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白鷺の羽音の通り過ぎるその、揺らぎ
一面の青葉、その遠くで駆ける声、という声
ここにきて姉は心から、静かに千切れてしまった
さあ行こう、にも飛ぶための脚は足りず
退こうにも継ぎ足す、言葉も無く ....
耳に雨音
瞳に滴
触れるたび
肌はやわくなってゆく
身じろぎもしないで
硝子一枚に隔てられて
雨に囚われているのだろう
雨を除ける力など
もってはいないから
ここでじっとしている ....
家の陰の家
窓に映る窓
白詰草 光の辺
鳥と風 声の影
低い曇を照らす原
曇とともに揺れる原
歩むもののないにぎやかな道
川岸に沿い 川に重なり
流れとは逆 ....
低く垂れ込めた
嵐の雲のなかへ
灰緑色の階段が続き
海は大きなちからに
踏みしめられるように
しろく崩れながら
膨らんでは混じり合い海岸線を削ってゆく
風はいっそう強くなり
雨と潮 ....
ゆれて
みていたのは
まっすぐな
あなた
わたしが
まっすぐになったら
あなたが
ゆれますか
ずっと
どちらか
ゆれていて
かぜも
みなもも
はもん ですね
....
濡れた緑で
夜空を見上げる
数秒後にこの星空が崩れてくるのを知っている
そんな目で
おまえは言う
なんて きれい
薄い唇は街の光を捉えて
俺はその前に沈黙して ....
灰色がかった厚い雲に覆われた大空
ところどころ仄かに煌めく
その煌めき
たちまち稚魚となり
大空を泳いだ
稚魚
風に煽られつつも
しっかり雲に身を寄せ
必死で風の流れにのっている
....
沈丁花から紫陽花まで
わたしの一番すきな春をきりとって
そのひとは去っていった
つぎの春には待ち合わせ
さらさらと
つかみどころのない夏を
どうにかすくいあげて
秋の夕暮 ....
燦々と
そそがれる陽を
うけての青
朧々と
つめたい雨に
うたれて紫の
移ろう色は
六月と七月の境界を曖昧にして
暦がめくれたことにさえ気づかず
深い場所で息する哀しみに黙す ....
あおい月がしずかに沈むのを防ぐために、どれだけの灯
りが必要だろうか。どんな空の下でも、繰り返される息
があり、その色は見えないが、あかでもなく、みどりで
もなく、あお。それに限りなく近い色だろ ....
わさびが
目にしみた
とばかり
思っていたら
あなたは
ほんとうに
泣いていたのだった
このあいだのこと
ごめん
とあやまると
わさびが
目にしみただけよ
と言うあなたが
目 ....
放出された 夏の、
取り扱いをあやまった空から
束ねられた雨が落下する
世界はまだ、はっきりとした輪郭を持っていて
ぼくも きみも それを知らない
ウィリー、ウィリー、
なぎ倒さ ....
雨の降りそうな赤い夕立前に
背中だけ次々落ちてきた
それはいつも誰か
夜の底辺、まどわされる時間へ
ふかした歌を染み付かせていて くたびれていて
もう煙らないんだ
もう静まないんだ
....
今日は盆の入りなので
夜家に帰り門を開くと
家族は敷石の一つに迎え火を焚き
両手を合わせ
揺れる炎を囲んでいた
初老の母ちゃんが
「 お爺ちゃんがいらっしゃるわよ 」
と ....
夏が、また―――
怖いですか
あのひとの抜け殻だから
まひるの世界はあまりにも眩しく
夜の世界は、私には暗すぎる
いつからか
瞳が捉える色彩は
こんな風にゆるぎはじめて
....
こんな夜、
一人浅い夢から目覚めて
窓外を揺れる葉擦れのざわめきに
わずかに明るむ緩やかな月光に
胸に満ちて来る何ものか
心を澄ますと潮騒の響きに似て
耐えきれなくなる 抑えきれなくなる
....
うちわをあおぐ
私は
縁側で
入道雲を{ルビ見遣=みや}る
庭では生垣が
真っ青な息をしている
深い静けさに みちて
遠くで ひもす鳥が ないている
山の ふもとを流れ ....
壊れかけた玩具の銃で戦う相手も見つからない
生ぬるい十五の終わり
青春には程遠い
遠くのものほど美しく見える未来も過去も
いつか許せるときが来るのか
それとも愚かと笑 ....
あたしは河だった。
両岸の、
親族と参列者を満たす河だった。
あたしは、
泣いて、
泣いて泣いて泣いた。
やがて涙は両岸に溢れ、
氾濫し、
洗い流した。 ....
雨が降ると いつも
あまだれをじっと見ている
子どものままで
いまも
樋の下でふくらんで
まっすぐ地面に落ちてくる
あまだれ 一ぴき死んだ
あまだれ 二ひき死んだ
あまだれ い ....
そして火は燃えさかり
すべてを焼きつくすだろう
それぞれの
人の生を
それらがあつまったこの
人の世でさえも
焼きつくして
火は遠い天上でわらうだろう
限られた空
その見えない境界で ....
バスに乗る
名前だけが剥がれていく
何かの間違い、というより
むしろ略式でも正しいことであるかのように
良かった、わたしたちは
バスに乗られることがなくて
席に座り
バスの一番 ....
黒い布で顔を覆い隠した女が
まるみをおびた重いはらをかばいながら
前から、後ろから早足で通り過ぎる人々に
おびえるような足取りで市場を歩いている
ときおり女の腰のあたりにぶつかっては
”ベバ ....
繰り返される福祉が、
新しく歓迎の声を受けて――、
福祉は、いくつもの、与えられた菓子を食べる。
なかには、埃を被っている、
国民精神総動員要綱も、
遠くに、ちらついて揺れている。
....
京都には
たくさんの色がある
錦の糸、その数だけの
雨が降れば、石畳の
風が吹けば、竹林の
雪が降れば、杉山の
星が舞えば、祭囃子の
さらりと、するりと、
あたりまえの顔をして ....
五線譜に引っかかっている
音符をひとつ
つかんで
鍵盤に落としてみた
小さく高く弾んで
涙のしずくに
変わってしまった
やさしく
なにか語ってくれると
思ったのに
....
ほたるがりしたら
おりひめとひこぼしをつかまえちゃった
うちではかえません
とママの怖い顔
しかたがないから
どうぶつえんにあげた
来園者数はうなぎのぼりで
....
玄関に傘が一本
ギロチンのように
あった
昔こんなもので
人が酷い目にあったのだ
と信じられないくらいに
静かな朝だった
やがて傘は
扉を開けると
仕事机のような格好にな ....
淡いかなしみの曇り空が
堪えきれずになみだを落とすと
紫陽花は青
束の間のひとり、を惜しむわたしは
思わず傘を閉じ
煙る色合いとひとつになりたい
街中の喧騒は
雨の糸に遮ら ....
豆電球の灯り 息を落とす ひとり
幸せに ほろり 熱を分ける ふたり
夜の海を渡り 繋ぎ合う 鎖
それは つまり 朝焼けに ニ ....
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