それがほしいのだという
網の籠を背負って
捕まえて入れるのだという
静かな息に
舞い上がり漂ったのち
重さを感じて落ちてくる頃に
掴むのだという
小走りに途切れて
靴音の後ろか ....
竜道から少し外れた、石の多い場所で
あなたは待っていると言った
すうん。
空には旋回する群れ
あそこにも石が散らばっている、よう
十、は
たくさん。
九九もたくさん。
千、は
手 ....
蜜柑の里の海辺の丘で
まるで童謡の一節みたいに
蜜柑の里の海辺の丘で
太平洋に浮かぶ船をみている
船は遠くて
たぶん大きいのだろうけど
ちいさくみえる
たぶん動いているのだろうけど
....
雨上がりが
夕暮れに間に合ってしまい
その為に見てしまうもの、を
見ていました
結局は
全て冷えゆくというのに
明るみに出てしまったショベルカー、の関節
轟き続ける工場からた ....
まばゆさの
明かり障子 前にして
あらゆる形状の輪郭は
努めて 溶け
まばゆさの内にあり 薄く 美しい水墨のようで
それでいて
あらゆる形状は 悲しかった
思わせ振り ....
青くにじむ蛇と
赤くつややかな蛇が
雪の下の暗いところで
からみ もつれ合い
溶けていった
残されたぬくもりは
ゆっくりのぼり
顔をだしたとき
花びらをまとった
森の ....
人間がいつか骨になって消えてなくなることを初めて知ったとき
小さな私は庭に飛び出して
道路でバトミントンをしていた母に向って
「人間はいつか死ぬと?死ぬと? 私も死ぬと?」
と、何度もた ....
根っこ の傘
に ツカマリ
しゃぼん
いえロー
ちゅ
トレイン
はかねずみ とり
かかってる 奴に
驚くもんか
とどめ のさし方
にやり ちゅ
に
....
大きい声で叫ぼうとしても ベランダの外に聞こえないか気にするし
歌うとしてもこたつのなかで 誰か帰ってきたらどうしよう、とひっそり歌う
高いパンプスをはいても 歩く音が響かないよう そっと ....
温い溜まりへ ひとつ
温い溜まりから ひとつ
蛇口の縁から
温い空ろ の余滴
そこから始まった
輪 は
瞬時に
洗面器の縁で
終わる
ほら
蛇口の 縁で
ふたつ目が諦める頃 ....
ぬれた銀杏から
ぬれた銀杏の においがする
眼をとじても とじなくても
晴れた日の銀杏から
晴れた 葉のにおいがするように
紙の 傷のある指と
かさの柄をにぎる指
と ....
感じない掌の上に
鳴かない鳥が
人のように瞼を閉じる
冷たい雨の降る
コンクリートの上で
静かに眠りにつく
戯れるように
温度を残して ....
秋の{ルビ陽=ひ}を そっくりそのまま はね返す オレンジ色の 宝石ひとつ
秋深く 山を染めにし {ルビ紅葉=もみじば}に 涙も忘れ 想ひくれなゐ
今日限り 失うものと 思ほえば 愛しくもある もみじの散るも
夕焼けに 流れた涙 過去に落ち 微笑みながら 消えてゆく
空寒く 想いをのせた 流れ星 君の心へ 落ちてはくれない?
交差点 すれちがうのは 甘い風 恋の迷い路 どこまで続く
淋しさ ....
おれは見たい、
赤錆びた鉄塔の頂きに
鳥のように爪先立って
人影のなくなった都市を見たい
きみとだ
おれは見たい、
太陽のとなりに炸裂するもうひとつの太陽の誕生を
塵からつくられ ....
何にも見えない黒い空も
何にもないわけじゃなくて
ただ見えないだけで
たくさんの星
あの夜空
どこからかきっとここも
あの夜空などと呼ばれている
悲しみは忘れた頃にやってくる
悲しみの上にも三年
悲しみ盆に返らず
千里の道も悲しみから
咽喉元過ぎれば悲しみ忘れる
悲しみの悲しみによる悲しみのための悲しみ
....
赤い衣服から
す と 引き抜いた
ほつれ糸
を
クルルルル
弄んで・まわして・弄んで
クルルルル
赤らんだ指の模様 切ながって
更に赤らんで・赤らんで・堪らないため
....
・夏休み だけど気持ちは ホ短調
・葉の先に 色を落として 夏去りぬ
・星色に 輝く空を 見る日まで
・憧れて 流す涙の 速さかな
・白百合の 真珠連ぬる 丘に立ち
自分の名前がついてるとも知らず
いわしは
雲を見ていた
自分の名前すら知らないままに
その赤く染まるのを
何かを伝えるために生まれた
それが 私
けれど何を伝えるのか
けれど誰に伝えるのか
忘れてしまった 時の中に
それも 私
たぶん言葉ではうまく言えないだろう
たぶん涙がでてしまう ....
きれいな
“まる”を
描ける人は
幸せです
憧れは
いつまでも
追い続けていたいから
完全な憧れなど
持たないんだ
最後のしずくが降りおちて
世界のざわめき いまおわる
迎えるものは光だけ
あついくもが はれるだけ
すべての命がまち望む
切り開かれた雲をぬけ
ぬくもり伝えにやってくる
それできる ....
まず言っておかなきゃならない
これを読んでるあなたは
(あなたが誰であれ)
この雑文における「あなた」ではない
あなたと「あなた」は別人である
筆者と「私」も別人である
まずあなたにこれだ ....
・証拠は 残さないように 旅に出よう この灰色の 街を{ルビ逃=のが}れて
・トラツグミ 泣きつる方を ながむれば 山吹色の 花ぞあふるる
・セピア色 ただわけもなく にじんでく まだ途切れない ....
いまはただ
雨が降り
石にしみるまま
あけないおくで翳のかたちを追っている
ひがしの空だけが
ゆるやかに
くちびるをひらき
すきまから虹彩をのぞむ
わたしは
まるい眠りを
かきわけ ....
土曜日の夜
賑わうレストランの
窓越しに一本のポプラが
誰にも気づかれず
静かなものごしで
あるべき場所に立っている
時折吹く夜風に
大きい緑の葉を揺らしながら
今迄にどれほどの ....
もし
私が死んでも
悲しんだりなぞしないで下さい
むしろそれは
私にとって幸せなことだったのだと
喜んで下さい
私の死はとても
小さなことです
今このときに
死んでしまっている人は
....
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