夕暮れ
男は空を見ていた
世の{ルビ何処=どこ}にも{ルビ属=ぞく}さぬように
草原に独り立ちながら

{ルビ只=ただ} {ルビ暁=あかつき}色に染められた雲が
宵闇に流れて姿を消してゆく ....
染み込み切らず
床に溜まる夕刻、それは束の間
窓枠が区切って下さった一人分の西日は
結局は目の前で
床へ、床へ、沈んでいった


星といえばビー玉の中に
赤く青く黄色く、在 ....
熱砂の道を歩こうと
踏み出す先に砂漠はなく
求めた強さだけ
葡萄詰みの唄は遠ざかる

星座を大地につなぎ止めるもの
{ルビ哈密瓜=はみうり}の蔓、祈りのこえ
流れ星の落ちる果ては
岩と ....
緋色の帯を解く君は頬を赤く染め
何だか恥ずかしげな風情だね
帯止めの色目は玉虫だから
綴られた思いも刻々とその表情を変え


真新しい紙とインクのほのかな香り
読みかけの頁に挟んだ栞のよ ....
かまくらで
みかんが食べたいって
のんちゃんが言ったから

なん日もくもった空だった
なん日も雪がつづいていた

そう、だから、ふたりで
かまくらを作ろうって、ね
どうろわきによせた ....
       封じ込めたい
       想いだけでは
       精製できない
       透明な水結晶

純粋でない核        宇宙との狭間
命を拒む冷気        気圏 ....
その昔
刑場へ向かう道程で咎人はこの橋の上に立ち
己の最期の姿を川面に映したと云う


インチキな占い師に
「貴女の前世は罪人でした」
と 言われて以来占いはやめた

この善良な ....
悔いなんてなにもない
なんてどうでもいい嘘をついた
その部屋は冬の海のように
優しく揺れ続けている
雪に咲いたあの花の名前を
結局思い出せないままだった

君は時計とともに僕の部屋へ来て ....
これから明けていくというのに
どんな闇より深い
口笛が
聞こえる

とぎれがちになるのは
灯台が
瞬くから
そして波が
騒がしい

そう、音が
熱をともなって
肌を
突きぬ ....
玄関のドアを開くと
右手の壁に一枚の絵が{ルビ掛=か}かっていた

六十年前
I さんが新婚の頃に過ごした
緑の山に囲まれた海辺の村

二十年前
定年まであと一年を残して
急病で世を ....
濡れるのは
おかまいなしで
傘はささない

足跡は
雨と一緒に
大地へと還る

雨が唇をふさぐから
言葉にしたいことも
足元へ、足先から

行き先は
 忘れてしまえるかしら
 ....
通勤の途中にね。大きな川があるのだ。

もぅ海にも近くて、潮の満ち干きにあわせて、
川の水位がずいぶん変わるの。今日なんかは、なんての
もうほとんど水がなくて、はるか向こう岸まで歩いていけるの ....
兎の心臓の動きをする
くびすじの隣で
粥が水を含みすぎることを
心配している
おんなは
せわしい寝息に
少し欲情して
見慣れた顔の
見慣れない瞼に
舌を滑らせてみる

欲するのは ....
墓の裏に回る
墓碑銘
一文字ずつ読み取る
故人も知らぬ名前の羅列に
隔たりの強き世界の境
墓の裏に回る
 ....
雨の来ない図書室では
忘れるように眠ることが出来た
背の高い書架の影で彼らは
姿を確認するために囁き合う
私の載っている本がない
私たちの乗っている街は
地球儀の上に針で止められている
 ....
バラ色の土を 見たことないあたしは
その匂いを 想像してみることがある

アフリカ アフリカ

女たちよ

あなたたちの
悲しみは
あたしのと同じ?

寂しい月が光る夜

開 ....
「タンバリンをね
買おうと思っているのよ

できれば
きれいな色がいいわ
菜の花色の黄色とか
桃の花のようなピンクとか

ターンターンって
飛び跳ねるような音が鳴ってね
パリョーン ....
白い息
飛んでいってよ 彼の元
{引用=『愛してる』}って
言葉を連れて
なくしたものと
もういない人とが
ありえないシーソーで
つりあってる
そんな救いのない話しか
思い出せない
と証言台で男は述べたが
語尾はすでに
空気と区別がつかなかった
街のい ....
みすぼらしい着物を着た子が
{ルビ弦=つる}のない弓を持ち
灰と緑の風を見ている
夜の池に浮かんでは消える
銀と金のかたちを見ている


かがやく葉を持ち
誰かが森を歩いて ....
刻んだてのひら
じわりと汗ばんだら
ああ、私は生きていた
そういえば、私は生きていた

寒空の下
はあと白い溜息がでれば
ああ、私は生きていた
そういえば、私は生きていた

死に損 ....
よろよろと海岸線を歩いていると
月が見えた
タバコの煙が風に乗って流れた
ああ俺は
照らす光におびえながら立っている

それから海に向かって眼をやった
錆びた商店街が背中にあった
波は ....
短い冬が終わりを告げる頃
街並みの全てが水平となり
凍り損ねた思い出たちが
空気の底に溜まります
両手を器としてそれらをすくい
私の体温を少々与えてから飲み干すと
薄氷色の街並みが
私の ....
やまねの親子は毬が好き
雪の山道人気が途絶え
歩く人影消えたので
やまねの親子が顔を出す
寒い朝だとおとうさん
冷たい朝だとおかあさん
明るい朝だと子供たち
冬眠醒めたら遊ぼうね
 ....
水面に映る美しさに
手を差し伸べては揺れ壊す

水面に映える輝きに
小石を投げ入れては揺れ壊す

触れてみたいと
つく溜息に
水面はさざめき
揺れ乱れる

感じてみたいと
流す ....
冬の赤い実
ひとつのざわめき
低い煙が
一瞬だけ
白く白くひらめくとき


銀の雪道
すべるように過ぎてゆく人
まるく 遠く
鏡の奥へと去ってゆく景


見つ ....
朝、その一方で
コンクリートの階段を
冷たくなって滑り落ちる風
一段ずつ、無抵抗に落ちてゆく影


正しく、針が切る時を
間に合い続ける列車が貫通してゆく
プラットホー ....
それは主張する誰かのための
すでに去り際の匂いと聞いて
そこで僕らは降り止まない話を
目的も置き忘れた夢の覚める際を
緩み始めた自信とともに消費して
今日もまた柔らかい部屋に
柔らかい床に ....
林檎を見ています。

一つの瑞々しさをはらんだ林檎、それは歌います。
その歌は軽快なリズムでもって林檎の命、林檎がかつて実っていた木、沢山の仲間たち、
花であった時代、訪れた虫たち、そのきらめ ....
凍えの夜に
面相筆で刷いた薄雲が
星座に風を満たし

十字に居並ぶ太古の紋様は
くっきりと現在を刻印し
ありふれた永遠を
わたしに見せつける


生は
背中の痛みで
諦めは
 ....
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