だんらん中に電話が鳴った
君があわてて受話器を掴む
こわばった顔が一気に緩む
娘が私立の幼稚園に
合格したとの連絡だった
待ちに待った吉報に
君が小躍りしてるから
僕も負けじとブレイ ....
彼女と喧嘩して
いい加減にしろ
と怒鳴るつもりが
いい加減にすれ
と言ってしまった
こらえたがやっぱだめで
吹き出してしまった僕の
少し後に吹き出した君
ふたりで涙を流して ....
電線に止まって
人を見下ろす鴉
でさえ貴女の
髪の黒さに憧れる
夜空のように
貴女の黒髪は深く
そして遠い川のように
流れている
無邪気な子供達が
笑いながら
貴女の黒髪を ....
おい坊主、饅頭食うか?
おじちゃんだぁれ?
知らない人にモノもらっちゃだめだって
母ちゃんが言ってたよ
そうか、残念だなぁ
こんなにスベスベしてるのになぁ
スベスベしてるの ....
批評は愛(詩や詩人のためを思っての行動)なのか。
批評はエゴイズム(己の利益だけを考えた行動)なのか。
私は、その人によって違うし、その時々によっても違うと思う。
どんなに酷評したって、 ....
夜が
朝 に
ならず
雨になり
ツツジ 切れ
濡れ 流れた 蜜
この先 ひとつの舌も
幸福になりません
雨が
晴れ に
ならず
夜になり
何かが ....
廊下に落ちた西日の溜まりは
しろくしろくまぶしく
まぶしすぎると口に出すことは体の不足を認めることである気がして
目蓋薄め密かに調整しました
床板では、遠くからのピアノ音が ....
真実について10みたのなら
偽りについても10みよ
そして差別するな。
カランカラン
乾いた音を立てて
転がってきたものは
骨だった
中は空洞になっている
拾い上げ中を覗きこむと
そこには子供の僕がいて
頬を腫らせて泣きじゃくっていた
そこ ....
浴槽に沈んでいる 午前三時の
代わりに沈み始めた
無益な水分を含んだ体だ
生暖かく悲しがり
一匹の魚も住めない水分子を
誰か 泣いてくれ
眼球が 震えているのか
眼球 ....
お花を買った帰り道
フワリフワリ良い匂いがして
とても機嫌がよろしいの
そんな私を 幾人も
羨ましげに振り返るので
いい女を気取りながら
颯爽と歩いていたらば
花を飛び交うミツバチと
....
鳴きちる鳥の満ちる朝に形が満ち
形を得た形たちを再び濁らせゆくのは
千切れけぶる花の煙
それは なれの果てではなく
気が遠くなるほど緩やかな横溢
浮かされ翻弄されているのは
....
*(この文章は、ジュテーム北村さんから、「同時多発朗読」の連絡を受けた後、
行った朗読と、過ごした時間についての個人レポートです。
なお、ジュテームさんからの連絡は「21時に」とのことでし ....
望遠鏡で
月を覗いたら
傷が付いていた
のは
望遠鏡の方で
月は今でも
美しく欠けていて
肉体を支えるものが骨であるならば
空を支えている骨は人の想念である
人が空を想うかぎり空は空であり続け
けして空は空から落ちてくることはない
つまりそれは
人が人であり続けることと同 ....
藤棚に 乱れなく降る薄紫の
花を透かして鳴る音が
シャランシャランと聞こえるようです
風など吹いてもいないのに
感じる心は 無風幻想
鈴蘭の 花びら内に鈴つけて
鳴らせて見たい情景に
....
「ピーマンって美味しいよね」
って
君が笑った
「うん」
僕も笑って
そう答えたけれど
あれは
目標であって
僕は
嘘が嫌い
....
気が遠くなるほど
恋をしてしまったとき
いや
言い換えよう
特定の
誰かに
欲情してしまったとき
わざと
自分を
隠す
何処にも
いないかのように
いないところから
....
ぱらぱらと
ぱらぱらと
あの指の微弱な震えが錠剤の音を取りこぼす
そこにどれほどの眼球を差し出しても
私の平衡は心もとなく
ぽたぽたと ぽたぽたと 眩暈 落ち
あ
....
前回私の足の話をしたので、今度は私の夫の足について話してみる。
私の夫は肉体労働従事者で、趣味が山歩き渓流釣り山菜採り茸狩り、毎週二回バレーボールとインディアカの練習に出かけ、日曜日にはソフトボ ....
ドーナツの穴から覗くと
世界はいつも
いいにおいがした
食べ物で遊んではいけない
そう教えてくれた人が
今ではもういない
今にも
空へ溢れていきそうな桜の花弁や
空へ昇っていくような雪柳の白さに
そろそろと背伸びをしながら
私も溢れていきそうな
春 です
南向きの坂道を
とんとんとん と降りていけば ....
まけじゃんけんというものをおそわりました
さきにあいてがだしたてに あとから
わざとまけるてをだすじゃんけんだそうです
ぱーには ぐーを
ちょきには ぱーを
ぐーには ちょきを
ま ....
君の笑顔は椅子に似ていて
笑うと誰もが顔に座りたがる
散歩途中のお年寄りや
旅に疲れた旅人
アイスキャンディーを持っている人
ただ夕日を見ているだけの人
誰かが座ると嬉しそうにする ....
春を燃やせ
はにかんだ木漏れ日から
涼しげなふりをする風から
蒔き散らした種の芽吹きを妄想している
八重咲き紅梅一輪をちぎり
呆けたアスファルトで踏みにじれば
一滴の紅は血となり火 ....
どれほど
雲の束縛を破り 雲間から降り立つも
乾いたグラウンドに
冷え切った夕刻に
結局は 卒倒しがちな冬の光線です
そこにあるのは
どこにも尾を引かぬ手の平
だからこ ....
ここは
風が強い
遮るものは何も無いから
私もざわざわと揺らいでしまうのです
花に昔の恋を重ねるのは
いつまでたっても抜けそうになく
風に揺らぐ花びらに
褪せた写真の中の誰かさん ....
ええと、俳句結社に入っていたり、俳句について勉強していたりする人は読まなくていいです。あくまで初心者向き、老婆心のお節介的文章。あのねそこのひと、ベテランは読まなくていいんですってば!
(ここよ ....
細かい雨が明るい空から降っていた
私はそれを両手ですくい取ってみた
今この掌の上の雨粒も
毎日私から湧き出す想いも
どこか遠いところに染み込んで
いつかはまた私の前に辿り着くのだろう ....
今日も朝から
洗濯機が大声で歌っている
オペラのつもりのようだけど
音痴で
しかも、時々声が裏がえる
近所迷惑だからやめてくれと言っても
聞く耳をもたない
ありったけの洗濯物を押 ....
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