湿気ばかり多くて
気温が上がらない夜は虫なんかの
季節を送る歌など気にせずに
眠ってしまえばいい
閉じた瞼の裏が
奇妙な色に透けるのはまだ生きている
証だと思えるのなら
眠ってしまえ ....
水見える能力
ある晴れた日の空の下
干したばかりの洗濯物の
内包された水溜りを
始めて見たのは 何時の事やら
いくつもの柔らかな固まりは
それから数時間かけて
風に ....
ぼくは詩人
挨拶は言葉と言葉を結び
心と心をも結ぶ
今日もまた
朝の散歩をしていると
アゲハ蝶に出会いました
バタバタ パタパタ
大きな羽の音が聴こえてきそう
まず ....
「樹を」
折れてゆく私の直線をめぐって溶け出す樹々、の泳ぐべき海の直線。泳ぐのは海、ひらくのは海。樹の斜線は海を分解して新しい樹々の斜線を生産する。いくつもの遠さに囲まれながら樹はかわくのをやめない ....
必死に壊れつづけている
飛び散る銀色のビス
耳には音楽のようにつづく歯車の諧音
プリミティヴな装置に
青い微笑み
必死に壊れつづけている
遠くから重く暗い地響きのようなうなり
は ....
まだ、透明でありたい
と願う
それでも底は見えない
私にも
小さな器に
海を夢見る私は
包まれているのか
包んでいるのか
穏やかな声
温かな手
優しい目
その名を叫べずに
二重にも三重にも
....
いつかまた
離れていくのに
君は今度もその腕で
僕を抱きに来たんだね。
どこをさまよったのか
野良犬みたいな
疲れた
君のひとみ。
僕はだめな大人だから
君が小さく
ごめん ....
鉄線花
風車なぞに
なりたきか
ありありと今日の空の雲が
まばゆいオレンジ散り散りに
何より 平凡な明け方に
おめでとう
退屈っていいことなのね
どこに自分がいるのか
分からないときって 多いけど
....
手をつながない
なかよくしない
月のうらがわを
のぞいても
とびこんだりしない
粉々に砕けている銀色の空の傷口から、
降りそそぐ驟雨は、わたしの灰色の乾いたひとみを、
溢れるほど、潤してゆく。
壊れている、遅れている砂時計のなかで
わたしは、眼を浸す溢れるものが涙だという ....
夕暮れて
暮れなずみ
夕闇に
うちしずみ
静かに
下がっていく
温度
静かに
暮れていくの
音
あなたがノオトをめくる音 ....
春の光よ
降りそそげ
我に
君に
太陽の季節の予感に
この胸の情熱よ
目覚めよ
新緑の風に吹かれる
緑の香り
その頬を
撫でていく
嗚呼 ....
黄色い花が咲いたよ 緑の原っぱに
無数の貴石のように きらっきらっと笑いながら
咲き出したよ
ああ来た やっと降り立ったよ 朗らかな風が
南から柔らかな日差しと甘い香りを引きつれて
やあ 坊 ....
午後の空中へ
午後の空中へ
雨に逆らうようにして
ハナミズキとして昇華し続ける春は
公園が夕刻になっても未だ軽く漂う、
薄い、甘い、影
春とは分離するように
俯き始め ....
こんにちは アブラムシ
あなた何歩でこのルーズリーフを横切れるかしら
ツノをふりふり おしりふりふり
行っちゃうの?アブラムシ
窓を見つけたのね
透明の翅をもじもじして ぱっと消えた ....
日曜日の朝
シャワーを浴び
鏡の前で髪を整え
{ルビ襖=ふすま}を開け
薄暗い部屋を出ると
何者かが{ルビ袖=そで}を引っ張った
振り返ると
ハンガーに掛けられた
高 ....
幸せの真理はいまだによく解らない
蹴飛ばしてくるおなかを摩りながら
この夏母になる彼女はうれしそうで
生まれるのを 抗っているようだと
なんとなく感じてしまったあたしは ....
こんな晴れた日
野の緑はしなやかな腕を
天に向かって伸ばし
陽射しに仄かな生命を温めている
草むらをすり抜ける風は
蜜蜂の
しじみ蝶の
か細い肢に付いた花粉を
祈りに変えて
次の ....
ぼくは詩人
星は自分で探すもの
幸せは自分で見つけるもの
今日もまた
朝の散歩をしていると
少女に出会いました
星を探しているの
しゃがみながら熱心そう
朝に ....
風の声が聴きたかった
新緑の並木道の向こうでは、
アスファルトに杖を落とした老人が{ルビ蹲=うずくま}っていた
僕は見ていたに違いない、
何故彼がそうしていたのか一部始終を ....
飛砂を焼こうと
たどり着く海岸で
瞼を閉じたときに
ひらく{ルビ瞳=アイリス}
あかいのは
すべてが染まる音で
あなたとの間には
愛以外のなにかが潜んでいた
....
絶叫する空
描かれている発光する夕暮れの子宮の瞬き。
手を振る少女は、
鮮血の銀河を潤すために海で水浴をする。
薄紅色の尾びれが、激しく水面を叩いて、
青いページは、下半身から、少しずつ、
....
触りたかった
風景を
朧に
格納した
ひとつ風鈴がなる
砂浜で波とたわむれる
あなたを見失ってしまいそうで急いでかけよった
あなたの白をたどれば
その薄紅色の唇に広がってゆく海が見えてしまう
景色はうっすらと朱に染まろうというのに
....
鈍空から軽い桜貝がほろほろ降ってきました
小高い丘の上を列車がぽてぽて北にゆく
....
埋もれては きえてゆく 冬は にごりながら 春を むかえに 風は ふく
日にひに とどく たよりほど 待ちきれないと 知ってか 知らずか 風は ふく
ゆらゆらかげろう
玻璃の向こうに
柔らかき草萌ゆる
丘、ありて
音もなく 風渡る 景色に
あきもせず
遥かお山はぼんやりと 薄蒼く
頬杖つく
椅子の背は
しっとりと ....
許してくださいお星様
お花の欠片に銀のさじ
私の欠片が食いついた
モーツァルトのセレナーデ
美味しく戴く春の宵
銀の色したお月様
夜の夜中に目を開けて
お腹がすいたと
食べられた
食 ....
風が、終わり
雨が、終わったときに
はら、と
静かなる宙を濡らす、桜の
一枚
また、一枚、の
美しい震えの方法を
耳打ちされたおんなが
ふと、拭えば
桜で濡れた指先
....
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