すべてのおすすめ
 
 
アパートに似た生き物が
背中を掻いている
古い窓を開ければ子供の声が聞こえ
秋の風も入るようになった

父が死に
母が死に
君は僕と同じ籍にいたくないと言った
もう昔みたい ....
 
 
鉄条網を飲み込んだまま
息絶えたヘビ
懐かしいものはもう
手の甲に残る夏だけで構わない
「なつかしいなつ」
を逆さに読んでも
「なつかしいなつ」
になる
そんなはずもないの ....
 
 
もずく酢しかない部屋できみは
なくならないもずく酢を
ただひたすら食べ続けている

そんなきみの背中を掻いてあげたいのに
きみには掻くべき背中がない
それよりも前に
ぼくは夕 ....
 
 
ぼくが遺書を書く
きみがそれを紙飛行機にして飛ばす

そこかしこに光は降り注ぎ
そこかしこに影をつくっている

紙飛行機が草原に不時着する
文字の無い白い翼のところを
蟻が ....
 
 
光が蒸発していく駅舎
待合室の隅のほうで
一匹のエンマコオロギが
行き場をなくしている

他に行くところのない子供たち
髪にきれいに飾られた赤いリボン
鼻から伸びているチュー ....
キッチンで君と二人
こんにゃくをちぎっていく
娘は一人、二階で
静かに宿題をしている
こうして手でちぎると味がよく染みこむのよ
君が母親から教えてもらったように
僕は君から教えてもらっ ....
 
 
このこんにゃくを探しています
家族同様に可愛がってました
見かけた方はご連絡ください

という貼紙が電柱にあった
家にあるこんにゃくに良く似ていたので
書かれていた住所のところ ....
 
 
どこかの外れのような野原に
ひっそりとメリーゴーランドはあった
白い馬にまたがると
むかし死んだ友だちが背中を押してくれる
メリーゴーランドがきれいな音楽とともに
ゆっくりと回り ....
 
 
こんにゃくを買いに出かける
いつものスーパーでは売り切れだった
少し遠くのスーパーでは見つからなかった
少し遠くの別のお店では
こんにゃく以外のものならあるのですが
と残念がられ ....
 
 
テーブルの上に
こんにゃくがある

窓の外では
桜の花びらが少しずつ
風に散っている

白い磁器の皿にのせられたまま
誰に忘れられたのか
いつまで忘れられるのか
蒸発し ....
 
 
砂時計の砂が落ちていく
のをあなたは見つめている
すべての砂が落ちてしまうと
黙って逆さまにする

一日がその果てしない繰り返し
あなたにとって時間の単位とは
どこまでも続く ....
 
 
上り列車の中を
下り列車が通過していく
線路脇の草むらでは
無縁仏となった墓石が
角を丸くし
魂と呼ばれるものの多くは
眠たい真昼の
些細な手違い
ひと夏を
鳴くことで生 ....
 
 
泡の中に階段
階段の突き当たりに崖
飛び込んでごらん、ウールだよ
と言って
飛び込んでいく民兵たち
砕け散ったポケットの中に
鉄屑
こぼれ落ちた鉄屑の雫で
埋め尽くされた野 ....
 
 
夜半から降り始めた砂が
やがて積もり
部屋は砂漠になる
はるか遠くの方からやって来た
一頭のラクダが
もうひとつのはるか遠くへと
渡っていく
わたしは椅子に腰掛け
挨拶を忘 ....
 
 
一人目の盗賊は目を瞑った
二人目の盗賊は葉の匂いをかいだ
三人目の盗賊は百本の口紅を盗んだ後アル中の妻に口紅を一本買って帰った
四人目の盗賊は人形の頭を終日かじり続けた
五人目の盗 ....
 
昨日より冷たい君の
手を引いて
坂道を上る
君の腕が肩から
肩から抜けてしまわないように
そっと引いて上る

途中、誰がつくったのか知らないけれど
昔からある赤茶けた工業地帯が
 ....
 
 
硬質に濁ったゼリー状のものの中で
僕らの天気予報は
軋み
軋んだ音をたて
初雪が観測されたことを
伝えようとしている

子どもたちが歩道橋から次々に
ランドセルを落とす遊び ....
 
 
洗濯機に釣り糸を垂れる
魚が釣れる
うろこが晴れの光に反射してまぶしい
釣り糸を垂れる度に
次々と魚が釣れる
面白いように魚は釣れるけれど
魚は面白くなさそうにこちらを見るばか ....
 
これ、以前に頼まれていた資料です
と小田さんの持ってきたコピーが
湿っている
海に行ってきたんですよ
小田さんは微笑んで
きれいな巻貝をお土産にひとつくれた
去っていく小田さんの髪や ....
 
 
不安な気持ちでたまらない、と
夜、入院している父から電話があったので
病院まで行く
今日はリハビリ頑張りすぎて疲れちゃったんだね
そう言って落ち着くまで父の頭を撫でる

その帰 ....
 
 
部屋にハンカチが落ちていた
ふとした拍子、の形のままに
それから
洗面所で好んでよくうがいをし
何本かの正確ではない平行線を引き
人が衰えていく様子を眺め
時に貧しい正義を振り ....
 

電話回線の中をひとり歩く
途中、水溜りのような海がある
工事のためしばらく混線する恐れがあります、と
電話会社から通知書が届いたばかりだった
仕方なく簡単な水遊びをする
ふやけた体 ....
 
 
いつもはわたしが列車を待っているのに
今日は列車がわたしを待っている
ホームにたどり着くと
列車たちは次々と
わたしの中に乗りこんでくる
発車を告げる音楽が鳴り止む
いつも列車 ....
 
 
薬が切れて震える父を
抱えてベッドに寝かせる
布団のしわなどが気に入らないと眠れないので
抱き起こし、位置を変えてまた寝かせる
そんな作業が延々と続く
父にとって毎日の睡眠とは
 ....
 
 
二週間前と同じように
針金ハンガーが
屋上のフェンスにひっかかってる
そこにあってももう誰も気にしない

隣の棟の四階の事務室で
女性が端末を入力しているのが見える
その下の ....
 
 
コップを割ってしまった
深夜ひとりで
お寿司をにぎっていただけなのに
お刺身はさくのものをスーパーで買ってきた
赤くて二割引できれいだった
酢飯は作り方がよくわからないので
知 ....
  
水槽を抱えて
列車を待ってる
水槽の中には
やはり駅とホームがあって
幼いわたしがひとり
帽子を被って立っている
ある長い夏の休みの間
ずっと被っていた帽子だった
水の中もやは ....
 
氷、と書かれた布製のものが
海からの風にそよいでいる
大盛の焼きそばは皿いっぱいに広がり
けれどできる限りの表面張力によって
その外形を保っている
去勢されたばかりの犬が
日陰で餌の ....
 
忘れ物のような話をしました
ただ長いだけのベンチがあり
終わりの無い話を続けました
読みかけの本が無造作にふせられ
背表紙は少し傷みかけていました
マリエはすぐに人を殺そうとする
け ....
 
 
母さんの中を
金魚がぷかぷか泳ぐ
雲の柔らかさ
産地とはおしなべて
そんなところなのだと思う

母さんの背中
バズーカ砲つけたら
悪いロボットみたいだ
だから僕たちは
 ....
こめさんのたもつさんおすすめリスト(172)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
電話- たもつ自由詩2313-9-9
懐かしい夏- たもつ自由詩211-1-29
もずく酢- たもつ自由詩710-2-8
ラブレター- たもつ自由詩510-2-6
蒸発- たもつ自由詩610-2-1
こんにゃく(について)- たもつ自由詩8+10-1-31
こんにゃく(ろく)- たもつ自由詩610-1-29
こんにゃく(し)- たもつ自由詩710-1-27
こんにゃく(に)- たもつ自由詩610-1-25
こんにゃく(いち)- たもつ自由詩810-1-24
旅先- たもつ自由詩610-1-20
ひと夏- たもつ自由詩1110-1-12
ノイズ- たもつ自由詩1310-1-6
記憶- たもつ自由詩1610-1-4
十人の盗賊- たもつ自由詩809-11-24
接続詞- たもつ自由詩1109-11-17
初雪- たもつ自由詩2409-11-5
後悔- たもつ自由詩409-10-25
巻貝- たもつ自由詩1009-10-23
ブランコ- たもつ自由詩3509-9-26
経過- たもつ自由詩809-9-24
通知書- たもつ自由詩909-8-26
川面- たもつ自由詩809-8-18
祈り- たもつ自由詩2109-8-17
針金ハンガー- たもつ自由詩909-8-11
破片- たもつ自由詩909-8-7
夏帽子- たもつ自由詩2009-8-4
海の家- たもつ自由詩1009-8-1
首都- たもつ自由詩1009-7-29
ベランダ- たもつ自由詩809-7-25

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