春の黙示録
やまうちあつし

電車に乗ると
車内は天使でいっぱいだった
座席はぎゅうぎゅう詰め
座っていないものは吊り革を掴んで
ぶらぶら宙に揺れている
まいったな
座る場所がない
弱った顔をしていると
天使の一人が浮かび上がって
ぽん、ぽん、とシートを叩く
さすが天使
ここに座れということか
私は礼を言い腰かける
天使らは行儀良く
膝に手を置き澄ましている
私が降りる駅までは
まだ時間があった
胸ポケットからスマホを取り出し
指を滑らせる
時間を潰せるものといったら
いかがわしいサイトだけ
そのうちに涙が
視界がぼやけて液晶が見えない
・・・これはなんだか
・・・マリア像?
天使らの視線が一斉に注がれる
車内放送が流れる
日曜の午後三時
陽射しの中を走る列車は
何処にも向かわない


自由詩 春の黙示録 Copyright やまうちあつし 2014-09-01 12:39:35
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