あたしが とんでもない壁にブチ当たって。
どうにもこうにも この世の終わりのような 顔をしているといつも。
あなたはまるでさぞ おバカさんだとでも言うように
ケラケラと笑って
「そんな ....
お盆になると
実家には
離れて暮らしている兄弟たちが
一斉に集まり
昔を懐かしむ蚊取り線香の匂いが
きしむ床や汚れた壁から
おもむろに流れている
帰郷する度に
夕飯に並べられる
....
黄昏に季節外れのお花見を 浴衣姿の君に一献
記念日に飲もうと言ってた幼き日 開かずの洋酒 明日嫁ぎます
ぅんまいねぇ
ジョッキがからりと音たてるラムネもころりと笑って ....
{ルビ御月様=おんつきさま}が
どれほど 偉大か、
気が付いたのは
絶望の重みに
耐えられなく
なった 夜道
十字路にある
自動販売機の
灯 だけが
ユメを見せてくれた
夜
そ ....
パラパラと雨が降る
うそだよ
雨は
黙って降るのだよ
パラパラなんて言わないよ
パラパラと屋根にぶつかり目を回す
パラパラと番傘めがけて落っこちて
パラバラになって痛いから
パ ....
自転車の車輪の横には、
しっぽの先だけがしましまの猫が
丸くなって寝ている
夕方には何処かに行ってしまう猫に
名前をつけよう、と
彼女が言い出したのは
日曜の朝、
決まってサンドイッチな ....
買い手のつかぬまま
何年か空き地だったお隣に
店舗兼アパートが建った
店舗といっても
コインランドリーのせいか
雨の日以外は閑散としている
アパートもまだ空いたままで
梅雨明けのあとは
....
人間って悲しいなあ
そういう現実をつくりだしてる自分
変わろうと思ってもそう簡単に変わらない
エゴの悪循環
あなたに出会い
ぼくはぼくの悲しみに出会った
悲しみよこんに ....
ラクダに乗って
コブをゆらしている子
子に何を聞いても
ユーラユラとしか答えない
ラクダってどんな感じ?
「ユーラユラ」
ラクダはどこに連れてってくれたの?
「ユーラユラ ....
嵐の去った夏の空は
純粋な空が広がり
地上には青い風が流れる
暑い気温でも空を見れば涼しい
雨の通った夏の道は
透明な雫が続き
地上には青い風が流れる
汗が落ちても雫を見れば清々しい ....
何をみんなは 笑っているの
濡れぬ肢体を えろんと舐める
苦し紛れに ペンキ撒いたの
何も見えない 湿った部屋で
柱時計は 鉄線だらけ
ピアノの音が 暗光に映え
赤い病が 瞼を ....
僕らは空気を育てた
空気を育て空気と遊んだ
外を連れて歩くと
人はそれを風と呼んだ
空気は僕らを食べて育った
食べられて僕らは
その大きなお腹のようなところで
何度も生まれかわった
何 ....
はちがつようかのその下には
あのひとの死体がうまってる
わたしの夏が赤いのは
夏があのひとをうばっていったから
わたしの夏が暑いのは
夏があのひとのねつをうばっていったから
はちが ....
こんばんは わたし
こんばんは あなた
窓の外で
覗いてるのはだれ
漂うさざ波の天井
青い空に白い雲の天井の
部屋
明かりを消せば
月明かり ....
新しい病院へ向かう車の後部座席で
寝転がって窓の向こうを見ていた
お泊りはもういやなんだけど
指を銜えるほど
もうちっちゃい子供でもない
やがてドアが開き
傘をさしながら
ゴメン
....
絶対…とは絶対言ってはいけない
一生…とは一生言ってはいけない
要するにおまえも俺もプロレスラーなんだ
引退しても何年後かには復活するんだ
もう別れようなんて言ったって
二度と会わないなんて ....
得意料理は
肉じゃがね
どうせウソつくなら
もう少し
なんだろう
オトコの心を掴めるウソを言うといいよ
たとえば野菜炒め
たぶん反応がちがうよ
それと野菜炒めな ....
あと十分で地球が滅びます。
いつものように何気なく見ていた目覚ましTVで
総理大臣が重々しい口調でそんなことを言った
朝。
あと十分だってよ、どうする?
母さんは僕を見ながら、くひひ ....
引っ越したアパートは
薬屋の二階だった
辺りには小さな商店しかなかったが
近くに大きな川が流れていて
君の心を支えながら
よく土手を歩いた
神社には大きな桜の樹があって
薄紅の季節を ....
電車に乗って 都内へ行く
それは
ときには嬉しいイベントであったり
ときには必要に迫られた用件であったり
車内では少し緊張している
エプロンではなく ネックレスをつけているから
サ ....
豆電球ほどの灯りがあればそれで十分で
傍に紙と鉛筆があればそれで満足した
ミカンのダンボール箱が机代わりで
ダンボール箱の上に布でも掛ければ一端の机になる
窓はガタが来ていているのか、 ....
{引用=夜、眠る前には忘れることなく
絵本を開く少女
はお話の最後を一度も見たことないまま
眠りにつく、早く明日が来ればいいのに、と。
空の色によく似たワンピース
がお気に入りの少女
....
日焼けした かき氷屋の主人の
肩から流れ落ちる汗が
石床に着地すると
閉じ込められたアンモナイト等が
ゆっくりと 泳ぎ出す
冷たい水しぶきを追いかけ
飛び回る子犬の様子を伺いながら
....
海が仄かな火を抱いて流れる。
流れは、わたしの新しく柔らかな意匠を溶かして、
かわいた青い夏をひろげる。
みずを失くした海が流す、青い夏は、
白昼の街に横たわり、死者を語り、
練られた風 ....
ネコが網戸に張り付いている
白いネコだから
ネコが網戸と化している
曇り空だから
ネコは宇宙からやって来た
よろめくような遠方の
夜空しかない白昼の星を発ち
土管経由で
「 ....
泥濘から足を抜く。
緩い泥は少し抵抗したが、
やがて諦めたのか、
足を放し、
ぶつぶつと何事かを呟いて、
流れていった。
辺りは何処も濡れていて、
何 ....
きょうは333日めだよ
わたしはあたまおかしいから
ぞろ目の数字 だいすきなんだ
いいんだ
公開自慰行為だろうが なんだろうが
そんなところは とっくに超えたんだから
....
手にさげたバスケットに
お花を摘んで夢を見る
おおかみに憧れる
あかずきん
弱った人間に
優しくすると
ロクナコトがないよと
言ったのに
それでも近づくおおかみに
あたしはただ頷 ....
私はあなたから生まれたというのに
もうそんなことを忘れてしまって
自分だけの死を抱きしめていた
まるで沈むために港を離れた
あのポンコツな捕鯨船
たった一つの獲物を射るための{ルビ銛=もり} ....
「おばあちゃん元気にしていた?」
わたしの大好きなおばあちゃん
共稼ぎの両親はいつも家にいなくて
学校から走って家に帰ると
おばあちゃんが出迎えてくれて
手作りのおやつがとても美味しかった
....
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