「冷たい軍手」
宇野康平


コンクリートブロックの上に置かれた壊れた双眼鏡は
汚れた労働者が短い煙草を吸って労働の終わりに歌う
姿を映した。

ぐしょぐしょになった軍手を飲み終わった安い酒と道
端にポイと捨てた。

雨が止む頃、労働者が捨てた煙草を、暖かさを与える
ろうそくのように一匹の空腹の猫が見つめる。

歩く背後、猫は母が死んだ夢を最後に泣くのでした。


自由詩 「冷たい軍手」 Copyright 宇野康平 2014-08-24 21:13:51
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