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彼は 十四の夏に 獅子を 背に背負った
と 言う
かもめが 一羽 仲間とはぐれて 波間を 漂っていた
と 言う
もう一度 言う
彼は 十四の夏に 獅子を 背に背負った
かもめが 好きだ ....
道は渋滞で
バスの中は混み合っていて
みんな一日の疲労でうつらうつらしていて
外はもう真っ暗で
バスはなかなか進まなかった
ドアの側に坐って
ぼんやりと前を見ていた
ふと目に留まった ....
夕明りの文法でねむる
涙のようなガラスですから
青いコンタクトレンズ。
それをつけたぼくには
青雲のみずのような波と
月の光のようなこころで、
ノートのうらの
神経のかすかな生の魂の ....
君が泣き止むまで
僕は待っているよ
邪魔と思うなら
その辺をぶらぶらしている
助けが要るのなら
何でも話してくれていいよ
誰にでも
辛いことはあって
....
なりゆきで くちづけて
たわむれに だきしめて
とりあえず むすばれて
なんとなく うとましく
しかたなく うちすてて
きまぐれに おもいだし
すこしだけ かなしん ....
夏のかかとは海を渡る
渡って向こう側の大陸へとたどりつく
潮くさいにおいに魚どもも逃げ出し
伸びる砂浜ほどの清潔さを持たない
夏のかかとは山を渡る
渡って峰から峰へと踏み越える
傲慢な ....
夕暮れの図書館で
あなたは時間を忘れて頬杖をついていましたね
わたしは夕焼けに見惚れるふりをして
ずっとあなたを待っていたのですよ
あなたがわたしを思い出すまで
....
「奥さん」
と呼ばれて振り向いた
そこにはオウムがいた
オウムはオウムスタンドに
鎖で繋がれて
にこにこ笑っている
「なあに」
とわたしは答える
オウムは首をかしげ
「こんにちは」
....
時速180キロのスピードでしか、
癒されない悲しみがある。
僕は淋しかった
または、淋しくなかった
だから 僕は森を歩いた
だから 僕は空を仰いだ
しんしんと
珍しくも降ってくる雪に合わせて
その降ってくる音に合わせて
僕は息を吐いた
....
雪が溶けたら
やわらかい地球の黒土花壇に
「火星たんぽぽ」の小さな名札をたてよう
ひとが植えたわけでもないタンポポが
好き勝手に咲いてるような
そんな花壇がいいだろう
そこから芽吹 ....
古い町並み
もう、思い出は薄れて
それでもまだ
オルゴールの音はかすかに響いた
緩やかな下り坂の終わり
あの曲がり角を越えて
少女時代が
降り積もった ....
おッ母さん
久しぶりに夜更けに実家に帰って
ダイニングテーブルでうたた寝してる
アンタの背中を見ていたら
おッ母さん
なんだかもうアンタは
死んじまってるんじゃないかって
そんな気がして ....
プリンが食べたいの
入院している妻がそう言うので
会社の帰りにコンビニに寄って
プッチンプリンを買って面会に行った
病室の硬いベッドに二人並んで腰掛けて
プッチンプリンを食べながら
や ....
いつか君からもらった
手編みのマフラー
今頃になって
箪笥の奥から湧き出てきた
ボロボロにほつれてしまっていて
それはもう
今の僕らみたいだった
流れ 流れゆく時の中で
....
荒野の中に人柱が建つ
立ったまま
石と化して
柱のように天に伸びる人の残骸
人生に遅刻した者
あるいは 人生から早退した者の
群れが
向日葵のように咲き揃っている
そんな人柱の
列石 ....
さざんかが
ひっそりと咲いている
まるで
恋人を待つように
かんじかんだ指をのばすけど
触れられなかった
向かい風の吹いている
地図の上です
収縮と膨張を繰り返す波打ち際の
緩やかなカーブをなぞること
波音は届かずに
待ち焦がれるばかりの
海岸線が近い
そうで
少しずつ僕らに迫 ....
机の上の図鑑はいつも
同じページで広がっている
そのひとことが
また
言えなかった
日が落ちてから
こんにちは を思い出して
これで正しいのだろうかと
図鑑を開いて調べてみる
さっき思い出した
こんにちは は
ありがとう だった模様
明日は忘 ....
あなたは
何も言わないけれど
手のひらから
聞こえてきた
あたたかい指の
ぬくもりが
わたしのからだ
いっぱいに
ひろがって
かなしみが
消えた
かたまって いる
つめたい ひかり
ひとつ だきしめたら
しずかに とけていく
おおきな てに ふれ
おちていく ちいさな
きょう の しずく
ゆるやかに ゆびさ ....
海の底に潜む深海魚が
巨大な目で
わずかな光をとらえるように
目をこらしていましょう
そうすれば
この暗闇に
光を見いだせるはず
貴方の隣にいると
いつも泡のように
綺麗な言 ....
ねえ おねがい
あなたが持っている
わけのわからないネタ帳の
一番大切な詩は
どこにも公表しないでほしいの
誰かが大きな声で
その詩が良いと言ってしまったら
きっとみんな同じ事を ....
かつて
きみの氷河を渡ったことがある、
十二月の、
空のない果てなき空。
北の地では、いまでも、
無いものは、つたわり、
有るものは、つたわらないであろう。
水辺のポストに、投函 ....
時間を煙草で埋め尽くすのが先か
交差点がスクランブルされた詩で埋まるのが先か
何も無いこの夜に
全てが終わる筈も無く笑いが込み上げる
失う事にも傷つく事にも
嫌われる事にも裏切られる事に ....
でっぷりと
脂の巻いた腹を
波打たせて
浮かんでいる
隣では
これまた太鼓腹が
頭にタオルを被せ
キリストよろしく
両手を手すりに預け
うたせ湯している
あちらの薬草風 ....
一匹の獣と、一匹の蟻がいる。
獣は死んでいた。
蟻が、乾いた瞳の上をあるく。
雨が降りだして
蟻は、獣の闇に融け
獣は、はじめて涙をながした。
長く伸びた草野原が
風に揺れているので 波
転げ落ちた赤い実
踊るよ 上へ上へ
昨日 満開の花びらが
今日 空へ旅立つ色彩の吹雪
舞い上がる柔らかい湿度
甘い香りを連れて 一斉に ....
「今夜も夜空が見えない」と
老いた猫が嘆きます
だれも教えてくれませんでした
嘆く猫の目が閉じられたままであることを
だれも老いた猫には教えてくれませんでした
....
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