隣の白蛇が、
皮を脱ぐ。
彼は失恋すると、
いつも絶食して、
いつも脱皮する。
センチメンタルなのだ。
脱皮する少し前から、
蛇の目は白濁しはじめる。 ....
ガマの穂が天に向かい綿に覆われて立っている
安らかな秋
まるで別世界のことのように
自分のことを思う
帰りたいと願う
時間を戻してくれと願う
叶わない願い
わたしの歩く道から
ガマの穂 ....
紫色の空がなめらかに
この地上を染め出せば
深い森の中で
梟がゆっくりと目を覚まし
豊かな知恵を含んだ鳴き声で
街に向かってささやく
ビールで染まる街 ....
しゃらしゃらと
粉雪が風に渡る音
鈴の音も高らかに
朗らかな笑い声が
こだまする
雪山が呼んでいる
動物のアシアト てんてんてんと
梢からがさっと雪帽子が落ちる音
真っ白な ....
寂しがりやに 性は重く
身体に深く響く 哀しみ
融合に胸を躍らせ
光を崇めながら
闇に駆けていく
美しいあの人
空しく延びた手
受けとめる胸は
塞がれてお ....
芽、夏の始まる頃
なだらかに繁茂し
雨戸のような
古い匂いのする部屋
少年は水棲生物の絵を描き
鉛筆の芯はそのために
おられ続けている
逝くもののために祈り
生まれるもののために祈る
....
海へと向かう夜を見ていた
蒼い蒼い
光を見ていた
光をぬぐう水の手が
冷たい曇に触れていき
たくさんの小さな影をつくった
影は夜通し降りつづけ
肌の上で
....
夜行性の言葉が羽ばたいていた
子どもだけがそれをじっとみていた
凍えた空に花が貼りついた
月は存在が伝言だった
震えた縫い針の鉄橋が
銀河のデゴイチの受け入れを許可した
暖かい ....
一.
夜
と
おなじ速度で落下する
きみと
きみ
の 心中しようか
亡命 なら
考えたかもしれない
二.
きみに似ているもの
・深夜のガソ ....
彩りが白く染められ
輝きが覆い尽くす
秋に重ねるから美しい
君の
季節に染まったほおに
想いが重なれば
雪景色のように
清らかに美しいだろうか
それとも
ただ ....
言霊は無色透明たどりつくところによりて色を変えゆく
雑然とした日々のこと雑踏の中に紛れて目を閉じないで
ありのままそのままでいい君の目はくるっていない間違ってない
戦場で逃げ惑うひと ....
ギタラ ギタラと鳴り響く
緊急 住民集会 泰山木を撃て
の声
怖い小父さん
舟が出る
乞食の小母さん
骨しゃぶる
北から来た娘
爪を光らせ
恥を塗る 木
北風
....
聞き慣れぬメロディーが
不意に耳を訪れ
きみのケータイを発見せり
外出先で気付いたろうか
今の電話は急用かな
届けてほしいと言うだろか
どうしてくれよう
白いフレームが
こっち ....
あいとくちにするのがてれくさいから
いつでもぼくはくちぶえをふく
のんびり のほゝんと
うたをかぜにのせて
たしかなきもちがとんでいく
あいとくちにするのがてれくさいけど
....
目には見えない「現実の壁」に敗北して
言葉を失いしばらく立ち尽くしていた僕の背中は
やがて青空からの{ルビ息吹=いぶき}に押されて
いつのまに
古時計の長針と短針がゆったりと逆回転する
不思 ....
繋いだ手の感触を
消してしまえずに
たとえば、今
この空のあの雲
と 私の指が示しても
あの人にはもう
届かないでしょう
尾とひれのついた
魚の形の 群れが
泳いでい ....
花の名前を知らない僕は
きれいな花を見つけても
誰にも教えてあげられない
植物図鑑を一冊買って
花の名前を覚えよう
いつ芽が出て
いつ花が咲くのか覚えよう
小さな庭に種をまい ....
眠り明け
耳鳴り低く響くので
夢のはしから余白を殺す
しゃらしゃらと林檎をむいてゆくひとの
まつげは綺羅とひかる音楽
唐突に遠さを知った花の色、あれは残響怖くないもの
....
手と手が触れ合わないだけの理由が
夥しくて
冬は、一層
失いやすいものから失ってゆく
自然な成り行きだと、して
ほら
はらはら
葉がアスファルトへ ....
目がさめると
世界は半透明だった
そうか、ゆうべ
基地をつくったのだ
求めていた体温に
ほどちかいぬるさと
液体でも固体でもない感覚の
その場所で
眠ることは
ひどく ここ ....
白い息がのぼる朝
氷の指の冷たさよ
紅の蕾も頑なに
視線のゆく先は
開くあしたと
散るあした
花であるなら
開けと願い
花であるから
終りも知る
....
朝になると
静かにそれを繰り返す屋根の波を
勝手に世界と呼んでいた
語る言葉はどこかに置き忘れて
少し笑う背中で世界に潜り込んでいく
息を吸えば吸うほど
体は軽くなっていくはずで
両 ....
光を灯すために
闇を撒き
ただ、己の手をかざすはせずに
悲しみをくずして笑うは廃墟よりもろく
闇を撒くために
光を灯し
旋律、よもやう ....
世の風に流され
秘め事を{ルビ懐=ふところ}に隠し
灰色のコートを羽織った背中を丸めた男の後姿が独り
世の風に{ルビ抗=あらが}い
闇の向こうに見える光へと澄んだ瞳を向け
空色のシャツを ....
夜が泣いている時
その言葉は
口にしないで
空に星がない時
無理に上を向いて
その歌を歌わないで
海に船が見えない時
そんなに遠くへ
思いを馳せないで
....
多くの星が
自ら輝くことができないように
僕らもまた
自ら輝くことはむずかしい
たとえば僕がそうであるように
一つとして同じものなどない
そんな僕ら星のかけらたち
一つの存在が放 ....
「たぶん、もうすぐ雨が降る。」/ かおり
たぶん。
たぶん、もうすぐ雨が降る。
重たいグレイの空
湿った空気
ぼやけて見える隣の町の赤色灯。
煙草の煙も
な ....
きみをみまう朝は
なんどもなんども顔を洗い
なんどもなんども歯磨きをし
ぼくのもっている
とびっきりの青空を
つれていこう
あののびやかな笑顔が
もどってくるように
すべてのものに ....
{引用=イェイ、イェイ、ぼくらはルーシーチャンスだ
イェイ、イェイ、今こそぼくらはルーシーチャンスさ
....
不吉だと思って頂戴
とてもとても不吉だと思って頂戴
そう思ってくれればくれるほど
あなたの前を横切るのが楽しいから
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