父の会社に泥棒が入ったというので
夜中に起こされ父の背中におぶさった
東の空に紅くて大きな月が登っている
黒猫が急げ 急げ!とせかしていた
下り坂をどんどん歩いても月は紅いままだった
父の歩 ....
オレンジカクテルの空が
家々のむこうに沈んでいく
どこからともなく飛来した
小さな黒い鳥の群れは影絵
ゆったりと宙に張られた電線に
互いに平和な距離を開けて
つぎつぎにとまれば
みんな
....
生まれ与えられ育てた愛娘は
意識の視界から消えてゆき
雪降る三月初めの東京、
流氷の次々押し寄せる如く
時のうねり過ぎゆく速度の異様
細き橋の真っ直ぐ
伸びゆ ....
黒猫がにやぁとぼくを誘うので
ついて行くと其処は巨大な化学プラントだった
あちこちに蒸気が噴出している
あと五分しか時間がない
ぼくはバルブを閉めにかかった
黄色いヘルメットの男がバルブを開 ....
未明から降り始めた雪が
台所に積もっている
牧場の色彩を思いながら
わたしは冷たいサラダを
二人分作った
あなたはリビングで
新雪に埋もれたまま
詰将棋をしている
本を見な ....
はらはらと降る雪は
積る処がなくて
群青の波に消えてゆく
紡いだ言葉は幾重にも
続いているのに
うぉ~ん うぉ~ん と森が鳴る
樹齢300年のミズナラの大樹を倒すため
ぼくは特大のチェーンソーを抱え
森の奥を彷徨った
腹がへったので
紅鮭、イクラ、昆布のおにぎりと
ロースカツサン ....
*
まだ寒いのに
もう立ってしまうのか
立って 先に
行こうとするのか
その後ろ姿を見つめて
僕たちは
ずっと後から
暖かくなろうとするのだが
まだ寒いのだ
もうこんな ....
さざめきざわめく 風の向こう
「今日もまたお寒い一日で」
遥か燦然と風の向こう
光の海原さざめきざわめき
そっと生まれる春の風、
光の海原きっと日毎に吹き広げ
金と銀の龍は螺旋を描き
{ルビ蒼穹=そうきゅう}をかけ昇り
久遠の果てまで行ってしまった
アレクサンドリア図書館に
地球の円周を解き
数学者は美しい数式を描いた
ガンジスの行者は
....
ももを食べました
塩で食べました
レバーを食べました
タレで食べました
叔父が余命を宣告されました
ねぎまを食べました
塩で食べました
十人いた父の兄弟姉妹の
最後 ....
森影繁く深い暗まりに
踊る人影の在りて
〉迎える意識〈
静かさに尚より一層
明るく輝き私を映し出す
生きている生きている
高齢者も子どもも
生きている生きている
病人も健康な人も
生きている生きている
貧乏人も金持ちも
生きている生きている
仕事のない人もある人も
生きている生きてい ....
グラスを傾け
独り歌う子守歌
母が教えてくれたあの歌を
酔えば 酔うほどに想い出す
あれほど美しいものはなかった
こんなオレでもあの歌は忘れない
酔ってこそ普段は語れない物語がある ....
彼は忙しい中に一時間の時を割いて
ぼくに語ってくれた
監督にとって一番好きな映画はなんですか?
彼は言った
ナンバーワンというものはなくて
観える景色を見回して観てごらん
オン ....
梅が散った今はもう春だというのに
肩を抱き締めながら
五月がやってくるのを待っている
月の光に照らされた夜に
レタスが芽生えて
ぼくたちを祝福してくれるだろう
花咲く牧場のソフトク ....
ひかり
ひと吹き
するたびに、
白い小部屋の戸口
開きゆく拓きゆく
ヒビキ輝かせ
時空切り裂き
宿る悪魔,,、
吐き出し
魔と魔のまん真ん中、
大きな巨きな律動の渦 ....
全然めでたくない正月がありまして
形ばかりの春が来まして
もうちょっと上げて行きましょう!
上がるわけあるかいや
気を揉んだってしょうがない
Let it be の精神で
そん ....
朝のみそ汁から
かつて棲んだ磯の香りがした
循環する水にうまれるいのちのすき間
それをすくいそそぎ入れた
湯気が消えてゆく空にうかぶ
一羽のかもめ
炊きあがった純 ....
昼に、近くのイオン・モールで
いつも使っているボールペンを買おうと思って
売り場に行ったら、1本もなかった。
MITSUBISHI UM-151 黒のゲルインク
ぼくの大好きなボールペ ....
廊下に咲いた花を
摘んで歩いているうちに
迷ってしまった
春の陽が差し始めた病室に
戻りたかっただけなのに
白い売店や
柔らかな窓ガラスに触れて
いくつもの季節に
取り残されて ....
今日はオマエが氷壁から滑落して30年
オレは毎年この日に伽羅を焚いている
何故もっとオマエを止めなかったのか
記録を求めて命を賭けるのが解らない
あの酒席でもっと叩きのめしておけば
毎年この ....
ふっくらふくふく
膨らみ躍る
緑の白の黒の色、
際立たせ素早く移動する
メジロ、
梅の木の枝から枝へと
花々の蜜 啄みまた啄み
がらんどうの冬のこの朝に
曇天重い雲すぅうと退 ....
「な、なっ、これ。あたし持って帰って
味噌汁に入れるしラップで包んどいて!」
友人へ手渡す 小さなまな板で半等分にした
えのき
玄関開けた沓脱場から上がってすぐ傍、
ガスコ ....
きっと きっと
きみを幸せにするから
ぼくを信じて欲しい
ずっと ずっと
好きだから
雨の日も
風の日も
雪の日も
変わらない約束をするよ
言葉を交わした日を覚えているか ....
変容の花咲く園へ
哀しみと懐かしみ
狭間を通り逝く処
与えられ在る只、
立つ少女の面影
顔、顔、顔、
鮮やか正に
色付き情流す
意識の内に与えられ
その変容に魂の表れ ....
そんそんと そそり立つ巨木たちが
おんおんと 響きあう静寂の中で
ぼくは何を探しているのだろう
ひと際太い老樹に聞いてみた
わしらは千年以上の時を過ごしてきた
人間の来る処ではない
わ ....
自転車に乗る少年は
何者かに切り刻まれる
助けてと泣き叫ぶ
黄色い空気に血が溶け滲む
しかしそれは身体を切られたわけではない
魂をちぎり切られたのだ
自立の痛みだ
....
食べてすぐ横になると
牛になって
川まで来ていた
晴れたら洗濯をして
布団を干そうと思っていたけれど
雨も降り出して
残っているものもない
これからの人生どうなるのだろう
いや牛だ ....
透明なままで
色付いた景色は白くて
その真っ白を追うほどに
静けさは遠のいていった
喧騒の騒ぎは常に内側にあって
内側に探し求めれば外側にあって
そうする度ごとに
鳴り止まない邪に錯乱さ ....
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