狭い狭いからし色した故郷の空を
飛んでいるのは ああ ユリカモメか
何を哀しく思っているのか
何を気にしているのだろうか
何になりたいつもりだろうか
僕は君の琥珀の下に映って枯れてる ....
こたつとみかんは
飽きたのです
ストーブとおもちは
憧れなのです
君と僕は
幸せなのです
一番安上がりだけど
幸せだから
い ....
暗闇に
四方を囲まれた
街を
少年は
ひたむきに駆ける
羽ばたきにも似た
その足音が木霊する
闇は
巨大な壁のように
しかし
実態を現さないまま
少年の
行く手に立ち塞がる ....
2007/02/28
キャシュメモリの上に
香具師の油をひいて
滑りやすくしたい
こけつまろびつするうちに
下向きの感性が
上昇するかと項垂れて
ご禁 ....
色の名前を忘れていく
最初に忘れたのは
花の色を真昼の
それにする太陽
そして、ものまねの月
雨の色を忘れていく
濡れるものとそうでないもの
雲の内側では透明の
感傷にも似た
匂 ....
あんな色の
月の光に照らされては
わたしたち
色彩を失っていくばかりの
ようですね
あんな色の
夜空に月を浮かべられては
わたしたち
月以外にお友達が
いないみたいですね
....
調子はどうだ。
大学には慣れたか。
都会は楽しいか。
食事はきちんととってるのか。
父さんは心配だ。
ダイエットもいいが
野菜と肉も食べろよ。
風邪引くぞ。
たまには実家に帰ってこ ....
春の初めのこの風と
自転車に乗って一緒に走る
どこまでも行けそうだ
上り坂は大変だけど
風が背中を押してくれる
温かく見守ってくれる
下り坂は楽だから
ぼくの背中に風を背負ってあげる
....
流れてしまつた雲を追いかけて
防波堤を越えた、二人だけの流星を掴み
散りばめたあとの笑顔を見ましたら
それはもう、美しいとしかいい様のないほどに
ふたりの時間は流れていつたのでした。
ぎ ....
ぼくはまた、
何も生せなくて水を求めるばかりか。
水をください、舟を洗うから ぼくが
飲むのではありません。ぼくは
ほとんど飲まない。
砂漠で生まれたからです。
....
ホームで君が歌を口ずさむ
それはとても良い音なので
お墓のようなものと間違えてしまう
床に書かれた落書きが
羽をはやして飛び立とうとする
言葉はそんなことをしてはいけない
小さな子供が言い ....
ゆるやかな浅い曲線
萌黄、山吹、薄紅、象牙、
さまざまな裳裾から覗くつまさき
光の紗の微笑
例えば
差し出された野性の腕
回る理由もわからないまま母体は回り
僕を孕み生み、落とした
知らないよこんなところは
なんだ、 この鉤裂きは
ある朝目を覚ました
父親が死んだ
ひとしきり遊んで帰った
....
誰もいなくなった教室に
少年が忘れ物を取りに戻ってきた
いつもの教室は
いつもとは違う匂いがした
別に急いで帰らなくてもいいのだが
教室の中の空気を乱すのを恐れた
駆け足で自分の机に向かい ....
ぼくの
ひげをゆらして
風がすぎていきます
おだやかなはるの
やさしい風
今日ともだちと
たくさん遊んだ
とても
たのしかった
みんな
立派なネコになれるといいね
そらはいつも
....
いつも通る道のある家の玄関に置かれた
手入れを忘れられたその花壇は
いつも泥みれだった
白い花が咲いているというのに
綺麗とは思われず
むしろその花の美しさが
汚さを目立たせていた
花の ....
見上げる空に
星は無い
町の空は
寂しさを忘れる為に
いつまでも いつまでも
見える範囲を
照らし続ける
照り続ける事が優しさで
見えなくなると
その優しさも届かなくなる
....
澱んだ町にいる
それは川底だっていい
俺は黒い汚らしい鯉の鱗でいい
どろりとしたみずのなかから輝く鏡の水面を覗く
そこに汚れた気泡を吐きちいさなとてもちいさな波紋だけを浮かべる ....
サテンの光沢まばゆく
風が雲の緞帳を翻すとき
ひととき白日夢に眩む
まだ蕾、とも呼べぬ小さな膨らみは
幼すぎて花の名前を知らない
その風の名残のなかで
わたしは繰り返される春を
....
人の心は詩に流れ
詩はその光を灯す
私はあなたの足から離れてしまいました
橋から見下ろす川の水が
私を誘っているようでした
一瞬だけ
ほんの一瞬だけ
あなたのことを忘れてしまって
そのまま川に吸い込まれてしまいました
水の ....
透き通る石が相手なら
わたしの瞳もまもられそうで、
こころゆくまで
あずけて
うるむ
そんな夜には
ゆびも優しくなれるから
ゆめをすなおに飲み干して
爪は爪のまま
....
景気が緩やかに回復している
今日この頃
からしニコフは
今日もジャムを売る
からしニコフのジャムは
安いうえに滋養が満点だから
不景気の頃には
それだけで空腹を満たそうとする
リス ....
雨粒を
ゆるすしかなかったことが熱だった
ほんの
一握り、の
うばわれるものも無く
渡ってもらうことで
どこか安らいでただ濡れていた
それしかなかった、
雨だれに
ほそく ....
(また、お出かけなんだって、つまんない
保育園で唯一娘のことを
好き
と言って遊んでくれた友達は
先月突然、家庭の事情で引っ越してしまった
この町にも
あの町にも
ひしめく家並み
....
{注GEKKO=白黒写真印画紙「月光」}に浮かび上がる
曖昧な輝度信号
ほしおり はすぐそこに迫っていた
切り取られた夜空を
暗室の赤い光に積もらせ
あまりにも遠すぎて
おぼえきれない思い ....
1
うすい意識のなかで、
記憶の繊毛を流れる、
赤く染まる湾曲した河が、
身篭った豊満な魚の群を頬張り、
大らかな流れは、血栓をおこす。
かたわらの言葉を持たない喪服の街は、 ....
薄い太陽の光が、背の低いビル群を淡く照らし、それは平面的なまぼろしとなって私の脳裏に像を結んだ。私は幹線道路をはしる車たちの巻き起こす、いがらっぽい風に顔をしかめながら、長い橋の上で人を待っている。た ....
綺麗に輝く虹色をしたタマゴは
その全ての可能性をもったまま凍結した
どんな動物が産んだものなのか
どんな生物が産まれてくるのか
何もわからないままだった
そうでありながらも
タマゴはタマゴ ....
丘の上の{ルビ叢=くさむら}に身を{ルビ埋=うず}め
仰向けに寝そべると
空は、一面の海
宙を舞う 風 に波立つ
幾重もの{ルビ小波=さざなみ}を西へ辿れば
今日も変わらぬ陽は ....
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