手を引かれ歩く。
懐かしい匂いのする君
その面影は記憶の水底
私が潜水夫になって強く握り返すと
つないだ手には水たまりができて
空の色を映す。
薄暗い緑の茂みの奥までくると
....
貴方の影を決して踏まぬようにと
いつも三歩下がって歩く癖が
いつしか身に染み付いていた
夕暮れに伸びて行く影法師は
遠のいて行く貴方の背中、貴方との距離
沈む夕陽を従えるように
貴方は歩いて行 ....
白雨や
ほつれたる心に
針千条
叶はぬ夢みし
罪咎めたり
村雨に
道を違へて
涅槃坂
逝きつもどりつ
吾にもかへらず
闇惑ふ
私雨に
濡れそぼる
褥よせたる
....
ゆっくりと、撫でてゆく
背中から本能までの
または、今日から命果てるまでの
測れない距離を、あの人の言葉は
簡単に届いて、そして、
明日に色を書き足してゆく
友情、と言っていた
....
はじめて母親のお手伝いをした日
食卓には不格好なハンバーグが並んだ
焼きすぎてかさかさになったそれをかじり
父親はくしゃくしゃ頭を撫でてくれた
求めていないとは言わないけれど
ただ、とっ ....
あなたのポケットから
するり
抜け出た銀色の鎖
それを愛と勘違い
ばかみたい
ばかみたいだ
手の平の上から
ざらざら
テーブルに
こぼれ落ちた
銀色の鎖
まばゆいほど輝い ....
背中会わせた粒に分け入り
壊さぬように水を汲み上げるため
細く柔らかい根が
灯りもつけず 土を進む
折られる季節
軽い音先に連れ去られる
綺麗なところを
好いて微笑む指
見知ら ....
今会いたい
すぐ会いたい
一瞬消えて
ジャジャーンと立ったら
君の横に着けばいい
慌ててるような?
焦ってるような?
はたまた
....
小さな渦のなかで停滞している
それは停滞と言う名の逆行
不動のそれはむしろ
流れに飲まれるよりも疲れる
足を離して浮かんでしまえば良いのに
それは二度と取り返しがつかない様で
まるで小 ....
歩くたびに少しずつ体が削れていく
どうか私の後ろについてきて
足跡を全て消して下さい
私が小さい粉になって
消えて無くなるまで
私の後ろについて
青い空に押しつぶされて
夜へ逃げ ....
マニラでの仕事は十分で終わった
事務所に顔を出しただけで終わらせたのだ
日本の社長の心ない言動で
まったくやる気を失っていた
まあ自分で指示を出しておいて
途中で梯子をはずしてきたということ ....
砂浜に続く小さな花に
潮風が囁けば
あの日の
僕らのはしゃぐ声が
遠く、
残響していて
ふいに、
よせる波が
すべてを打ち消した
....
はつかみる
ほころびさける
言の葉の
うらがれとはず
あをきをいのらむ
I could never be what you need
(譬え、始まりを告げたとしても)
たまゆらの ....
商品棚に並べられた
きれいなゼリー状のものに囲まれて
カイちゃんが笑ってる
時々ふるふると震えて
何も言わない
床に落ちている
貝殻や干からびたヒトデを
二人で拾う
昔 ....
透明な糸が
のびていく
あてもなく
まっすぐと
洗い髪の先端が
とぎれる音と
あなたのためいきが
寄り添って
わたしを流れていく
たしかな明日を
手探る右手が
ふるえる
....
090523
ワタクシは
そこで暗転
私は嘘を
そこで覚醒
わたしはなにも
欲しがりませんと言いながら
水鉄砲を持って
道路に飛び出 ....
中二の国語の授業で先生が三篇の小説を朗読してくれた
そのうちのひとつは中間試験に出題されたが
あとのふたつはただ朗読されただけだった
先生の野太くて高い声が教室をしんとさせた
ふだつきの悪だっ ....
そして扉の向こう側になにかがあふれている
閉じていた扉をあけるとそこには透明な顔ばかりがあっちやこっちを向いている
みんなばらばらにどこかにいこうとして
ただ浮かんでいるだけ
あたしもおなじよ ....
キミのあいさつは
風が頬をなでるみたいで
キミの哀しい歌は
心の奥で優しく響いて
キミの世界には
朝露のひとしずくにも光があふれてた
風がやんで
歌もやんで
静まり ....
さだまらないか 手品みたいな希望の星 地球
早々と逝ってしまった あの人のぬくもりを
ほぼ毎日忘れていること それさえも
この世のホウリツでは取り締まれないから
亭々の僕は生 ....
まだ遠い夏を
まだ梅雨さえ来ない5月の空に描いて
貴女は揃えて広げた掌に息をかけ
ふうっと、飛ばす
果てしない宇宙の
一番身近な部分を
少しだけ切り取って描いた世界は
たんぽぽと
ラベンダー
....
すうっと堕ちていくような感覚と
鈍いしびれがあるという
それでいて苦痛ではないらしい
幼なじみのあの子も
隣の席の委員長も
さらにはわたしのママまで
患ったことがあるらしい
大人 ....
彼女と仕事をしてると楽しかった
たぶん仕事が終わればそんな気持ちもなくなるって思ってる
ぼくはクリエーターだ彼女は実務をしてくれてる
この広告の小冊子づくりが終わればチームは解散する
ちょ ....
背中を引き破り
翼を産み出しても
僕らは飛び方も
場所も知らない
翼も血にまみれ
ドロドロとした
赤い液体に絡まる
何も知らない子供が
汚れた大人が
ひきこもりの科学者が ....
言葉の羅列に侵されてく
そんな瞬間の私
怯えるように痛みの先を舐めて
舌の先に灯った芳香に焦がれた
貴方の瞳が夜明け色なら
私の瞳は最果てを映してた
言わないで口を紡いでて
綺麗 ....
090522
進化をし続けて
人になった途端
ウィルスに脅かされて
右往左往している
マスクが売り切れたから
引き籠もっていても ....
雪解けの水がつるり、と窓にいて
陽射しはひらり
春、うたまつり
じわ、
じわり
布団を抜け出る子のように
ひとつ、ふたつ、と三月の砂利
太陽に追われて ....
薔薇を見に行かなければいけないね
薔薇を見に行かなければならない
薔薇なんて柄じゃないなんて言わずに
心と体を
自分の気持ちと五感とを
ひと一人分
薔薇の中に置きに行かなければ
....
彼女に借りた自転車で東京タワーに向かった
彼女といっても付き合っていた訳ではない
夜8時過ぎに久が原を出発し
西馬込の地下鉄の入口をすぎると国道はこわいくらいに夜だった
細い歩道をヘッドライトを横目に ....
{引用=つかめない キミの正体 月と知り 浅い夢に まどろむ夕暮れ
....
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