君はいつも
自分が歩いてゆく道を
見つめ続けている
道の先には
新しい君と
新しい僕がいることを
きっと願って
君はいつも
自分のいる場所を
迷い続けている
道の上には ....
つまさきが冷えるので
靴下を買おうと思って
鳥の格好をして表へ出た
別に態とではない
暖かそうな上着を着て
マフラーをきちきちに巻いたら
鳥の格好になってしまったのである
ためしに玄関マ ....
まず鍵に砂糖をまぶします。銀色糖をまぶします。白色電球で九六一度(融点)まで熱しつけます。揚げます。並べます。あげます。食べましょう。合い鍵はなくなりました。合い言葉は残りました。食べましょう。
一人分のスペースに
あとからあとから
人が流れ込んできます
気の弱い私は
【もうこれ以上は入れません】
と言えないので
次から次へと
押し合いへしあい入ってきます
....
うすきみの森へ入ると
なぜ うすきみの森へ来たのか
六つ辻の小道を通ると
左右振り返って 迷子になる
あしたの沢 の水をすくえば
きょうの日付と曜日を忘れる
きのうの小石に蹴つまづ ....
蜜柑の皮をむいてのばして
扉を作って
香りを漂わせながら
扉を開ける
高層ビルから飛び立つ鳩の群れが夕陽に消えてゆく
風が弱まり、私はマフラーを丁寧にたたんだ
残酷な夜が細身の体に迫る
街は静かに息を潜めてゆく
淫らな誘惑が通りに溢れては街を彩る ....
洋光台から各駅停車の二両目に乗って
寝不足な頭は
昨夜の反省をする朝、七時十六分
このまま終着まで眠りたい
飲みなれない酒を勧めたせいか
君はとっても不機嫌で
なのに君のほんとうを見た ....
朝夕、ゲロゲロ唱える祈りの声が隣近所から
いや、TVをつけてもあちこちの局で
流される多種多様なゲロゲロ。
誰ひとり信じてなどいないが
とりあえず、まあ平和のために
皆は仕方なくゲロゲロと唱 ....
百万本の薔薇
咲きほこっている
そう言ったところで
それが造花であることをあなたは知らない
一匹の狼が 肉をはんでいる
そう言ったところでしかし
その肉が何の肉か
あなたは知らない ....
▽
どんなに長く電子メールを送信しても
恋人は七文字程度しか
返信してくれないのである
業を煮やしてメールを送信するのを止めると
次の日から
矢文が届くようになった
頬を掠めてすこん
....
ほつれた糸はよるをゆく
いつか
余裕をうしなえば
たやすく降られてしまうから
どの肩も
つかれつかれて
しなだれてしまう
うらも
おもても
やわらかいのに
ひとつの ....
「螺子を一本抜いておきました。」
きみが夕べ、
夢でそういったので、
あたちの今朝は、
すこち壊れている。
こら笑うな。
「ちんでちまいたい。」
なん ....
閉じこめている。
憶えているのは、
十三階を過ぎてすぐ。
足下の地面の、
もっと下から震えだして、
おおきくおおきく震えだして、
そして、
がこんとおおきい音 ....
ヒュルリ、季節が流れていきます。
漂流する矜持は、目的の意味を測りかねています。
留まらなくなりそうな思い出が
明日を約束してくれたでしょうか。
私の考えたことはそもそも私の何だったのでしょう ....
ラジヲが壊れている。
夕べ壊れた。
村にひとつだけしかないラジヨなので、
あれが壊れると、
ぼくらはすごく困る。
それを聞いた、
村長さんは慌てふた ....
あなたに手紙を書きます。
窓枠に残った蝉の脱殻が
妖しく光ったような気がして、
不吉な予感とともに目が覚めたのです。
脱殻はピアノを弾くかのように、
足を滑らかに動かせて、
....
おしまいの日がくるから
もういかなくちゃ
たくさん あそんだ
散らかったカード
クレヨン
すべてが
中途半端に微笑んで
楽しい時は
だけど
いつかは終わること
いったい
....
亡羊とした耳が熱を帯びて、手にした砂時計のガラスを溶かしていく。零れ落ちる時間の束を必死でかき集めるのだが、砂は先へ先へとこぼれていくのでいつまで経っても追いつかないのだ。炬燵の中で散々こき使われて ....
不思議だった
いつものオリオン座が
いつもよりも綺麗だった
寒い夜だというのに
しばらくの間
その輝きを見つめていた
不思議だった
いつもの霜柱が
いつもよりも美しかった
冷たい ....
中学のクラスメートに
森君という友達がいて
かっこいいので憧れていた
なにが恰好良いのかというと
森という姓とはにかんだ笑顔
彼の顔を眺めていると
人生はひとことでは表せない
うっそ ....
コーヒーカップの横に、本がある。
『「待つ」ということ』 そう本がささやいている。
私の心に問われた。私は何を待っているのか?
コーヒーをかきまぜてみる。
耳が頭がカラダがざわざわしている。
....
底冷えに震えながら
変化する気圧を感じていた
煙の色が変わったら
仮定した波形すら
忘れて良いのだと感じた
変化する音も色差も
比率でしか無かった
煙の味が変わったら
定義 ....
霜葉ふむ皮のブーツの小気味よさこのままいつか見知らぬ冬に
窓ガラスくもる吐息にだまりこむ人のしぐさのその残酷さ
冬{ルビ薔薇=そうび}あかい棘さす指先の血のにじむ{ルビ孤悲=こい} ....
閉ざされた森の中
高くそびえる大木を見上げると
雲一つない青空がある
空に上っているのか
空に沈んでゆくのか
もはや見分けがつかない
一羽の鳥が空を横切る
自分が見上げているのか
....
狂っているのは鳥なのか
狂っているのは柿なのか
風なのか ゴミなのか
今日は正しい電信柱のあり方について考えていた
詩人のふりをしたかったのだ
それも飽きた
ポストは何 ....
冬の月中天にさしかかるとき人魚は難破船を{ルビ欲=ほ}りゐる
憎しみに冴えたるこころ煌々とはげましゐたり冬の満月
冬月が鉄橋の上に待ち伏せる窓にもたれる男の額
....
咳をしてママをふりむかせたんだね目が合えばにらみ返す少年
熱の{ルビ児=こ}を抱えた母の傍らで少年は嘘の咳くりかえす
さびしがる骨をかかえて咳をすればカラッポカラッポ胸が痛いよ ....
北の大地では六花を呼び込む灰色の空が
重く色づいた樹々を
このまんま押し花みたいに
空に繋ぎ止めてしまえば綺麗なのに
芸術家気取りの冷たい風が
ハラハラと色を零していく
どうせなら ....
意識が拡散されていく
ふと揺れていた
気が付けば終バスなどに乗ってしまって
緑色の剥げかけた
安っぽいシートに座って
錆びかけた鉄の棒の
変色したつり革を眺めていると
山間の ....
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