*
魚は酸素を知らぬだろうか
暗い水辺に輪を描いて
あんなにも深く潜ってゆく
*
飼育係は放課後に
飼っていためだかを流してしまった
閉じ込められてるのが
可哀相だったって
....
涙が涙へ落ち
映る雪は昇る
花はひとつ多く
土に消えずに残る
やわらかに覚める
手の甲ふたつ
波と曇の鳥
鳥に沈む鳥
ひとみしり
とおまわり
道 花 原
....
通過電車が
高音の向こうに消え去り
どこまでも
正しいラインを描く傷跡のような
線路上の余韻を見やる
風と白線の内側に
残されたわたしは、ひとつの
丸められた ....
音の中で踊る手は
揺れ惑う想いを引き裂いて
引き寄せた悲しみを
天に帰す
わたしの瞳に宿る寂しさが
天と地の狭間にある弦を
かき鳴らすとき
雨音がわたしの頬を伝い流れて
旋律を変え ....
ふゆのめだまはゆめみるめだま。
ふゆらふゆらと、
ふねこいで、
ゆめやゆめやと、
ゆめをみる。
つめたくなったら、
めをとじて、
まぶたのなかで、 ....
{引用=
一、ハッピー・バースデー
たとえば今日が
誰かの命日かも知れなくても
生まれたあなたに
おめでとう
そうして
またひとつ
わたしは欠ける
たとえば今 ....
一。
あたし捨てられた。
だから流れてる。
この汚れた水の中を、
彼らと流れてる。
髪や肌には、
彼らがこべりつき、
凄まじい悪臭を放ってる。
....
夜行列車「能登号」車内
すでに電気が消えた
午前二時十五分
数えるほどの乗客は
皆 {ルビ頭=こうべ}を垂らし
それぞれの夢を見ている
一人旅に出た僕は眠れずに
開い ....
人知れず佇む冬の逃避行
都会を離れ熱冷ます
湯気のかかったおでんを肴に
焼酎水割りご機嫌いかが
灯台元暗し
幸せは君の足元に転がってる
見つけて開いてラリパッパ
待た ....
互いに背を向け
曲がり またたき
空と波を
指おり数える
月が隔てる言葉たち
手のひらの海
無数の帆
とまどいは澄む
濁りのあとさき
透明でもなく鏡でもな ....
豆腐
生揚げ
雁擬き
大きな荷台に大きな木箱
プーーポーー
のんきな音してバイクが来たよ
カブのエンジンとろとろと
とろとろ走る路地裏を
トーフーのラッ ....
ドロシー、カサブランカ、
喪中の君が
家の塀で遊んでいる
数台の引越しの車が側を通り
今日もどこかで引越しがあるのだ
と何となく感じる
言葉はまだ書けないから
でも言葉はもう口に出来 ....
秋の胡蝶の薄い羽は
微かな風にうち震え
先細る命に慄く
あえかな花の行く末は
胸騒ぎがするから
花占いの刑に処す
命あるものの極みは地に堕ちて
蠢くものの餌食と ....
いのちを
てのひらのように合わせる
欠けたまま
あることの
ひとつの償いであるかのように
頭上の硬い岩は
いつでも欠けたままで
(満ちることなど
たまにしかない)
私たちの不安定な歩 ....
そこに花がある
名前は知らない
けれども
その花にしかない色がある
それだけあればそれでいい
そこに鳥がいる
名前は知らない
けれども
その鳥にしかない翼がある
それだけあればそ ....
旅程、 それは
気体としての体の呼び名
約束は山嶺のむこうで
鼓動が、 「遠く」と嘆く
あなたの住む町に
なごりを凍らせて
肌の温度で流れ出す
液体としての心
はるか、 はるか ....
1
漆黒の夜を裂いて、神楽の舞が、
寂びた神社の、仄暗い舞殿で、
しなやかな物腰を上げる。
右手は、鈴の艶やかな音色が、薫る。
あとを追う鳥のように、左手の扇子は、鈴と戯れる。 ....
{引用=
あれはたしか小学生のころ
ちいさな花をいじめたことがあった
冬がカサリと音を立てはじめたある日
お母さんがお庭でいっしょうけんめい
そだてた花を
「しゃんとしなよ」
「 ....
帰る場所を私は持たない
たとえば
ふるさとは
ほろびるだけで
東京は
ただ試してる
ことば
あるいは
ことば以外で
わかったようなつもりになって
帰る場所を私は持たない ....
赤い河の流れに身を任せる
一通の船に乗る 目の前には夕闇
視界の先を今なら明確にimageできる
失くしたのは片肺…
失くしたのは最愛…
美しい音色に委ねる我が身
力の源が言葉であれば ....
記憶の ぬくもりが
朝のラインに 並びます
いくつかは やわらかく はじらい
いくつかは つめたく ゆるされて
/濡れた空に 水の旗が ゆるやかに たなびいています/
それで ....
あなたの花開くようなお口へ
鈴の音の鳴る金のスプーンに
一さじの杏ジャムを載せて
含ませたいの
とても穏やかな様子で
わたくしの はやる気持ちを隠して
柔らかな顎に そ と手 ....
この街にまだ雪は降らない
灰鼠色の空は浅い冬のまま
恋人たちの吐息や
ブランコを揺らす手に護られている
わたしの何処か深くにある黒いものや
寒い、と寂しい、が似ていること
それに気 ....
ほら
雪って、生きているのよ
空からここまで辿ってきた足跡が
真っ直ぐじゃない
一粒ずつみてごらん
そうしたら、ね
小さな顔がある
あ、いま 目線が合った
雪はそのむかし 薄紅 ....
{引用=*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語 ....
{引用=街}
街は
灰色にかじかんで
遠くを見る
{引用=鳥}
丹念に編み込まれた
木々のレエス
鳥が壊す
{引用=画廊}
画廊の扉は
今日も閉じられて
あの絵も ....
冬の青い空を眺めて
見えたのは
光の粒子だった
きらきらと光るその粒は
純粋な希望の輝き
冬の白い地面を眺めて
見えたのは
水の結晶だった
きらりと光るその粒は
純粋な創造の輝き ....
窓際に
置かれた
書棚
その窓はすりガラスで
鉄線が格子状にガラスの中に張り巡らされている窓で
北側の壁にはめ込まれている
僕の腰ぐらいの高さの書棚の上には
郵便物用の ....
冷たい風は
そのまま冷たくて
ぼくの身体を凍えさせてゆくけれど
この寒さを乗り越えなくてはと
ぼくを熱くする
冷たい風は
さらに強くなって
ぼくの身体を固めてゆくけれど
この辛さを ....
冬のすじ雲に
数羽の鳥が列をなし
横切ってゆく
あの空は海
冬の枯れ野に
数羽の雀が群れをなし
降り立ってゆく
この地は空
天は恵まれ
幸福は満たされ
その喜びを
地へと ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140