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亀を背負って
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい

+

かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている

+

カンガルーが直立したまま
波音 ....
耳の中に何か忘れ物をした気がして
振り返ってみるけれど
耳の中に帰る道を忘れてしまった
どうにかしようと耳を澄ましても
聞きたくない音や言葉ばかり聞こえてしまう
まもなく桜がきれいに咲き始め ....
たくさんの花を枯らした
サボテンやアロエも枯らしたし
ケフィアやカスピ海ヨーグルトも駄目にした
それでも命は大切にしなければならないからと
小さな虫はその形や色が嫌いでも
なるべく殺さず ....
振り回せるものを探して歩く
軽すぎれば振り回す充実感がないし
重すぎれば肩や腰に負担がかかるから危ない
道路の上にも
道路に接するいろいろな敷地や排水路にも
振り回すのに丁度良いものは見つか ....
足がつった
魚を釣った
痛さにのたうつ小指が
餌に見えたのか
少なくとも自分の足の小指くらいは
何をも傷つけないと思っていたのに
魚は同じようにのたうってる
口をこじ開け
引っ掛かって ....
公園のベンチに腰をかけ
新聞を読む初老の男の人の手が
小刻みに震えている
新聞から文字がひとつ
またひとつと落ち
足元で意味とは別のものとなった
そのようにして人は幸せになっていくのだ、と ....
大通りがあるでしょう
そうまっすぐのアスファルトの大通り
右側にショッピングセンターのあるあの大通りよ
その大通りをまっすぐ行って
どこもカーブしてないからまっすぐ行って
三つ目の信号を左に ....
揚子江のほとりで
あなたは生きてください
わたしは揚子江の様子は知らないけれど
多分あなたも同じくらいに知らないでしょうけれど
揚子江のほとりにも花は咲くでしょう
この年になっても花の名前は ....
階段の踊り場のあたりで
父が釣りをしていた
家の中とはいえ
釣りをする父の姿が
再び見られるとは思ってなかったので
嬉しかった
子供のころ一度行ったきりだった
工場地帯の隅っこに広がる
 ....
インターホンが鳴って
受話器をとる
誰も出ない
カーテンを開けて外を覗く
いつの間にか砂漠が広がっている
その真ん中を
うつむいた君が一人で歩いている
名を呼ぶけれど
窓の開け方を ....
箪笥の奥には
凪いだ海がしまわれている
微かに潮の匂いが漂っている
妻は夕暮れの淡い光に
静かなシルエットとなり
折り目正しく丁寧に
洗濯物を畳む
その姿は僕らの感傷を代弁する
何 ....
絵本の側で
子供が頭をあわせ
内緒話をしている
二人だけの秘密は
二人だけの秘密のまま
やがていつか忘れられてしまう
僕らは今日必要なことを
ひとつひとつ整理していく
特別なことはない ....
あなたが口を開ける
中には空が広がっている
雲が浮かんでいる
舌がある
少し乾燥している
その先に
喉ちんこがぶら下がっている
双発のプロペラ機が
飛んでいくのが見える
空の一番青い ....
新しいお絵描き帳と
クレヨンを持っていった
何も描けなかった
周りの子たちは
鳥も魚も人も
自由に描いた
真っ白く広げられたものの前で
どうしたらよいのか
わからなかった
どうしたの ....
雨が降っていた
陸地のいたるところに
がんもどきと
豆腐は今日も
売られていた

+

暑い日が続き
両親は
学校へと行った
届けたかったのだ
うちわをあなたに

+

 ....
今日もたくさんの道路を見て来たので
君に道路の話をした
色や凹凸について話した
曲がりながら消えていく
その様子や
落ちていたもの
落ちそうになっていたものについて話した
飲食店の前の道 ....
町外れにある小さな海岸には
波が来るたびに
無数の椅子が打ち上げられる
町に住む子供たちにとって波音とは
木や金属のぶつかったり
こすれたりする音に他ならないので
海遊びをするときは
上 ....
針金を折りたたんでいく、と
先には僕らが息をしている家が見える
目を細めれば海のようなものがあって
僕らはそれを海と呼んだ
その前で君はセーターを編み続け
僕は隣でセーターを食べ続けてい ....
ホームで君が歌を口ずさむ
それはとても良い音なので
お墓のようなものと間違えてしまう
床に書かれた落書きが
羽をはやして飛び立とうとする
言葉はそんなことをしてはいけない
小さな子供が言い ....
小高い丘に店を開いた
お客が来た
出入り口なので
お客は出ても入っても良かった
晴れた日は
見渡せることろまで見渡せた
雨の日は
屋根や壁に雨があたった
ただここにいて
何かを待って ....
石ころが落ちていた
少し透きとおってきれいだったので
拾って帰った
こんなもの拾ってきて
母は決してそう叱らなかった
しばらく手で触ったり眺めたりしたあと
かわいそうだから放してあげて
 ....
家の中に線路が開通した
これからは毎日
海へと向かう青い列車が
部屋を通過していくそうだ
最寄の駅はいつも利用している駅だけれど
春になったら小さなお弁当を持って
二人で海を見に行こう ....
ちりとりの群れが
空を飛んで行く
南の方へと
渡る季節なのだ
僕らはその姿を見送り続けた
トリはトリでも飛べないトリは?
隣で君がつぶやく
答えなんて
いつか見つかる
崖っぷちでお父さんが寝ていた
風邪などひかないように
布団をかけてあげた
ああ、これは夢なんだな
と分かって目が覚めると
崖っぷちで寝ている僕に
お父さんが布団をかけてくれていた
細い腕 ....
踏み切りで電車がすれ違った
「電車と電車がおおまちがいだよ」
坊やは言った
大間違いするわけにもいかないので
電車は最後尾が離れる瞬間
少し間違えてみせた
「あら、間違えちゃったみ ....
道路に似た人がいたので
間違えて歩いてしまった
慌てて謝ると
よくあることですから
道路のように笑ってくれた
よくあることですから
そう言って
許したことや諦めたことが
かつて自分 ....
二人で作りあげた数式の右辺を
ある日失ってしまった

左辺とイコールだけで
成り立っている数式を見て
きみは笑う

だから
真夜中に起きた僕は
左辺を消しゴムで
消しておい ....
頁をめくる指に
降る水がある
温度とそうでないものとが混在し
それは仄かな懐かしさで
やがて積もっていく
一月の末日
漢方の匂いが漂う診療所の待合室
あなたはまだ誰にも知られていない
 ....
簡単な申請をして
小さなお役所のソファーで
僕らは順番を待ってる
制度はいつも公平で
人に優しい
前に座っている子供が
しきりに咳きこみ
母親と思しき人が
その背中をさすっている
僕 ....
脊椎動物として生きる
その悲しみ

そして
珍しく雪が降った
朝の喜び

もし君が生まれてきたら
おもいっきり抱きしめて

そんなことのいくつかを
教えてあげたい
水在らあらあさんのたもつさんおすすめリスト(65)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
かなしみ- たもつ自由詩37*07-3-31
耳の中に- たもつ自由詩1807-3-29
- たもつ自由詩42*07-3-24
五時- たもつ自由詩9*07-3-23
こむら返り- たもつ自由詩1307-3-22
手続き- たもつ自由詩1507-3-22
道しるべ- たもつ自由詩1307-3-21
揚子江のほとりで- たもつ自由詩1607-3-20
釣り- たもつ自由詩1307-3-19
駱駝- たもつ自由詩1307-3-17
箪笥- たもつ自由詩1707-3-16
待合- たもつ自由詩807-3-13
- たもつ自由詩1307-3-11
- たもつ自由詩1607-3-10
ありがとう- たもつ自由詩17*07-3-9
空の話- たもつ自由詩507-3-8
海の話- たもつ自由詩16*07-3-6
- たもつ自由詩1407-3-5
ホーム- たもつ自由詩907-3-2
開店- たもつ自由詩2107-2-25
宝石- たもつ自由詩18*07-2-13
海へ- たもつ自由詩1207-2-11
渡り- たもつ自由詩1307-2-10
- たもつ自由詩1407-2-9
手を握る- たもつ自由詩1107-2-8
区別- たもつ自由詩1207-2-6
数式- たもつ自由詩1907-2-2
指、記憶、形- たもつ自由詩1307-2-1
制度(制度)- たもつ自由詩13*07-1-26
制度(悲しみと喜び)- たもつ自由詩1107-1-23

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