
あはや犬は立止り
猫はそのまま行つた
犬の前を
唸 ....
夕方。
昼過ぎから降り続いた雨は思い出したように止み
濡れたアスファルトに朝日のような夕日が射すと、
ちょっとくたびれた世界は
透きとおった群青色と鮮やかなオレンジ色の輝きで覆われる。
....
露草がぽつんと畦道に咲いておりました
宇宙まで大きく口を開けていそうな
高く澄み切った空に負けない
素敵な蒼い色
雨にも負けず
風にも負けず
道行く人を
ほっと和ませる可憐なけな ....
ひとりきりで終りはないと真空で泡立つの
そんな風に青く生らないで
わたくしのけじめ
まるい樹木で虚実は木霊している
朝日のもとを{ルビ死霊=しれい}が
破邪をささやき帰還してゆく
....
あなたの涙が溢れたら
サラサラ、サラサラ流れたら
それは小川となって流れます
サラサラ、サラサラ流れます
あ ....
かたかたかたかた
転寝の脇で何かが走っている
呪われてしまったように
僕の目はまるで開かない
僕は転寝ながら
その音を鳴らしているのが
やさしい生き物であったらいいのに
....
本当の暗闇と出会う
それって
なかなか難しい
ひとつひとつの灯火を消しても
寝付けぬ夜に何処より話し声が漏れて
この街の闇は仄かに明るい
本当の暗闇
それは遠い日の感触
胎内にいたとき ....
わかったことは
たくさんあるけれど
わからないことのほうが
わかったことよりも
ずっとずっとたくさんある
わかったことは
たくさんあるけれど
できないことのほうが
わかったことより ....
廃墟から走りはじめたふたりならねじれの位置をねじまげられる
竹馬を猟銃のように構えれば夕陽がはじけてふたりは紅く
「て、てて、手をつなごう」って言ったら僕の手を両方つかんだきみが大好き
....
1時限目が つぶれた 朝
キャンパスの 帰り道
銀杏並木に
ふたり
きみは
華やぐ 銀杏 舞い散る中
静かに
愛を 告げて くれました。
さっき
あがった ばかりの
....
朝焼け前の海に小船を浮かべ
冷たい海水から網を揚げる
その人の背中は何も語らず
先代の想いを受け継ぐ船
傷痕が静かに海面を滑り
明日に繋ぐ
夜が明ければ港に帰ってくる
今日も無事 ....
大きい声を出すと
ずぼんがゆるくなって困る
とお兄ちゃんは言う
あたりまえだ
大きい声を出しても何にもならないと
承知の上でまだ怒鳴るから
そういう羽目になるのだ
お兄ちゃんは
人 ....
そういつも野にいれば
季節の移り変わりが さぞよく分かろう
などと申されるかもしれない
けれど秋は
一時の眩暈のようなもの
縷々たる乙女の絹髪の ほつれた枝毛の ....
瓶ジュースが主流だった頃
こんな所にも
お店屋があったのかっていう田舎みち
ケースの中で
空びん
カタカタ
ケースごと返しに行く
冷やしてくれてて
ありがとう
あの頃のお ....
―万引き犯をつかまえたら
それは母さんだった
ジャスコの事務室で
母さんの盗んだ乾電池二個を
なんに使うのだろうと思ったら
かなしくて
かなしくて
かなしくて
もうじゅ ....
自分というものに
気がつき始めたこの頃は
どこか落ち着かなくて
みんなと同じことをしていても
同じではなさそうで
みんなと違うと思われたくなくて
同じことをしている自分が
自分ではない気 ....
失くしながら覚えた言葉。足りな
いものを補いながら繋いだ寂しさ
だから、朧、月夜には下る舟の切
なさがあって、どうしようもなく
なる。あなたの夜は越えますか。
....
呼べる距離まできている
足跡
紐で縛って
すべて部品に分ける
部品をうめこんだ耳で
わたしを呼んで
この眠りが深いと教えて
見た事がないと言う顔をする
経験
脚で引き ....
袋があって、それは不思議に光っている
袋の中に光がある
頼りない光だけれど、そっと触れると暖かい
袋は何の変哲もないありふれたものだけれど、
中からこぼれる光が袋をこの世にひとつしかな ....
スケッチをするのにも飽きてしまって
ずっと前とずっと先のことを見つめてみたんだ
どこから来たのかどこへ行くのか
捕まえたと思ったことばは
僕の手の中ですぐに輝きをなくす
子ども ....
マリーゴールドと
マーガレットの区別がつかない
ツバキとツツジを間違えて
笑われてしまう
アヤメとカキツバタにいたっては
はなっから諦観の境地で
でもそれはちょうど
パスカルとサルトルを ....
手のひらに虫の息
丸い黒曜石の瞳は虚ろ
彼の本分は
飛ぶ事ではなく
鳴ききる事だからか
若草色の翅脈を透かした羽は
すり切れる事もなく
黒い前胸に刻まれた金糸も鮮やかに
腹の手風琴も今 ....
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