何故降り積もったのか
僕らを組成する因子は
間違えることなく
ある日僕らを僕らにした

悲しみは毎日のように語られけれど
掌には幾ばくかの幸せが残されている
まだ誰も本当の悲しみ ....
歩道の残雪を
踏みしめる律動
声でもなく
音でもなく
歌でもなく

  白い吐息に飽きて
  見上げる
  大気の天蓋
  一弦の
  その楽器

  透明におびえ
   ....
色もかたちも失うほどにかがやき
原への道を埋めてゆく花
光にひらく午後
花に閉ざされる午後


檻のなかの木が
檻を呑みこみ
空を覆う
たったひとりの森になり ....
自分が火であることを知らない火が
午後を 夜を さまよっている
持ち上げることのできないものを持ち上げようとして
燃える腕を宙空で
ただぶるぶると震わせている

 ....
理科教室のカーテンの陰
ビーカーに入れられた
子供の悪戯とクロッカスの球根
こっそりと 育つ日々



昼の太陽 夜の月
揺れる隙間から漏れる
光りの栄養を貪りながら
薄情な薄明か ....
朝の海には光しかなく
頂をすぎる風
うすい雲を呼吸するものには
既にそれは海ではなく
折りめ正しい紙の翼の
つけ根に震える飛べない心


枯れ葉の熱に渦まく白金
土が ....
シュレーディンガーの仔猫たちは
母を捜して彷徨っていた、
小雪ふる池のほとり、
量子の石榴をもとめる彼女は、
仔猫たちをみつけるたび貪った、

死ね、
さもなくば生きろ。
紫陽花の頃
手をつないで買った気早な花火に
火を点すことは結局なかった


意地をはる間に夏は去り
空は遠のき
てのひらはかじかむ









(恋は続 ....
しんしん降る

牡丹雪もみせてくれず

冬が寒いだけなので

心臓が凍りそうだ

身体中の血が冷たい

神経が

ピクッピクッとする

不快で寝返りを打つ

胸にカ ....
ポストがあんまり赤く誘うから
こっそり仕組んだ悪戯めかして
宛名にきみの名前を書いた


雪があんまりひっきりなしに
きみの傍に寄り添うから
水晶の珠を割って
ちいさな虹で
憂欝の左 ....
君の声がどうやって千切れてゆくのか知らない

どうか耳をよせてください
いいやよせないでください

僕はカミキリ虫みたいに叫んだ
その声は成層圏を真っ二つにした
そんなわけない

ど ....
自分の寝息の音で目を覚ます
確かに呼吸していた
口を開いたままで
もう聞こえない

ずいぶん
永く寝た気がしたのに
車の時計を見ると
十分くらいだった

それが
三回くらい

 ....
しまわれたミシンのように寝た夜

確かにじわり夏が
やってきて
背中は
しずかに暖かい

窓から伸びて廊下まで臨む
虹には
家族誰ひとりだって気づきはしない
だから明日の
朝食の ....
花に触れるとき

手のひらは
香りにも触れている

手のひらでは
匂い
感じられないけれども


花に触れるとき

手のひらは
色にも触れているのかどうか

手のひらで
 ....
伸ばす手に
目覚めて気づく
静けさに
冷めた空気は
この手の先に
日溜まりの青空でダンスを踊る君は
或る日
突然
斑模様の水面となって
5番目のドアを叩き続ける
まるでドラムのように
5番目のドアを叩き続ける
まるで魂の叫びのように

自分が何者な ....
つめたい指をしている 
と あなたは言って
ふたまわりほど大きな掌で
包みこんでくれた

ゆきうさぎの見る夢は
ほのかに甘い想い出ばかりで
わたしは人のぬくもりに
慣れていないから ....
天の川輝く
零下10度の
砂漠の夜

いつものキャラバンで
友達のラクダと一緒に寝る
名前は知らない
聞き取れなかったから
それで良いと思った

夜には一枚の毛布と
ラクダが
 ....
美しい風景写真を
眺めていた

若草色で
縁とられた何枚もの

それを両手にのせ
黄色や 桃色の
ふわりと匂う
いつかの春の息吹

こいしいが
夢の入り口
扉をひらく

 ....
このはれた
けれどもとてもさむいひに
うみにあらわれたはまべで
きみというこどもは
いたずらをくりかえす

うみねこたちがなきながら
きみのいたずらをみている



きみがした ....
白百合の季節ではないから
梅の枝を切ってきた
山の梅だから
きっと白い花が咲くだろう

ほんとのことをいえば
白い花はあんまり好きじゃない
私が好きな花は深紅の彼岸花で
それも墓地やな ....
きっとめをつむっているうちに
文字はしずかに
みみのよこを抜けて
みずうみのように
空の低い
やさしい墓地のように
まっさらにひろがってゆく だろう



とうめいなかいだんが ....
欲しがるように風が吹くのを
あなたはとても嫌がりました
ありふれた人に、姿勢は鋼鉄で空は近くて
順番待ちの列には顔色ひとつ変えずに
参加することに迷わない
そんな
落ちていかない夜の一枚の ....
梅雨の雨は
日が沈む頃になって
もう堪忍袋の紐が切れたと云わんばかりに降りだすが
秋の雨は
朝目を覚ましたときから降っている
こんなわたしですみませんと
かなしそうに
申し訳なさそうに肩 ....
重さ、とは
預かること
預かる、とは
許すこと
許されること

必然的に張り巡らされた
偶然によって
僕の細胞は君の細胞と出会い
やがてまたひとつの
重さとなった

雨が降って ....
  一等星を結んだ
  三角形ではなく
  二等星を結んだ
  五角形ではなく

涙を流すとき
いつもどうして
届かないのだろう

  やっぱり私は
  祈らない

いっそ
 ....
空にたくさんの綻びができて
あとからあとから雪が落ちてくるので
裁縫上手な婆さんに
縫ってくれ とお願いした

ひさしぶりの大仕事に
婆さんは大喜びで
せっせと針を動かして
つ ....
  毎朝一缶のお酒を買う
  ちいねえちゃんのことを思いながら
  それを飲む

  僕は頭のなかにいる人達を整列させる
  たいていは 小さな羽アリに変身していて
  ほとんどぼやけて見 ....
中学校の図書室で
詩の書き方という 本をひろげた

文芸部に入りたてで
それなりに 真面目だった
そこで 出会ったのが
高村光太郎様作 火星がでている である

ひと読み惚れという言葉 ....
言葉遊びに嵌ったら

これがなかなかの迷い路

右往左往して そらを見上げる

亜麻色の髪をこがねに輝かせ

少女は 湖一面に映った満月に

いったい どんな祈りの言葉を放 ....
こしごえさんのおすすめリスト(4191)
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